第196ターン 学び変わる若き格ゲーマー
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
青木の罠にハマり、再び劣勢に陥った純。刻一刻と対戦時間が過ぎていく中で、如何にしてこの状況を打開するのか。
必殺のコンボに持ち込むには純が操るリョウ得意の間合いに詰めて行かなければならない。しかし、安易に前進すれば青木・カトーのカウンターの餌食になるのは目に見えている。
刹那の刻の中で、純が懸命に頭を巡らせると、頼れる相棒、クー子が大きな気づきを与えてくれる。
「純!オタク族の闘いを思い出すノダ!ヲタが純の為に負けを覚悟して試した技を思い出すノダ!」
「ザッツ・ライト!日乃本クン、ゲンとリョウは、ほぼ同じ属性のキャラだ。ミーの立ち回りを真似てくれッ!」
我が意を得たりとチーム夢原のカピタン、花崎も純にアドバイスを送る。若きチームメイト間の作戦会議を黙って聞いているコーチ陣、makoとム〜ド。
「これぞ格ゲーの真髄。プレイヤーが自ら学び変わる、也か。」
満足そうな表情を浮かべるコーチ達を横目で眺めながら、第四のメンバー蛭田が呟く。彼もまた、何かを掴んだようだ。
「あららドウしましたのぉ?格ゲーお馬鹿サン!攻めないと時間切れで負けてしまいますわよ〜ア〜ハッハッハ!」
しばらく大人しくしていた花崎蘭子が純を挑発するが、意を決した純には雑音程度にしか聞こえなかった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。