第209ターン 急展開、衝撃の事実!
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
インターナショナル格ゲーアソシエーション、国際格ゲー連盟、略称IKA。格ゲー界を裏で操るとも噂される秘密結社に父、日乃本タケルは在籍した。それが何を意味するのか。
「や、ややこしいこと言うんじやあねえ!俺っちのオヤジが何をしたって言うんだ!」
次々と明らかになる父親の過去をどう理解してよいのか分からない純。そんな弟の様子を見かねた姉の音々がDr.木浪を問い質す。
「あなたは私達の父が何の為にその研究データを連盟に提供したのか、知っているのですか?」
「えッ?そ、そんなもの、知りゃあせんよ。おおよそ金が目的だったんじやあないのか。吾輩はそう思うゾ。ヨ、ヨシッ。」
少し苛立った感じで答えた木浪。音々から日乃本タケルの裏切りに動機はあったのかと確認され、やや狼狽えてしまった。
そうや、ドクター。犯罪ちゅうもんには必ず動機ってもんがあるやろ、とルンペンのオッチャンが音々の指摘を拝借する。あくまでも尋問の主役は自分、そう言っているようにも聞こえる。そして例の薮睨みでズバリ。
「日乃本タケルが裏切りったというアンタの推測は説得力に欠けるんや、ドクター!」
「う〜うるさい、ビックリしたなあ!何にせよ日乃本タケルがデータを持って吾輩のもとから去ったのは事実だッ。そして今もIKAの幹部として隠然たる力でゲーム業界を支配しておるのだよ!」
何だとお!直情日本一の純が木浪に突っかかるとこれを音々が強く押し止める。強く強く押し止める。
「姉ちゃん!痛えよ、痛え!!」
ごめん純。ぶっきらぼうに言った音々の貌は純が今まで見たことがないような不思議な表情だった。目を大きく見開き、口元はかすかに震え笑っているようにも見える。
「ち、父は、、日乃本タケルは未だ何処かで生きているんですか!?」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。ドクター花崎に恨みを抱いていた。
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・木浪伸之介
脳外科の世界的権威。日乃本 尊と繋がりのある人物。格闘ゲームのリハビリ応用を研究していたようだ。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




