第120ターン 音々の平成陰謀論
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
時間が出来ると時々訪れるこの場所。純の姉、音々は今、焼津神社にいる。古代の英雄ゆかりのこの神社は、何故か音々が心和む隠れ家でもある。
純らの次の闘い、相手の神獣倶楽部は負ければ日乃本 尊、純と音々の父親について詳しく教えると言う。
知りたい、父のことを知りたい。でも、怖い。幼い頃にこの世を去った父が本当は何をしていた人なのか、格ゲーとはどんな関係かあったのか。知りたい、怖い。
夢原と再会した時は本当に驚いた。おぼろげに覚えていた夢原の顔とトレードマークの黒にhのキャップ。父と親しげに話していたお兄さんが今や格ゲー界のレジェンド。じゃ父さんは何者?
音々には幼い頃、小さな掌でギュッと握った父親の指の感覚が残っている。あのゴツゴツした感じ、あれはゲームだこ?
でも、どうしてあの神獣倶楽部は父のことを知っているの?あんな若者達が父と知り合いの訳がない。誰かが教えている?
考えてみればこの間、次から次へと対戦相手達が現れては、純に対戦を要求する。オタク、大阪人、ニヒリスト。奇妙だ。
背後に何かがある。大学で社会政策を学ぶ彼女は、流行りの陰謀論に流されるタイプではないが、そう考えなければ理由のつかないことが多すぎる。
暦の上ではセプテンバー。が、未だ蒸し暑さの残る夕暮れ時。拝殿の階段に腰かけ、音々がふとスマホを眺めるとポータルサイトのトップニュースに気になる記事が。
ゲームでリハビリ、帝国大の研究チームが英国学術誌に発表。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と音々の父にして、夢原の師匠。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄
・神獣倶楽部 しんじゅう くらぶ
青木、白井、玄田の格ゲー三人組。日乃本尊の実相を知るとされる。純らの次なる対戦相手。
・ムード むーど
夢原が自分の代わりに純らのもとに送りこんだ新コーチ。ちょっとエッチでお尻が好き。
・mako まこ
むーど同様、夢原の仲間で純らの新コーチ。大阪からやって来た理系女子。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。




