第100ターン 格ゲーマー純、クー子、花崎
不慮の事故から身体の自由を失った高校生、日乃本純は格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
ユー達のおかげだよ、クー子ちゃん。ミーは格ゲーで少し変われたような気がする。オバマ大統領のチェンジさ。
なんて、合宿の時に言ってたな花崎クン、オタク族。いっつもヲタは気取った英語を使う。全くヘンチクリンなのダ。
ユーとかミーとかさ、、あれッ、、、
アマ*から焼津に来たての頃、児童クラブですぐに純が友達になってくれた。最高のダチや。
[註]アマ、尼崎市。兵庫県下のナニワである。
ある時、皆で焼津の港を描こう、絵を描こうて先生が言い出して、ウチらを海に連れて行ってくれた。
先生は歴史ファンやったのかな、この焼津で大昔のヒーローが凄い剣で大活躍したって教えてくれた。でもその剣は海に沈んでもう無いんやって。
そしたら純がウチに二人で探しに行こう、その草の剣を探しに行こうって言い出した。多分、絵を描くんが嫌やったんやろな、辛気臭いの純は苦手やったから。
ほんで、先生が目離した隙にウチら抜け出して、なんか海岸線をテクテク、静岡の方に歩いて行ったんかなあ、、
ウロウロしながら一時間近く歩いてたら日が落ちて暗くなってくるわ、あれ夏の終わりやったんかな、雨が降り出すわで最悪やった。
どうする純?て聞いたら純が道に迷うたて言い出して、、来た道帰ったらええだけなんやけど、なんかウロついているうちに方向分からんようになってて、、
ほんでや、トンネルの辺りで雨宿りしてたら、向こうの方から光がさしてきた。ヘッドライトや。
僕ら大丈夫?何しているの?言うてなんか親切にオッチャンが車に乗せてくれて、児童クラブまで送ってくれた。先生、めっちゃ怒ってて、発狂してたなぁ笑
でもその後、めっちゃ泣いて、、安心した言うて喜んで。ええ先生や。そやけどええ車やったなあ、子どもながら分かったわ、なんか座り心地最高やし。
それでや、誰やろう、前の助手席に座っていた男の子は。そうやねん、あの男の子、ウチと純が車降りる時に、最後に言いやったわ。
はぐれちゃったの?バカだなぁ!ミーが見つけてやったんだゼ。ユー達、もう大丈夫だよ、、、って
・・・
純、クー子、そして花崎。
三人のチーム夢原にとっての剣ヶ峰。花崎家の家督を賭けた闘い、その最終ラウンドが今、まさに始まる。クー子は不意に呼び覚まされた記憶に驚き、花崎誇の横顔を窺うように見つめた。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。元は少林寺拳法に汗を流す高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリ中。バト2では日本人空手家リョウを使う。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。
・音々 ねね
純の姉。両親を早く亡くした純の母親代わり。苦学して一家を支える博識。何か秘密を抱えているようだ。
・花崎 誇 はなさき ほこる
医療法人花崎会の跡取り。純のライバルで格ゲー仲間。アメリカンな空手家ゲンを使う。一人称はミー。
・夢原 省吾 ゆめはら しょうご
伝説のプロゲーマー。落ちぶれ飲んだくれに。純と花崎の指導者としてゲーム界に復帰。音々とは因縁が、、
・花崎蘭子 はなさき らんこ
花崎の妹。兄を侮る高慢な女子高生。自分こそが花崎家の跡取りに相応しいと思っているようだ。一人称はアタクシ。
・蛭田恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。今はニヒリストを気取り文学と格ゲーに耽る。一人称は小生。
・Drケーシー花崎 ドクターケーシーはなさき
医療法人花崎会の理事長にして、花崎兄妹の父。純に格ゲーによるリハビリを指導中。
・事務長 じむちょう
医療法人花崎会の事務方トップにして、花崎家の執事。
・ロードバトラー2
人気の格闘ゲーム。略称バトツー。リョウ、ゲン、ダル・シン、ハシミコフ、チャンリー、ゲイルなど多彩な格闘家が集う。某有名格闘ゲームとは無関係。