第184ターン 俺っち、ナメプレイに鉄槌!
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
守備的に構え、カウンターアタックを目論む青木龍一郎が操る魔人カトー。純・空手家リョウも安易に距離を詰めることは出来ない。
焦れる展開ではあるが、ここは早まらないこと。ジックリと相手の出かたを観るのも格ゲーの重要な技術。コーチmakoはそのあたりにも純の成長を感じる。
が、既に一敗を喫しており後が無い状態にある純自身は、今にも攻めに転じたいという思いもある。そんな純の一瞬の隙を付いてカトーの人間魚雷、サイキックアタックが火を吹く。
「トゥーロング!なんて長いレンジなんだ!」
チーム夢原のカピタン、距離の把握には定評のある花崎も驚きを隠せない。他のキャラなら届かない技が届いてしまうのがボスキャラゆえのご都合設定か。
とまれ、魔人カトーの飛び道具が炸裂し、リョウの体力ゲージがグッと減り、カトーと同じくらいの七割程度の残り体力となった。
「クククッ、こちらが冷静になれば何も出来ないざんすか?」
と、痛いトコロを突いてくる不快指数200%男・青木龍一郎。確かに格下のプレイヤーのペースにハマり主導権を取り戻せないままラウンドが終わる。中堅プレイヤーにありがちなそんな展開を巧みに回避してみせた青木。この点だけでも並のプレイヤーとは一線を画す。
「もうコーチ!一体全体ジュンはどう攻めるノダ!?」
堪らずクー子がmakoに救いを求める。が、まぁ見ときとだけ言うmako。何か秘策があるのか。
一方の青木はロングレンジの技への対応が未熟とみたのか、同じ技を擦ってくる。同じ技を繰り返し食らうことでの心理的ダメージも計算のうちだ。
「ほうら、サイキックアタッ〜ク!」
その侮ったプレイ、リスペクトを欠いた俗に言うナメプが青木の命取りとなった。純が待ってましたとばかりに指先を→↓↗疾走らせる!
「ナメ猫ッ、舐めんなよ!飛竜〜拳!」
見事なタイミングで純・リョウの迎撃の一撃が放たれたのだった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。