第126ターン 蛭田、神獣戦の先鋒を買って出る
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
なんと頼もしい助っ人か。格ゲーを通じて分かりあえた、あの蛭田がチーム夢原に加わる。しかしながら、天邪鬼が時々顔を出すのが純でもある。
「お、オイッ、ニヒル、なんだよ急に助太刀なんて。俺っち達はついこの間、闘ったばかりなンだぜ。」
「無論、小生にとって貴殿は越えるべき好敵手。が、昨日の敵は今日の味方ともいう。」
ア〜もう、どうなっちゃてるノダ?クー子も気持ちの整理がつかずに悶えている。ムードとmakoは事態の推移を慎重に眺める。
「この胡散臭い、神獣某どもに鉄槌をおろす。」
そう蛭田は言うとゲーミングチェアに座りコントローラーを手にする。
すると今まで黙っていた音々が蛭田に問う。
「蛭田クン、教えて。どうしてキミが夢原さんの帽子を被っていたの?」
夢原が純らのもとを去ったのは音々との約束を守れなかったから。翻れば、音々さえ夢原を許せば彼は純ら弟子達と別れることはなかった。
だから、音々は気になる。その後の夢原の消息が。
「姉御殿、あのサンシャイン学院での対決の後、小生どうしてもマスター夢原の指導を受けたくて、静岡を去ろうと駅に向かうマスターを追いかけました。」
そして無理を承知で指導を申し出ました。やさぐれたゲイルではない、待ちゲイルではない、闘いの主導権を握るゲイルを教えて欲しいと頼み込みました。
「で、夢原さんは?」
同じゲイル遣いだったからか、少しだけならと3日だけ小生に稽古をつけてくれました。そして4日目の朝早くに消えていました。この帽子だけを残して。
黒にhマークのキャップ。音々の脳裏に夢原の面影が浮かぶ。
「ユーはそのブラックキャップの意味をチーム夢原の一員となれ、そういうメッセージだと受け取ったんだな。」
花崎の言葉に、そんなところで候と、蛭田は返してあらためて純達に、そして神獣倶楽部に宣告した。
「小生は格ゲーレジェンド、夢原省吾の弟子、チーム夢原第4の格ゲーマー也。」
雑魚ども、どこからでもかかってこい!
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。純らの次なる対戦相手。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。