第15ターン 熱闘、純VS花崎
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
レディー、ファイ!闘いの火蓋は切って落とされた。純が慣れない手付きでプレイキャラのリョウを前進させると、花崎のゲンはサッと後退した。
すっ、素早い!移動速度がまるで違う。
「は、花崎、おめぇズルしてねえかぁ!」
「何言ってるんだよ、バックステップさ。バト2の基本だ!」
俺っちはそんなの知らねぇ、と純。それこそ事知ったことじゃないと花崎。マニュアル読めよと突き放す。端からマニュアル無かったよ!とクー子が厳しく指弾する。
と、その時、花崎のキャラ、ゲンが手から奇妙な波動を出した。
「喰らえ、気流拳!」
以前、花崎がDSで使ってみせた殴る蹴るとは違い「気」で攻撃する特殊技を早々から繰り出してきたのだ。これが純リョウの顔面にヒットする。
「痛てぇ!卑怯なことすンだよ!」
卑怯もクソもあるか、と花崎ゲンは気流拳を連発する。現実ね~だろこんな技!と、頑固な拳法少年の純。ゲームだッつッてンだろが!と花崎。
ペシっ、ペシっと花崎ゲンの気流拳が純リョウの体力を削っていく。もう体力ゲージが真っ赤*になりそうだ。純危うし!
[註]バト2ではキャラの体力がゼロになると負けとなる。黄色い体力ゲージは攻撃を受ける度に赤色に変わり、ゼロになるとゲージが真っ赤になる。
その時、
「純、垂直ジャンプ!」
の声が届く。
分かった姉ちゃん、純はすかさず左指で操作キーの上を押す。すると純リョウは真上にジャンプして、花崎ゲンの気流拳を見事にかわしたのだった。
やった!クー子が喝采を送るとケーシー花崎も驚きの表情を見せて唸る。
「憤まん、悔しさが指の麻痺を忘れさせたのか?OH!リハビリテーション!」
「花崎、お前の技は見切ったゾ!勝負はこれからだッ!」
病室に純のアジテーションが響き渡った。
つづく