第147ターン 決着、ゲンVSガット
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「オイッ、どスケベ!スカートめくり、てなんだヨ?」
「純坊、スカートは余計だ、めくりだ。」
つまり、とム〜ドが純ら弟子達にめくりのセオリーを解説する。
「成る程。相手の防御方向の逆から攻める技ということ也か。」
理解の早い蛭田のレスに純とクー子も訳知り顔で相槌を打つ。無論、ポーズだけで肉体派の二人は未だ要領を得ないようだ。
「めくりは、タイミングが重要。それと距離感もね。」
コーチmakoが補足しながら、花崎にラッシュを指示する。ヲタくん、もう一発や、もう一回めくるんや!そしてこう続けた。
「純坊、よく見とくんやで!ヲタくんがゲンを使ってキミのリョウのシミュレーションをしてるんや!」
ノ、ノ、ノ。それはシュミレーションなのダ、と余計なことを言うクー子を横目に見ながらmakoの言葉に目を覚ました純、おフザケはここまでだ。
「オタク族、オメェの真心、受け止めた!」
純がそう叫んだ時に花崎は再びジャンプ一閃、中キックでめくりを果敢に狙う。
「ヒィィィまた、めくりが来たゼエ!」
すっかり弱気になった白井はムエタイショットでの迎撃も忘れて、既に破られたガードに固執してしまう。格ゲーマーなら覚えのある悪癖だ。
決まった!またゲンのめくりがガットを捉え、ダメージが深くガットに刻み込まれる。花崎、大逆転かと思われた時、
「ターイムゥ〜アーッㇷ゚!」
ピカピカ先生の厳粛な合図が響き、無情にも対戦終了のゴングが鳴る。若干体力を多く残した白井・ガットに軍配が上がった。
最後は白井を圧倒したものの破れた花崎。が、その闘いにおいて残したレガシィは大きなものだ。
負けて申し訳ないと、チームメンバーに謝罪するカピタン花崎にコーチmakoが賛辞を贈る。
「よく、実地でチャレンジしたね!人間相手の本気勝負やないと学べない技術もあるんよ。見事やったで、キャプテン!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。