第27ターン 俺っち、夢サンの正体を知る
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
純と花崎の第2ラウンドは純の辛勝に終わった。これで純と花崎の戦績はイーブン。
夢原に礼を言う純、オッサン、いや夢サンのおかげで勝てたと。いつになく殊勝な純に照れ臭さそうに苦笑する夢原。どこかしら申し訳なさそうでもある。
オジサン、いいトコあるじゃん!クー子がバンッと夢原の背中を張る。ゲホッ、咳き込む夢原。痛いじゃあないか、このお転婆!病室に和やか空気が流れる。
そんな様子を複雑そうに見ている二人の人物がいる。花崎と純の姉、音々だ。
「エブリィワン、さっきから盛り上がっているけどサ、セコンドなんてずるくね?」
花崎が夢原にケチをつける。お前も執事に助けてもらってだろ!純がブーメランを返す。すると花崎が不思議なこと言い出した。
「大体さぁ、夢原とか夢サンとか言ってるけど、ユーは伝説の格ゲーマー、夢原省吾じゃないんですか?」
お前は夢原省吾ダロ!花崎の暴露に夢原から笑顔が消える。音々が冥く俯く。
僅かの沈黙の後、堰を切ったように音々が叫んだ。
「どうして戻ってきたんですか?純に関わらない約束じゃなかったんですか?!」
強張った貌の音々。その瞳は鋭く、そして哀しく夢原を睨みつけている。
つづく