第102ターン 格ゲー、その教えと学び
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
純と蛭田の最終ラウンド、緒戦からアグレッシブなスタイルにサンシャイン学院の大講堂は大いに沸く。
蛭田が操るゲイルは中キック、ソバットを繰り出し、これが空を切ると今度は長いレンジの屈み大キックで足払いを選択。
これを屈みガードで耐えた純が操るリョウだが、ゲイルの屈み大キックには二の矢があり、これに被弾する。
たまらずバックステップで距離をとる純・リョウ。すかさず飛び道具、気流拳を打ち込む。これが追撃を意図した蛭田・ゲイルにクリーンヒット。
続けざまに気流拳を連発するリョウ。すると今度はゲイルが飛び道具ソウルビームのお返し。画面中央でこれらがぶつかり合い火花を散らす。お互い譲らない展開に会場からはどよめきが起こる。
この攻防を目を細めて見つめる、業界のレジェンド、夢原省吾。ゲイルの遣い手としてあまりにも有名な彼の目にも蛭田のファイトはポジティブに映る。
自分が考案した「待ちゲイル」は間違いだった。攻めて勝つ、この闘いのリビドーこそが格ゲーの真髄。蛭田やなんと弟子の純がこれを身をもって表現している。
まだまだプレイは稚拙な純だが、夢原が格ゲーを通じて最も教えたかったことを実践してくれている。一番大事なことは伝えれた。
「タケさん、これで良かったんですよね。。」
静かに寂しそうに呟いた夢原。その横顔を切なそうに見つめる音々(ねね)の姿があった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。