第192ターン 俺っち、立ち回りに悩む
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
純と花崎がキャンプで磨いてきたコンボ、ただその連発技を決めるには、相手との距離を詰めなくてはいけない。
如何にして自分の間合いで相手との距離を詰めるか、これがコンボの肝になる。
純が操る空手家リョウとほぼ同じ属性を持つキャラ、アメリカンなゲンを使って花崎が示した距離の詰め方、それを純は記憶の中で反芻する。
と、様子を見ていた純・リョウに青木・カトー得意のスライディングキックが襲ってくる。これをしゃがみガードでかわしたリョウ。
が、それは青木も折込済みでガードを固めるリョウを片手で掴み上げ、ガハハと笑い反対方向に投げ捨てる。大技をくらったリョウの体力がグッと減る。
そこにまたカトーがスライディングキックを擦って、再び投技を狙ってくる!
「ワッワッ!純、危ないノダ!!」
クー子が思わず叫ぶが、純には想定内のカトーの立ち回りだった。
「何度も同じことやってんじやあねえぞ!」
純は一声上げるといいタイミングで投技を選択し、相手の投技を相殺する「投げ抜け」で対抗!
「クッ、ちょっとは格ゲーを理解したみたいですねぇ、馬鹿ゲーマー!」
技の組み立てを読まれて、心理的にプレッシャーのかかる不快指数200%男、青木龍一郎。たとえベテランの格ゲーマーであっても、お前のやり口はお見通し、とされると心が騒めいてしまう。
そこに隙が生じるのは算数の公式のようなもの。青木の僅かな戸惑いに純のコンボが火を吹く。
しゃがみ小キック、しゃがみ小パンチ、そして再び→↓↗→○ジャンピングアッパーカット、
「飛竜〜拳!」
純・リョウの見事なコンボが青木・カトーにヒットし、カトーの体力がグッと減り、両キャラの残り体力ではリョウが若干優勢となる。
幸先よく第三ラウンドの緒戦を制した純だが、これは敵失によるラッキーであって純の立ち回りによるものではなかった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




