第181ターン 花崎、君はTOO SHY
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
信じていいのか、純にそう問われて答えられない花崎。チーム夢原のカピタンの複雑な成育が素直になることを妨げる。
まさかハイティーンになって初めて出来た親友がお前なんだ、なんて口が裂けても言うことは出来ない。鼻持ちならない医者の息子は格ゲーに救われた。格ゲーを通じて「仲間」が出来、リーダーに指名されてからは育ちの良さから来る寛容さが目立つようになってきた。
周囲も花崎は変わった、そんな目で見るようになってきたこの頃、それはユー達のお陰さ、と衒いなく言えるほどには、彼は未だ成熟していない。
そんな花崎の思いを代弁したのはチーム夢原の紅一点、下町の太陽クー子だ。
「純、さっきのオタク族の対戦見なかったのかい?負けを引き受けて、ボロボロになりながら、新しい技を、ヒントを純の為に探ってたじやあないか。」
神獣倶楽部の本格派、白井虎之助が操るムエタイ戦士ガットと、花崎のアメリカンな空手家ゲンとの死闘は白井の勝利に終わったが、「距離の詰め方」という難題に一つの解、ヒントを花崎が純にもたらした。
純と花崎がキャンプで磨いたコンボ技は実は奥が深く、実践においてはただ技を繋げれば成立するものではなかった。如何にしてコンボの発動まで相手との距離を詰めるのか、これがカギとなっていたのだ。
今回の闘いは純のルーツ、格ゲーマーの始祖、日乃本タケルの実相を追う為の団体戦。花崎の圧倒的な自己犠牲に偽りがあろうハズはない。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ム〜ド む〜ど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
ム〜ド同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ルンペンのオッチャン
自らを自由なる人と呼ぶ初老の男。makoの知人らしい。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。