第162ターン サスペンス?!嗤う蘭子
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
マイクを使っての半ば反則攻撃、このトリッキーなセイント・リカの奇策がチャン・リーを操る花崎蘭子のペースを乱し、焦った蘭子の隙を攻めてクー子のセイント・リカが劇的な勝利を収めた。
崖っぷちからした逆転したクー子は重圧から開放され放心したのか、突伏して動こうとしない。少し震えているようだ。心配した専任コーチのム〜ドが駆け寄り肩に手を掛けようとすると、
「イェース!!」
目を剥いて左拳を突き上げ、観衆にアッピールするクー子。ブラックミュージックの大物か、あるいは米マット界のスーパースターを思わせるようなパフォーマンスに関帝廟が熱狂の坩堝と化す。
チーム夢原の面々がクー子に駆け寄り、その勝利をセレブレイトする。やったなクー子、純がクー子とハイタッチ。どさくさに紛れてム〜ドはクー子に抱きつこうとするが、これにはmakoが空手チョップでお仕置きする。
グッジョブ!とサムズアップのカピタン花崎、見事に御座候と蛭田も称賛を惜しまない。団体戦勝利に王手をかけたチーム夢原に強く固い一体感が醸される。
「ク、ククッ、、クククッ、、」
笑い声が聞こえてくる。クー子に惜敗した蘭子が何故か笑っているではないか。
「オイッ、ランラン!何が可笑しい?負け惜しみか?見苦しいゾ!」
純の口撃に蘭子は堪えられないといった顔つきで大声で笑い出す。ア〜ハッハッハッ、ア〜ハッハッハッ!
「見苦しい?このアタクシが?ア〜ハッハッハッハッ!見苦しいというより、悲しいのは格ゲーおバカ、日乃本純、ア・ナ・タですわよ。ア〜ハッハッハッ!」
今にも涙を流さんばかりに大爆笑する花崎蘭子。これにつられたのか、神獣倶楽部の面々も声を合わせてゲヒゲヒと笑い始めた。
「オレっちが悲しい?どういうことだ、ランラン説明しろッ!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。