第124ターン 神獣倶楽部、第四のゲーマー
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「ムフフ♡この饅頭、まるでオッパ、、」
ペシッ!既のところで、makoがムードの頭を叩き、最後の一言を制止した。ケイベツの眼差し〜クー子が横目でムードを睨む。
神獣倶楽部との決戦の地、横浜は中華街に乗り込んで来た純たちチーム夢原。決戦までは小一時間ほどあるので、折角だからと中華をパクつくことにした。
飲茶セットはお昼の定番、如才ないmakoが予約をしていたおかげて、休日の混雑を避けることが出来た。円卓を囲みゴキゲンなチーム夢原の面々。
「姉ちゃん、ダイコンの餅なんてあるんだな〜食ってみな!」
往路の車中でグッスリ眠った純は元気ハツラツだ。横浜遠征に中華街でのランチなんて、日々慎ましやかに暮らす純と音々にはとっては随分な贅沢。自然、テンションも上がる。
純の兄貴分、花崎はクー子と純が点心を取り合う様子に苦笑しながらも温かい眼差しを送る。皮肉屋で坊っちゃんだった花崎も、何事もストレートな純たちとの出会いで随分と変わった。
そろそろ時間やで。makoが皆に声をかけると焦って純は口に餡饅を放り込み、クー子はタピオカミルクを蛙のたまごじゃ〜と喚きながら喉に流し込む。
アホな子やなぁ、音々とmakoがクスクスと笑い、チーム夢原に一体感が生まれる。それを横目に見ながらサッと勘定を手に取るムード。一足先に支払いに向かう。
店を出た純たちが関帝廟に向かうと、そこには既に黒山の人集り。石段を登り、龍をあしらった派手な門をくぐると中庭には大型モニターとその脇にスピーカー、そしてプレステ3。
「逃げずに来ちゃったんですねぇ。」
スピーカーの脇から声がしたかと思うと、不快指数200%男、青木龍一郎が現れた。続いて白井虎之助、玄田亀吉が顔を見せ、神獣倶楽部の三人組がそろった。
出たな、ケダモノ三人組!純が吠えると青木が妙な事を言った。
「三人?神獣倶楽部は四人ですよ。朱さん、出てきて下さいな。」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。純らの次なる対戦相手。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。