第140ターン 俺っち、格ゲー鉄の掟を知る
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「間合いを、距離を管理出来てる、相手は一枚上手かも、、」
新任コーチmakoが苦悶の表情を浮かべる。笑顔とエクボが魅力の彼女、元気印の格ゲー小町が眉をひそめる。
「立ち回り、キャラの動かし方だけどね、中級以降はこれが決定的に重要になってくる。」
陽性のテロリストならぬエロリスト、ム〜ドも厳しい表情で弟子達に諭して聞かせる。どうやら彼としても花崎と白井の実力差は認めざる得ないようだ。
不用意に飛び込み、対空技を喰らった花崎。まだ冷静さを取り戻せてないだろう。純とクー子が盛んにおらがキャプテン、花崎 誇にエールを送る。
「オイッ!オタク族、余計なことは考えんな!練習したコンボで木偶坊をボコンボコンにしてやれ!」
「そーだ、そーだ!相手はコッチに合わせて闘うチキン野郎だヨ!金取って観せるプロの仕事を教えてやれって!」
そんなチーム夢原の口撃を意に介さない神獣倶楽部の面々、白井虎之助は肩を揺すってヌハハハと嗤い、青木龍一郎はヤレヤレといった様子で玄田亀吉と目を合わせる。留学生の朱さんだけは何故か花崎をジッと瓶底メガネから見つめている。
「トゥーディフィカルト、、こちらの技が届かない。どうすればこちらの間合いに持って行けるのか。。」
今の花崎には白井・ガットに対抗する技術の引き出しがない。近づけば相手の間合いに入り込んでしまい、リーチの長い蹴り技を喰らってしまう。
対戦中に見つかった課題は対戦中に解決しなければならない。格ゲー鉄の掟だ。
花崎が勝ってチーム夢原が団体戦の勝利に王手をかけるか、実力に勝る白井が勝って神獣倶楽部が巻き返すか。
レディーファイ!第3ラウンド、運命の鐘の音が関帝廟に響いた。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




