第152ターン クー子の快勝と音々の疑念
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
ムッカ〜!!クー子に蹂躙される留学生・朱さんが怒り燃える。瓶底メガネとマスクからその表情を見て取ることは出来ないが、全身が怒り狂っている。
そんな朱さんが冷静にプレイ出来るはずがない、クー子・リカはジャンプでタウン中の朱さん・チャンリーの反対側に回り、立ち上がりの際にしゃがみ大キックR2をお見舞いする。
ガードが遅れるチャン・リーがリカの攻撃に沈む。ピカピカ先生が巻き舌でコールする、セイント・リカ、ウィン!
ゲーミングチェアを蹴ってすっくと立ち上がり、両耳に手を当て聴取からの声援を求めるクー子。パフォーマンスは既に超一流だ。
相当の負けず嫌いと思しき朱さんがコントローラーを地面に叩きつける。好対照なムーブに会場からドッと歓声が上がる。関帝廟は熱狂の坩堝だ。オイッ、コラッ!コントローラーは友達だぞと純が囃し立てる。
「あのぉ、、お嬢さん、本当に大丈夫なんですか?」
不快感指数200%男、神獣倶楽部の首魁、青木龍一郎が朱さんに遠慮がちに声をかける。お嬢さん?奇妙な言い方だ。
純の姉、音々は留学生・朱さんの流暢なイントネーションに何かひっかかるものがあったが、さらに「お嬢さん」、とはこれ如何に?
面妖なサスペンスを抱え、チーム夢原と神獣倶楽部の第三戦は第二ラウンドを向かえる。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。