第37ターン マスター夢、敵を知る
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
一日後か、夢原は独りごちた。純と花崎がナニワの悪辣ゲーマー、エクスペリエンスとバトツー*で対戦する。
[註]本作に登場する架空の格闘ビデオゲーム「ロードバトラー2」 某有名格ゲーとは無関係
格ゲーを始めて僅か数週間の純と初心者の域を出ない花崎。彼らにはコマンド技は教えたものの、CPUと生身の人間相手ではまるで勝手が違う。一日足らずマスター出来る技術は、、、
いや、対戦相手の事を知らなければならない。それによって闘い方も変わる。ナニワ兄弟を前に一敗地に塗れた花崎に突撃インタビューだ。恐縮だがと前置きし、
「ヲタ、ナニワ兄弟が使ったキャラは何だった?」
イヤミなキザ野郎、そんな見方もされる花崎誇だが、脅されているクー子を庇いナニワ兄弟に一戦を挑んだ。レディースを守るのがミーのポリシー、それだけの事。素っ気なく言って見せたが、その熱い心は隠せやしない。夢原と純は花崎に一目置くようになった。
「アイツらはダル・シンとハシミコフを使ってましたよ、マスター夢。」
そうか、当に凸凹コンビだな。ヒンドゥーの行者を思わせるダル・シンとレスリングの猛者、ハシミコフか。
いずれもバトツーにおいてはキワものポジションで、クセのあるナニワ兄弟が選びそうなキャラだ。
ゲーム、とりわけ格ゲーのキャラ選びには人格が滲む。夢原は愛らしくグラマーな女性ファイターを選ぶ中高年男性達の事が頭に過った。汝、格ゲーに何を求める、か。
つづく