第137ターン 第1ラウンド決着!ゲンvsガット
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「飛竜〜拳!」
花崎の絶叫が響くと、ゲンがガットにジャンピングアッパーカットをブチかます。ガットのムエタイショットをすり抜けての一撃だ。
「あ、あぁ!前も見たノダ!相手の飛び道具を抜けて攻撃出来る技なのダ!」
歓喜の声を上げるクー子にム〜ドが総称、弾抜けってヤツさ、と格ゲーマメ知識をさりげなく伝授する。師弟関係も板に付いてきた、そんな感もあるやり取りだ。
「一気に詰める、コンボや!」
今行くしかない!ここが勝機と見定めた攻撃型コーチmakoが花崎にラッシュの指示を送る。リスクテイカー、それが彼女のジプシーゲーマー時代の通り名。
アイノォ!花崎は応えると起き上がるガットに対して、しゃがみ小キック、しゃがみ小パンチ、そして再び→↓↗→○ジャンピングアッパーカット、
「飛竜〜けぇぇぇん!!」
ゲンのコンボの前にガットの体力ゲージがゼロになる、果たせるかな!花崎・ゲンの劇的な逆転勝利だ!
会場の関帝廟では観衆の驚きと喝采に沸き立つ。今日もド派手なジャケットがお似合いのピカピカ先生が厳かに花崎の勝利を告げる。ゲン、ウィン!
すると、我らがカピタン花崎は何故か祭神の関帝に向かってどうだ!と言わんばかりに、キザなポーズを取って見せる。チーム夢原の精神的支柱はショーマンシップにも長けているようだ。
「おバカな!何故に起き攻めを許す?ガードしておればよいものを!」
「あんな素人臭い弾抜けに狼狽して!」
神獣倶楽部のプレジデント、不快指数200%男の青木が憮然として白井を責め立てる。
「投げ技との二択で惑って焦っちまい、、」
どうやら、白井には投げ抜けの印象が脳裏に残っていたようだ。花崎・ゲンが飛び道具、コンボのみならず、第三の選択肢、投げ技を対戦半ばに見せておいたことが、白井に迷いを生起せしめた、そういう構図だ。
「が、しかぁ〜し、お前の動きは見切った!もう油断しないゼエ!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。