秋葉原ヲタク白書84 花園を空爆せよ
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第84話です。
今回は、秋葉原でアラビアンな王女探しをリクエストされますが、彼女は大使館員向け外人クラブのベリーダンサーにw
しかも、クラブの地下には世界中の麻薬カルテルが狙う、秘密の新種大麻の実験施設が隠されているコトが判明して…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 ミユリのひとり言
アキバは不思議。ヲタクが生み出す何より。
テリィ様は、よくそう仰る。彼と初めて会った時、私は未だ苦悩の海を漂う水母。
でも、彼と出逢って、そのstyleに触れたら、私の日々に急に彩りが戻ったの。
だから、いつも"その時"が来たら、迷わズに彼と"次"へ進んだわ。
すると、ヲタ友もドンドン増え….彼の逝うコトって、いつでも半分が真実。
でも、残り半分は妄想ょね。だから、アキバって不思議。だけど…良い街ょ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「貴女がミユリさん?私はミライ。テリィたんと名コンビなんだって?」
「お帰りなさいませ、お嬢様。全く答える気の起きない御質問をありがとw」
「貴女の助けが必要なの。ウチの王女がアキバで行方不明になった。この写メの娘ナンだけど」
ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
世界最古の科学ツールに準え"古代天体観測儀バー"とも呼ばれてる。
さて、今回の事件を持ち込んで来たのは、アラビアンな国の大使館員だ。
いや。見た目は白人、しかも金髪なのでハリウッドの女優かと思ったがw
「いつから行方不明に?」
「3日前。失踪騒ぎは前にもあったけど、大抵誰かの家に泊まってた。でも、今回は地下アイドル通りで牛丼を召し上がってるのをSNSにうpされて以来、全く消息がつかめナイ」
「王女…なのに?」
「一夫多妻の国柄ゆえ、王族と呼べる者が星の数ホドおられる。しかも、彼女の場合は、父親がいない。王妃が処女懐胎され、御生まれになった娘だから」
「ホ、ホントかょ?ソレってマリア様だょね?イスラム的にアリ?ってか王妃の段階で既に処女ではナイのでは?」
「とにかく!王女には、父君は生まれる前に亡くなられたとお話ししてきた。でも、成長されるにつれ、お知りになりたがり、去年ホントのコトをお話しした。すると…家出が始まった。ココ半年で4回も。日本の警察も、もう取り合ってくれない。だから、貴方に頼むしかナイの。お願い、王女を探して。貴方だけが頼りです」
「あぁ突発スターウォーズのレイア姫パターンだょ…念のために聞いとくけど、今いる人が何人亡くなると彼女が王妃に?」
「347人」
「…thank you。気が楽になった」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
人騒がせな王女の居場所は直ぐに判明。
たまたま御帰宅中のサイバー屋に探してもらったら裏アカウントがアッサリ判明。
色々発信してるけど、とりあえず短文サイトのTwipperに"マサラなう"とある。
"マサラ"は、地下アイドル通りの通称"モロッコビル"2Fにあるクラブで、最近はインバウンド専門の"外人バー"に方針転換中←
まぁコロナの前は、って話だがw
で、今はアキバはおろか、日本中からインバウンドが蒸発したので、さぞや青息吐息…
と思ったら、相変わらズ外国人客で満員、夜遅くまで大騒ぎしてる。どーなってるの?
謎の大使館員ミライと御帰宅。
あ、ミユリさんは御給仕中だ。
「オカエリナサイマセー!」
いきなりホットピンクのチョリ&スカート、ベールで顔半分隠し女子のお出迎え。
よく見ると…日本人ナンだけど、今にもベリーダンスとか踊り出しそうな雰囲気。
「ステージ前と奥のテーブル、両方空いてマスが、どちら?」
「君、だな」
「御注文は…私ですか?遊び慣れた御主人様だコト。うふふ」
すると、彼女は踊るような足取りで奥の暗いテーブルへと誘う。
席についた僕達の前で、彼女はヤニワに腰をクネらせ踊り出す。
「私はラパン。おイタな御主人様は?」
「テリィだ。コチラはミライ」
「私 "も"3Pは大好きっ!全然OKよっ!」
おぉコレって既に商談に入ってるワケかな?
