第197ターン めくり、その機能はバグか裏ワザか
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「思い出したぜぇ!オタク族、オメェの必殺のスカートめくりを!!」
純坊、スカートは余計や!といいながらもコーチmakoは我が意を得たりと声を上げる。ちょいとエッチなム〜ド専任コーチも満更でもない様子だ。
「純坊、神獣倶楽部はめくりに耐性がないッ!メーカーサイドが主役キャラに授けたボーナスを使いこなすんやぁ!」
コーチmakoの言葉を待つまでもなく、純は親指を方向キーの上斜めに滑らせると、リョウがジャンプ一番、中キックをカトーに向けて放つ。
カードを固めてカウンター狙いの青木・カトーは「めくり」への対処が出来ておらず、リョウの右膝がカトーの頭部に強かヒットする。
やりィ!makoとクー子がハミングすれば、ナイスですねえ、とム〜ドがノスタルジックなギャグを重ねる。
しかし、中キック一発ではボスキャラ、カトーの体力を削り切るには至らない。そこからコンボに如何にして繋ぐか、残り時間は少ない。
「純!この際、めくりにめくるノダぁ〜」
クー子がめくって、めくって、めくって、メクるうぅ〜♪と往年の名歌謡「夢想花」を捩って粋なアドバイスを送る。
「ガッテン!めくりに、めくってッ」
やらぁぁ〜!と再びジャンプ中キックを仕掛ける純・リョウ。しかし何故かめくれずカトーにガードされてしまう。
「そ、その、めくりッて、なんなんですか!ガードしてるのにオカシイ!バグでしょ!」
偶然か、リョウのめくりを冷や汗モノで回避できた青木が感情に任せて捲し立てる。
「うるへいヤツラ!バグってハニー!これが仕様なんですよぉ〜」
かつての青木発言を当て擦った純のお返しに、コイツはいいやと花崎が手を打って笑えばシニカルな蛭田は苦笑する。そしてクー子がこれ見よがしに腹を抱えて大笑する。
このチーム夢原の挑発的な連携プレイに自尊心の権化、神獣倶楽部の花崎蘭子がついに平衡を失う。ぎやああああ!!
「おんどりゃ何笑っとんじやあ!青木、めくりなんか、とにかくガードしとけやあ!右に左に動かしとけ!!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




