第166ターン ボスキャラ、魔人カトー登場
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
レディ、ファイト!レフェリー、ピカピカ先生が甲高い声で試合開始を告げる。今、最終決戦の火蓋は切って落とされた。関帝廟に静かな高揚感が波紋のように広がっていく。
神獣倶楽部の総大将、不快指数200%男、青木龍一郎が選んだキャラはロードバトラー2のボスキャラ、魔人カトーだ。
この旧帝国の軍服を来たキャラは、格闘家などではなくサイコキネシスの遣い手で作品の基本設定をかなり逸脱した存在だ。そのあたりに制作サイドのフレキシビリティが滲んでくるが、その大味加減もまた、この格ゲーの魅力の一つ。とまれ、対戦は始まっている。
純の心理状態を慮るコーチmakoが指示を出しあぐねていると、純の姉、音々が代打をかって出る。
「純、距離をとって!相手の出方を見ていこう。」
穏当な入り方だ。純はCPU戦でも魔人カトーと闘ったことがない。カトーの技の構成も知らないし、青木のやり様も初体験だ。とりあえず、バックステップでスペースを作る純・リョウ。
そこに青木・カトーのスライディングキックが襲いかかる。そのリーチは異常に長く、リョウの足元に届いてしまう。ファーストヒットを許してしまうリョウ。
すぐに反撃に出たい純。が、駄目だ。さっきの蘭子の暴露が頭にもたげる。自分は陰謀の中で踊らされていたのか。仲間たちとは偽りの友情だったのか。
怒りと哀しみでとても格ゲーに集中出来る状態ではない純。姉の音々はその心の内が手に取るほど、そして痛いほど分かる。
どうすれば純はメンタルを回復出来るのか、音々が悩んでいる間に青木・カトーは攻勢をかける。
「ヌハハハ!サイキックアタッ〜ク!!」
カトーが水泳の飛び込みのような格好でドリルのように回転しながら突進してくる。これをまともに食らった純・リョウの体力はグッと減り早くも残り50%以下になってしまった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




