第36ターン 俺っち、タッグを組む
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
ナニワの悪辣タッグチーム、エクスペリエンスの挑発に乗ってしまった純。禁止された格ゲー対決に踏み切るが、そこに花崎が一枚噛んできた。
「オイッ、オタク族!邪魔すんじゃねえ!」
これは自分が買った喧嘩だと、純が花崎を制止する。しかし花崎も譲らない。日乃本クン、ミーにも意地ってものがある。コイツらは許せない、アイム・アングリー!
「なんやなんや、性懲りも無く未だワイらと勝負したいんか?エエ格好しいのボンボン。」
五分刈りメガネAが花崎を小突く。メガネBがヒャッヒャッと肩を揺らす、最前は白馬の王子様気取りでやったけどなぁ、格ゲーはまるで幼稚園児やと、イヤミのツープラトンで口撃する。
「ヲタ*、お前、コイツらと闘ったのか?」
[註]夢原が花崎に付けた愛称
花崎の格ゲー師匠、夢原が問う。花崎は悔しそうに頷く。手には大破したコントローラーが握られている。
「そうなんやで〜このコミック・ボンボン、ヘタなくせに、何やレディースがどうやとか、ポリシーがどうやとか言うて、」
「クー子の話したら急に熱なってなぁ、東京のヤツら*はアホちゃうか。」
[註]関西人にとって名古屋以東は概ね東京である。
壊れたコントローラー、クー子の苦境、そして再戦を要求する花崎。全ての点が線で繋がった。
「え、、なんだよ?まさかオタク族、お前、クー子の為に闘ったのか??」
黙ってエクスペリエンスを睨みつける花崎。ヲタ、お前、漢じゃないか。夢原がその肩に手を掛ける。クー子と音々はいつもと違う花崎に熱視線を送る。
純が花崎にグッと腕を差し出すと、これに応えた花崎の上腕がビシッとクロスする。今、夢のタッグチームが結成された。
「ハイハイ、分かった分かった。ほな、まとめて面倒みたるわ。勝負は二十四時間後、明日ここでぶっ潰したるわ!」
悪の手先、ナニワ・エクスペリエンスがユニゾンで純と花崎に宣戦を布告した。
つづく