第11ターン 俺っち、コントローラーを握る
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー根性物語。
交通事故による高次機能障害、難しい言い方をすればそうなる。が、純はいずれはこれまでどおり自由に身体を動かせるようになる、そう考えている。
おかしな流れでゲームのプレイでリハビリをすることになった純、幼馴染のクー子はどこか喜んでいるが、姉の音々(ねね)はどうやら歓迎していないようだ。
ゲームリハビリが決まった翌日には最新のゲーム機が運ばれてきた。プレイステーション3だ。
ゲーム音痴の純だって名前くらいは知っている。
「日乃本クン、このプレステ3は発売日には警察が出動するほどのレベルだったんだよ。」
「ユー、ラッキィだねえ、人気ゲームが出来てさぁ!」
花崎のヤツ、そんな事を言ってたなぁ。そして捨てゼリフ、一週間後に僕と対戦しよう、格ゲーのロードバトラー2で闘おうと一方的に決めやがった。あのオタク族め。
まあ、正直何でもいい。こちとら治療費が無料にさえなれば何の問題もない。勝とうが負けようが、対戦はテキトーに済ませばいい。
そうは言うものの、マッタク使えないのは流石に都合が悪いので、一応練習しておくか、と純は初めてプレステに電源を入れた。
青い画面に不思議と癒やされる起動音、純は生まれて初めてコントローラーを握った。
つづく