表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
熱血!格ゲーマー純  作者: 行者BUSYOU
134/214

第134ターン 起き攻め、青春の分水嶺

不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。

 まさにミラーマッチ。早くもその気配が漂う。ゲンの飛び道具、気流拳をガットのムエタイショットが迎撃する。


 遠距離での前哨戦は五分の展開、花崎・ゲンが気流拳を大、中、小と打ち分けて飛び道具を不規則に放つが、白井・ガットは難なくこれに対処する。


「ヲタくん、しばらく辛抱やで。」


 コーチmakoが花崎に自重を求める。このような焦れる展開に初級ゲーマーはつい先に動きだして墓穴を掘る。


 武道やスポーツそして恋愛、対戦ものは全て先に動いた者がリスクを負う。そして手痛いしっぺ返しを食い、自ずと劣勢の中での苦闘、暗中模索となる。


 コーチmakoとしては、序盤は相手の出方、力量を測ってからその対処を選んでいく戦略。現役の格ゲーマー二人をセコンドに擁するチーム夢原はこの点で神獣倶楽部に圧倒的なアドバンテージがあると言っていい。


「フンッ、えらく守備的じゃねえか。こっちから行くゼエ!」


 白井・ガットがジャンプ一番、飛び膝蹴りを繰り出すと、これは空を切る。が、ゲンとの距離が縮まる。攻撃を移動に応用する技術だ。


 そしてガットは続け様に中キックを放つが、ゲンがこれをしゃがみガードで回避する。


「行けッ、オタク族!コンボだ!!」


 純の叫びと同時だった。花崎が操るゲンがしゃがみ小キック、しゃがみ小パンチ、そして→↓↗→○ジャンピングアッパーカット、


「飛竜〜拳!」


 ゲンのコマンド技が炸裂する。技の連続、コンボを学んだ花崎が見事に実戦でその技術を披露した。


「ウヘッ、やはりコンボは凄いノダァ!」 


 クー子が少し辟易した様子でコンボ、その連続技の破壊力に驚嘆する。ガットの体力ゲージの30%ほどが減る。事務長ら、花崎応援隊もヤンヤの歓声を上げる。


「飛竜拳よりその前の小パンチ、あれがミソ也。」


 蛭田がボソボソと呟く。フレームを心得タル者は百戦危うからず、か。


 コンボを的確に決めた花崎はバックステップで距離を取り直し、飛び道具、気流拳でガットを牽制する。


 その様子を厳しい目で黙って見つめるmako。ぽってりとした唇を歪めている。


「起き攻め、未だ自信ないのかな。」


 ム〜ドもいつものエッチな軽さが見られない。危ぶむように独りごちる。


「フンッ、成る程。坊っちゃん、詰めの甘さは後で命とりになるゼエ。」


 そう白井は嘲笑うと、これには対処できるかな?と言い放ち、なんとムエタイショットを上下に打ち分けてみせるのだった。


つづく

人物紹介

・日乃本 純 ひのもと じゅん

 本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。


・クー子 くーこ

 純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。


・音々 ねね

 純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。ゲーマーだった父の死を悔み、純をゲームから遠ざけてきた。


・花崎 誇 はなさき ほこる

 医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。


・夢原 省吾 ゆめはら しょうご

 伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。かつて純と音々の父、日乃本尊に格ゲーと人生を学んだ。


・花崎蘭子 はなさき らんこ

 花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。


・蛭田恭介 ひるた きょうすけ

元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。


・日乃本尊 ひのもと たける

純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。


・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ

青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。


・ムード むーど

夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。


・mako まこ

むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。


・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき

 医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。


・事務長 じむちょう

 医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。どうも怪しい動きを、、、


・ロードバトラー2

 人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