第33ターン 俺っち、クー子の過去を知る
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
純は初めてと言っていい。クー子の真っ暗な表情を見たのは。明るい下町のサンシャイン、クー子。それが大阪弁を漏らし、絶句している。
一体何が起きているのか。純と夢原が真相を知るのに時間は掛からなかった。二人の闖入者がクー子の過去を暴露したのだ。
「久しぶりやなぁ、クー子。お前がアマを離れて何年になる?」
瓜二つ、お揃いのジャージ姿の一人が馴れ馴れしくクー子に近づく。どうやら彼らはクー子の古い知り合いらしい。
夢サン、アマって何だ?純が当惑する。きっと尼崎のことだろう、兵庫県下にあるオオサカだ、夢原が当たりをつける。
「クー子、お前ら親子が夜逃げして、まさか静岡に隠れてたとはなぁ。」
もう一人のソックリーズがネチッこい眼でクー子を舐め回す。
「夜逃げやなんて人聞きの悪いこと言わんといて!お父ちゃんとお母ちゃんは故あって離婚したんや!」
ハイカラな言葉遣いから、純はてっきりクー子の出身を東京方面だと思い込んでいたが、それはドギツイ大阪弁を韜晦する為だったようだ。
そもそも純とクー子の出会いは小学校時代に遡る。転校生のクー子が独りぼっちでいるところに純が声をかけた。港から潮の香りが届く小さな児童クラブ。たしか明るい夕方だった気がする。
陽気な純と気っ風がいいクー子。意気投合した二人はその後、性別を越えた友人となったが、純はクー子の家族について余り詳しくは聞かされていなかった。
「どんな訳があったか知らんけど、そのお母ちゃんとお前の弟はアマで苦労してるみたいやでぇ。」
ソックリーズの一人が謎をかける。
なんやて!お母ちゃんらにアンタら何かしたんか?!狼狽するクー子、クククッと嘲笑するソックリーズ。
「おっと、俺等はそっちのお兄さんに用があるんや。よう、兄さんや。俺等と闘うんや。」
俺等はナニワの格ゲー兄弟、ナニワ・エクスペリエンスと、二人は唱和した。
「格ゲーで対戦や!さもないと、仲良し小好しのクー子が泣くで。クー子の家族が悲惨なメに合うでぇ〜」
つづく