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熱血!格ゲーマー純  作者: 行者BUSYOU
138/214

第138ターン 驚愕、コンボの弱点

不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。

 もう、お前の動きは見切った、そう神獣倶楽部の白井は花崎に言い放った。ゲンとガット、似た技を持つもの同士のミラーマッチは第2ラウンドに進む。


 本ラウンドも前哨戦は飛び道具の交換から始まるが、先のラウンドとは異なり今度はガットが前に出てきた。


 ゲンの気流拳を垂直ジャンプでかわすと、ガットがそのままキックを打ち込む。


「ヘイッ、少々遠いんじゃ、、何ィ!」


 届かないと読んだ花崎の見切りとは裏腹に、ガットのジャンプしての中キックがゲンの顔面をとらえた。なんとガットのリーチはゲンとは比べ物にならないほどの長さがあったのだ。

 

「オーライ、それなら受けて立つ!」


 花崎・ゲンは前ステップでガットとの距離を詰め、小パンチからの必殺コンボを狙うと、


 ナニッ!ガットに攻撃が届かない。ガットはゲンの前進を読み、同じだけ後退して距離を保ち、再び中キックをゲンにお見舞いする。


 当たらない、ゲンの技が届かない。狼狽を隠せない花崎。一方でガットの中キックはヒットし続ける。余りにもその反復的な機械的な攻撃に、会場からは野次も飛ぶが、もう後が無い白井・ガットは構わず同じ技をこすり続ける。


「あ、アカン!完全にガットの距離や、、」


 コーチmakoがほぞを噛む。ゲンの弱みを見透かされたか、エッチで温和なム〜ドも厳しい表情に変わる。


「距離の管理までは、手が回らんかったのが、、」


 珍しくも元気印のmakoが悔恨の回想に浸ってしまう、、、



「オッシャ〜俺っちのコンボ、また決まったぜ!」


 ゴキゲンな純が快気炎を上げる、新コーチmakoも満足げにその様子を見つめる。神獣倶楽部との決戦も間近、合宿は仕上げの段階に入っている。


「しっかし、このコンボってのマスターしたら誰にも負けないんじぁないのか。ナハ!ナハナハ!」


 エグザクトリィ!花崎も純に同意しながらmakoら新コーチへの謝意を忘れない。


「コンボの基礎はフレームの理論、コーチ達のご指導でミー達も随分と上達した思います、サンキューソオマッチ!」


 が、そんな二人をよそに釈然としない表情は下町の社会派、我らがクー子。


「でもサ、コンボしてたらずっと攻撃が続けられるの?なんだかヘンチクリンなのだ。」


 さっすが!察しがいいねぇ☆ゲーム業界の諸星あたることム〜ド専任コーチがクー子を持ち上げる。愛弟子に密着してコホンッと咳払い一つ。


「そもそもの問題として、技が届かないとね。コンボの一発目、小パンチや小キックはリーチが短い。」


 実はそれが一番肝心な所なんだよ、ム〜ドが穏やかに弟子らを諭すと、makoが言葉を引き継いだ。


「距離の管理、これが次の宿題になるんやけど、今回はそこまでは行けへんわ。」


 キャラ同士の距離間は千差万別やからなぁ、個別対策の話にもなってしまうから大変やでッと、makoはニッコリ笑って純の両肩を揉んだ・・・


「距離の管理、総論だけでもやっておくべきやったわ、、」


 夢原の衣鉢を継ぐ新任コーチ、makoはその麗しい顔を歪めて悔やむのであった。


つづく

人物紹介

・日乃本 純 ひのもと じゅん

 本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。


・クー子 くーこ

 純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。


・音々 ねね

 純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。


・花崎 誇 はなさき ほこる

 医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。


・夢原 省吾 ゆめはら しょうご

 伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。


・花崎蘭子 はなさき らんこ

 花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。


・蛭田恭介 ひるた きょうすけ

元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。


・日乃本尊 ひのもと たける

純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。


・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ

青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。


・ムード むーど

夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。


・mako まこ

むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。


・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき

 医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。


・事務長 じむちょう

 医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、


・ロードバトラー2

 人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。

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