第160ターン ム〜ド、クー子に秘策を授ける
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
留学生の朱さん改花崎蘭子が操るチャン・リーと下町の太陽ことクー子のセイント・リカとの一騎討ち最終ラウンド。
驚きの蘭子カミングアウトに一時中断していたが、蘭子・チャンリーの飛び道具、掌底波が再開の合図となる。
これを垂直ジャンプでかわすクー子・リカ。両者の残り体力は各々チャン・リー約20%、リカが40%ほどでリカに分がある。
「ワキ毛ッ!もう見切ったノダ!」
クー子が得意の↓↘→△ヒップアタックを放つが、これはタイミングが合わずに弾抜けをしくじり被弾。するとチャン・リーが距離をグッと詰め、百発蹴をリカにお見舞いする。ガードが遅れたリカに炸裂し、体力が瞬く間に削られる。
「オイッ、どスケベ!ランランの奴、動きが良くなってねえか?」
「多分、瓶底メガネを外したからだろう。分かりやすいというか、なんというか。」
花崎らプレイヤーの総意を純が代弁すると専任コーチのム〜ドも形勢の再逆転に厳しい表情で答える。ノーガードの打ち合いなら、クー子優勢と踏んでいたが、今の百発蹴のダメージは痛い。
お嬢様、ナイスですねぇ!なんと花崎の応援団と思われていた事務長をはじめ医療法人花崎会の面々が蘭子の攻勢にやんやの声援を送る。よく見るとDr.ケーシー花崎の顔もある。
コンニャロメ!リカがローリングソバットを打ち込むが、これはチャン・リーが巧みにガード。待ってましたと反撃に荒熊倒を狙うが、偶然か?リカが投げ抜けで対応、チャン・リーの投げ技をなんとかはね返す。クー子が圧されている。
流れ変えなあかん、リズムを変えなあかんね。コーチmakoがム〜ドに目配せすると、ム〜ドも意を決したのか、クー子に指示を送る。
「クー子ちゃん!○と△を同時に押すんだ!!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。