第200ターン ダブル・ノックダウン!勝利はどちらに?
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
ダブル・ノックダウン、純は初めてその結末を体験した。会場の関帝廟が一瞬静寂に包まれ、そして落胆とも驚きともつかないどよめきが湧き上がった。
レフェリーのピカピカ先生も驚きを隠せずにようやく勝敗を宣告する。ドロー!両者引き分け!チーム夢原と神獣倶楽部の団体戦はチーム夢原が2勝一敗一引き分けで幕を閉じた。
歓喜に湧くというよりも、安堵の声が漏れるチーム夢原。一方の神獣倶楽部は想定外の敗北を受け入れられない。不快指数200%男、青木龍一郎が負け惜しみを撒き散らす。
「狡いですよぉ!めくりって裏ワザでしょ?そんなバグもどきの技を使って勝っても、無効ですよ無効。ノーカン!」
青木の子どもじみたクレームに白井、玄田の神獣メンバーがノーカン、ノーカンと声を合わせる。
「シャウトアップ!仕様は仕様、ユー達もゲーマーの端くれならメーカーサイドの思惑くらい想定しなさい!」
チーム夢原のカピタン、花崎がピシャリと神獣倶楽部に言い放つ。理屈が通っているのかは微妙なところだが、このような場合は勢いが肝心。惨めなのは花崎の反論に気圧された神獣倶楽部だ。が、そこに
「はあ?!何言ってんだあ、コラァ!」
と、キョーレツに絡んできたのはやはり花崎蘭子だ。もはや反社並の威圧感で兄、花崎 誇を恫喝する。こんな不当なやり口で勝ったと言えるのかと難クセを並び立てる。
「お客さん!どうですかぁ!」
さらには会場を煽る花崎蘭子、一流のヒールのアジテーションに付和雷同型の聴衆がノーカン、ノーカンと一斉に叫び出す。
思いも寄らない急展開にコーチ陣のmakoとム〜ドも面食らってしまい対処に苦慮する。
「もお〜大阪のオッチャン、なんとかするノダ!」
クー子がルンペンのオッチャンに助けを求めるも、オッチャンは関帝廟からコソコソと逃げ出そうとする始末。
「あ〜!訳ワカメェ!何なんだヨ!!」
と、怒りを爆発させた純。その刹那、純の目の前に何処からか小太りの男が突如現れ、高らかに宣告した。
「鎮まれぇ、しずまれぇ〜!この場は不肖、木浪伸之介が預かった!!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




