第28ターン 二つのサスペンス
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
厳しく咎める音々の眼差し。目を伏せ黙り込む夢原。一気に場の空気が凍てついた。
「姉ちゃん、何怒ってんだよ!」
純がたまらず口を挟む。意味わかんねえよ。だって、このオタク族(花崎のこと)に勝てたのは夢サンのおかげじゃあないのか、純は夢原を擁護した。
「それに、夢サンって有名なプロゲーマーなんだって?スゲェよ!」
純が興奮気味にまくし立てる。病室の面々からは確かにどっかで見た顔だ、NHKのプロなんとかでやってたゾの声が飛ぶ。
「え、オジサンって有名人なの!?」
どちらかというとミーハーの部類に入るクー子も興味を隠し切れない。
「、、!違うの!そうじゃあないの!」
音々が堪らず大きな声を出した。違うのよ、純、そうじゃあないの。姉ちゃんは、、そう言うとなんと音々が泣き崩れてしまった。
「おっと、レディース!」
崩れる音々をすかさず支える花崎。抜け目のねえ奴だと独りごちるクー子、純は初めて見た感情的な姉とその涙にすっかり狼狽した。
「ね、姉ちゃん、ゴメン、ゴメンよ。」
「大丈夫か、、姉ちゃん?姉ちゃんも俺っちの初勝利を喜んでくれているもんだと思ってサ、、つい、」
「だってサ、さっき小パンチを挟んだのも姉ちゃんの指示じゃないか。前も垂直ジャンプのヒントくれたし」
「だから姉ちゃん、実は格ゲー詳しくて、嫌いじゃないのかなって、、」
純がそう言った時、姉の音々が俄に泣き止み、純の顔をジッ見つめた。
「、、純、姉ちゃ何も言ってないよ」
え、姉ちゃんが小パン挟むの、教えてくれたじゃない?嘘ダロ、、
「、、じゃ、あの声は誰の、、」
つづく