第104ターン リョウVSゲイル、終盤戦に
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
純が操るリョウは蛭田のゲイルが放った飛び道具、ソウルビームをコマンド技、烈風脚で躱した。
そしてゲイルの懐に飛び込んだリョウは相手の弱点である足元に回し蹴りを叩き込む。
これは「抜け」の技術によって距離を詰め、さらに攻撃につなげるという戦法でバトツーの上達には必須のコンビネーションだ。
やったぜ、ベイビー!喝采を送る純の真ダチ、クー子。使う台詞がどこかハイカラな乙女は性別を越えた純のバディだ。
この一発で優勢となった純は勢い大技を狙って大キックを狙う。そこを今度は蛭田は見逃さない。
「ムゥーン・サルトキッィーク!!」
ゲイル必殺のバック宙キックが火を吹く。攻勢となって技の組み合わせが大雑把になる初心者の悪癖を、経験に勝る蛭田が見逃さなかった格好だ。
概ね一分が経過し、闘いは中盤から終盤へと流れ込む。今の攻防でリョウ、ゲイル両者の体力は互角、残り30%ぐらいだ。
「純、慎重に行こう、慎重に。」
セコンドのマスター夢原が純を落ち着ける。イッツ・オーライ、と花崎もイマイチ?なイングリッシュで純を勇気づける。
一方の蘭子陣営は蘭子のテンションが上がらないからか、静かにこの最終戦を見守っている。
格ゲーは一種の神経戦だ。相手の得意技を潰して心理的に優位に立った純だったが、隙を逃さない蛭田の反撃に動揺が走る。
蛭田の方は純の攻勢を食い止め、ひと息ついた格好だが、飛び道具による牽制を攻略されたことはには変わりがない。彼もまた冷静ではいられなかった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。