第183ターン リョウVSカトー第2ラウンド始まる
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「純坊!狙ってくるで、気ぃつけや!」
試合開始と同時にコーチmakoが純に指示を出す。相手の出鼻を挫く為に先制の奇襲を仕掛けるスタイル。これは主に中堅プレイヤーに見られる戦法で、makoはこれを警戒した。
果たせるかな、青木の操るカトーはいきなりスライディングキックを純のリョウにお見舞いするが、これを既所で、ガードする純・リョウ。makoの見立てがハマった格好だ。
隙かさず訓練したコンボを狙う純・リョウ。小キック、しゃがみ小パンチ、そして→↓↗→○ジャンピングアッパーカット、
「飛竜〜拳!」
リョウの見事なコンボがカトーに炸裂し、その体力が20%ほど、グッと減る。
幸先の良く必殺技を決めた純に会場の関帝廟とチーム夢原の面々が一気に沸く。
「クッ、やってくれるじゃあ〜りませんか!」
慌ててバックステップで距離を取り、態勢を立て直す青木・カトー。筋骨隆々とした体躯ながら身のこなしが早い。パワーとスピードを兼ね備えた穴の無い設え、当にボスキャラだ。
これに追撃の気流拳を放つ純・リョウ。流れるような立ち回りはキャンプの賜物。
makoの合理的な指導が実を結んだ結果だ。純は確実にワンランク上のゲーマーになったと言える。
「さて、これからの展開が課題也。」
チーム夢原の文士、蛭田が呟くとム〜ドもこれに同意する。
「ディフェンシブに構える格上相手にどうこれを崩すのか、純坊の成長が試されるね。」
画面のかなり右奥で純・リョウの飛び道具を垂直ジャンプで軽々とかわす青木・カトー。緩急を付けた気流拳の連発にも見事なタイミングでそれらをかわして見せる。
次なる攻撃を如何に仕掛けるか、攻勢の純ではあったが、幾ばくかの焦りが出始めていた。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




