第164ターン 暴露?俺っちを取り巻く陰謀論
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「違う、誤解ダッ!」
チーム夢原のカピタン、花崎がムキになって反論する。得意のイングリッシュが出ないのは本気の怒りゆえにだろう。
蘭子、お前何を言うんだ!と、怒り心頭の花崎が妹に詰め寄るが、蘭子はせせら笑って取り合わない。兄の肩を軽く突いて距離を戻す。
「あらら、お兄様。何を今更。」
そもそも日乃本純の格ゲー修業はリハビリ目的だったでしょ。それをお父様が無償で支援したのはトーゼン、研究の為。
「それは俺っちも分かってる!最初はその約束だった。」
純が質す。でもよ、オタク族、オメェ、格ゲーが好きになったんじゃねえのか!俺っちとタッグを組んだのもオヤジの為だったてのか?
「それは違う!それは、、」
何故か言い淀む花崎。純の不信感が増す。クー子も音々も安易には口を開くことが出来ない、不用意な一言が命取りになる。そこに蘭子が遠慮なく話を挟み込む。
「だいたい都合良く対戦相手が次から次と現れるなんて、おかしいと思わなくて?ア〜ハッハッハッ!」
たしかに、ナニワ兄弟にデス・メタル、そして今戦っている神獣倶楽部。少しづつ強くなっていく対戦相手達は、純が飽きずに格ゲーを続けるのにちょうどいい案配だった。
全てお父様が仕組んだもの、それをセッセと用意したのが、ねぇ、事務長。そういう事でしょ?と、蘭子が観衆の中にいる医療法人花崎会の事務長に水を向ける。
「お嬢様もお人が悪い。イヒヒ。」
そりゃ日乃本クンには格ゲーを頑張ってもらわなくては。ケーシー先生のご指示で色々と動かせていただきましたよ、西に東に。ええ、そりゃもう。ハイ。
「なんなら、ほら、あの夢原とかいうアル中。格ゲーコーチとか言ってたけど、元々はウチの患者。お父様に頼み込まれたんじゃないのかしら、コーチしてやれって。アハハハ。」
蘭子の暴露は止まらない。格ゲーレジェンド夢原さえもDr.ケーシー花崎の一味だったというのか。であるならば、makoやム〜ドそして蛭田さえも、、次々と現れた支援者や仲間達は、被検体・純のデータを集める為の仕掛けに過ぎなかったのか。
「何だよ、対戦もチームも、みんな研究の為の造り物だったてのか?どういうことだよ、、、」
茫然自失となる純。が、神獣倶楽部との最終戦は待ってくれない。最悪の心理状態でファイナルに臨むチーム夢原のエースに試合開始のゴングが近づいている。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




