最終ターン 俺っち、プロゲーマーになる!
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
格ゲーマーの始祖とも呼ばれる父、日乃本タケルを探す旅に出る、共に精進しよう!そう純は仲間達に声をかけたが、チームのカピタン、花崎 誇の表情が煮えきらない。
「オ、オイッ、オタク族。どうしたんだよ。俺っち達と格ゲー続ける、よな。」
花崎の顔色を見て純が問いかける。すると花崎が実は、と胸の内を語った。
「日乃本クン、ミーもユー達と格ゲーを続けたい。が、、ミーは、、、受験生なんだ!」
何とそうだった!一学年上の花崎には進学がある、大学受験があったのだ。しかも彼は医者の子、医療法人花崎会の跡取り。入試までもう半年を切っている。
「実は、、ミーは受験勉強でスランプに陥っていたんだ。その時、格ゲーに、そして日乃本クン達に出合ったのさ。」
だから今後 暫くは勉強に専念する、とにかく北陸か山陰の県立医科大に何としてでも滑り込むと、かなり具体的なストラテジーを隠す所なく明かした。
「じゃあさオタク族、受験が終わったら必ずチームに帰ってくるノダ、約束ダゾ。」
と、クー子。今生の別れでもないのに目が潤んでいる。下町の太陽は人一倍寂しがり屋だ。そして純が良きライバルにして兄貴分との暫しの別れを受け入れる。
「ああ、分かったよ。受験頑張れよオタク族。でもよ、チーム夢原からは脱げさせないゼ。」
照れくさくなったのか、純は背中を向けて少し怒ったように言い放った。
「ずっとキャプテンでいてくれるよな!」
オフ・コース、花崎は力強くそう答えるとサムズアップで仲間達に柔らかい微笑みを送る。純もどうやら泣いているようだ。
「フンッ、おセンチな馬鹿ゲーマー達。見るに耐えない三文芝居、吐き気がいたしますワ、ア〜ハッハッハッハッ!!」
ウエットな青春の一コマに耐えられない花崎蘭子。彼女も未だ若い。
「どーせすぐに格ゲーに飽きたなんて言ってケツを割るんだから、このアタクシがお兄様に代わって監視してあげても良くってよ。」
「あんだとぉ〜!!」
クー子が蘭子に食ってかかるとコーチ陣のmakoとム〜ドがまあまあと窘める。
蘭子、まさかお前、、、小さくつぶやき気づかれないように微笑む兄、花崎 誇。妹の恋心に気づいたのだろう。
夕日に染まる関帝廟、さっきまではあんなに沢山いた観衆達もすっかりいなくなり、チーム夢原の面々と花崎蘭子の影だけがそこにある。
「姉ちゃん、みんな、そして夢サン!俺っちはやる、俺っちはプロの格ゲーマーになって、、いつか親父を見つけ出す!!」
熱血!格ゲーマー純 完
一年間にわたるご愛読ありがとうございました。来年から始まるシリーズ第二弾、「激闘!格ゲーマー純」にご期待下さい。
【緊急告知】
さ来週から新シリーズ開始!
湖国滋賀県を舞台に米国からの留学生?と担任教員、クラスメートらとの触れ合いを描くハートフル・コメディ「高2ジョンストン」をお届けします。
[主な登場人物]
・ジョンストン
米国シアトルから来た謎の青年
・秀子
あだ名はデコたん。ジョンストンの担任
・ヨースケ
不良少年。ジョンストンのクラスメート
・榎田先輩
デコたんの先輩教員でウーマン・リブの活動家




