第34ターン クー子・恐喝される
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
瓜二つの大阪人コンビ、ナニワ・エキスペリエンス。どうやらクー子の過去を知る、厄介な連中だ。
唐突に彼らは純に格ゲー対戦を要求してきた。突然のことに驚く純、目的は何か?訝しむ格ゲーマスター、夢原省吾。
しかしクー子をダシに使ってくるあたりから、彼らが悪辣なタッグチームであることは想像に難くない。
「オイッ、おめえら俺っちと闘えだと?」
ハァ〜、純が拳を息を吹きかけ臨戦体制に入ると、クー子が慌てて割って入る。
「純!ヤメて、こんな奴ら相手にせんといて!」
「こんな奴らとはエライご挨拶やなぁ、クー子。」
クククッ、ナニワ兄弟が哄う。
「お前のオカンは誰に借金してると思うてんのや。弟の学費、誰が立て替えてると思うてんのや?」
ウッ、小さく呻くクー子。母はコイツらに借金をしてしまったのか?陽気で大雑把だった母のこと、あるいは。状況、真実、クー子には分からない。ナニワ兄弟の虚言の可能性もある。
「嘘をいいなさい!」
ナニワ兄弟をピシャリとはねつけたのは純の姉、音々だった。無論、嘘をつくな、の意。日本語は複雑だ。
わが国の社会福祉は世界に冠たるもので、ひとり親家庭に対する手当もかなり手厚く、また学費に関しては地域によっては無償化されている等、充実した制度が整っている。
よって、子育てを通じて借金を重ねて多重債務に陥る等、世界でトップクラスの経済力を持つ日本にあっては、前時代的で今では非現実的である。つまり彼らの話は捏造なのだと論難した。
「アンタ、どこの誰か知らんけど、この証文見てみいや。な、クー子も見てみィ。」
そう言うとナニワ兄弟は概ね縦30センチメートルの紙、ビジネス界に君臨する所謂A4のペーパーに記された借用書を示してみせた。
つづく