第151ターン クー子、優勢に対戦を進める
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「クー子ちゃん、相手は百発蹴狙いだ、距離を取れ!」
専任コーチのム〜ドから指示が飛ぶ。バックステップでクー子・リカがスペースを作る。朱さん・チャンリーはジャンプで追いすがる。
「蹴っ飛ばせ、クー子!」
純が叫ぶとガッテンとばかりにローリングソバットを放つリカ。これはチャン・リーが巧みにガードする。
そして互いに投げ技を狙うが所謂「投げ抜け」状態になる。ジャンケンに例えるならば、あいこ、の状態だ。若干の距離が出来る二人。
「滑れ、クー子ちゃん!」
ム〜ドからの指示は大胆なしゃがみ大キックの選択。無防備にも思えるハイリスクな攻撃だが、これには意図がある。
「クレバー!相手の力量を試すんですね、ミスターム〜ド?」
花崎が問うと、確かに格ゲー素人は足元の防御が未熟也、と蛭田が続く。果たせるかな、リカのスライディングキックはチャン・リーにヒットし、足元をすくわれたかのように転倒する。
「ヘイッ、オネエさん、アンヨがお留守だぜぇ!」
純が白井よろしくスギちゃんのモノマネで挑発して見せる。クー子優勢の中、第一ラウンドは終盤戦へと向かう。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




