158ターン 留学生の朱さん、その正体は?
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「ヘイヘイ!チャン・リーはヒビってるよ!飛び道具ばっか擦ってんじゃないよ、狡いド素人!」
純の姉、音々の非常に珍しい煽りがクー子を勇気百倍にする。野次られる朱さんは怒りに震えてコントローラーが手につかない。そこにクー子・リカのハイアングルのドロップキック→R2が炸裂する。
「いいゾ、クー子!オイッ、瓶底マスク!素顔を見せれないのか、このお多福め!」
口の悪さならやはり弟の純が一枚上手。音々の口撃に協力プレーのツープラトンだ。所謂ルッキズムの非難もなんのその。禁忌を恐れぬ全身高校生、それが日乃本純だ。
「何ですってぇぇええ!!!」
留学生、朱さんがあまりにネィティブなイントネーションで激怒すると、彼女は眼鏡とマスクを投げ捨ててしまう。
「な、何やってんだ!!」
不快指数200%男、青木龍一郎が珍しく狼狽している。その他の神獣倶楽部たちも唖然として朱さんの妄動を見つめる。
朱さんが人民帽を脱ぎ捨てると、その下からは長い巻毛がフワリと広がる。
素顔を晒した留学生の朱さん。そこには皆が知ってる美貌が現れ、チーム夢原の面々は言葉を失った。
「ホ、ホワット!?蘭子、ユーは何しに横浜へ??」
チーム夢原のカピタン花崎は驚きのあまり、コントローラーを握り不敵に笑う妹に詰問するのであった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。