「オイルも得意なの。楽しみましょう」
「あぁ。お仕置きが待ち切れないな、ダーリン」
「で、誰をお探しなの?」
え?思わず目の前のベリーダンサーを凝視。
「貴方、SF作家とメイド長のコンビの作家の方ょね。この前、スマホTVで見たわ。どーせまた人探しでしょ?…ダメ。私を見て目尻を下げてて。お店に怪しまれるわ」
「じゃハッキリ逝わせてもらうけど、君もスポーツブラだしマニキュアが雑だ。麻薬取締官だろ?潜入捜査中?」
「あら?チェックが厳しいのね?じゃ契約成立だわ。奥へ逝きましょう」
やたらテキパキ先を歩くラパン。
屈強なボディガードの前を通過。
奥は…絶対にベッドと思ったらソファw仕切りも分厚いカーテンが下がってるだけ←
お隣の声も喘ぎもダダ漏れで、コレって客同士で競争心を掻き立てる作戦だろうか?
「在日の各国大使館員を相手にしたビジネスモデルが当たった。手頃に日本の"萌え"が味わえるって、在京大使館員の間では今や超有名店ょ」
「"手頃な萌え"?3Pが?」
「欧米じゃ常識ょ(でもアンタは大和撫子だろw)?で、お探しは誰?早く見つけて出てって。目障りなの。あぁ!」
最後のはラパンの偽装の喘ぎだ、念のためw
「この子。出自は逝えないが、王女サマなんだ。シェヘラザードじゃないゾ。ううっ」
「何ソレ?いつもメイド長とそんな声で?あ、その子、知ってるわ。かなーりヤバいわょ。あはーん」
「え?何がヤバいンだ?くくっ」←
すると、ラパンはソレには応えズに、踊りをピタリと止めてホールへ出て逝く。
途中ボディガードに"もう1人追加"とか耳打ちスルと彼は僕の股間を凝視w
「あの子でしょ」
ラパンが指差す先で、ベリーダンサーがヤタラ下手クソに踊ってる。
目を凝らすと…如何にもお仕着せなヘソ出しアラビアン衣装の王女。
余りにヤル気の無いダンスにチップを落とす客は皆無w人気無いンだな…とか思ってたらナゼか急に彼女が魅力的な女に見えて来る!
おお!よーく見たら、笑えば何とかナルでしょ?そもそもヘソ出しだょ?あれ?今、コッチを見て笑った?僕に微笑んだ?ダーリン!
すると、ホール全体のその場に居合わせた誰もが口々に愛を叫び、恋をして、歌い出す、踊り出す、狂い出す!コレはインド映画か?
出演者全員が突如として歌い踊り出す、あのワクワクが今、目の前に!
麻取のランパに手を引かれミライとボディガードも舞台へ駆け上がる!
ああ!踊ってる!地球が、世界が、全てが…
第2章 ベリーダンサーのコスプレ
ううっ頭がズキズキ痛むw
「まさか、薬の手入れでテリィを現行犯逮捕とはな。しかも3Pヤッてたんだって?いくら何でもヤリ過ぎだろ?ミユリは知ってンのか?」
「頼むょ、鮫の旦那。コレは"調査"だから。ソレから3Pは未遂ナンで風評被害を立てるな。名誉毀損で訴えるぞ」
「いや。現行犯逮捕との報告を受けてる。因みに、ジュリ経由で既にミユリには筒抜けだ。今回は庇い切れンなー。クスクス」
新橋鮫は、万世橋の敏腕刑事ナンだが、どうやら僕はドリンクに何か盛られたみたいだ。
多幸感に溺れ恍惚中に、麻薬パーティとのタレコミを受けた万世橋が踏み込んだ模様だ。
阿鼻叫喚の大騒ぎの果てに、店に蔓延る薬の売人達は一網打尽となり検挙されて逝く。
因みに、客の大半は大使館の関係者だから手厚く外交特権に護られ軒並み無罪放免だw
謎の大使館員ミライも←
どうやら、僕が知らないトコロで色々アルようだが、僕のターゲットは王女だけだ。
もう一歩のトコロで乱痴気騒ぎに巻き込まれて取り逃がしたが、何処へ消えたのか?
「"毎晩盛り上がり必至"が、店のキャッチフレーズだったみたいだが、どーやら麻薬性のガスを大量に充満させて全員を無理矢理ハイにしてたみたいだ。テリィは一服盛られたと供述してたが、面倒臭いンで、お前もガスを吸ったコトにしてくれ。調書は適当に処分しとく」
「ええっ?無辜の市民の訴えを無碍に退けるのか?ソレでも警察かょ?おまわりさん、税金ドロボーです!って、ヤタラ無愛想なアラビアンガールだけど、実は王女が行方不明で探してルンだ。調書は処分して良いから、その代わり検挙者名簿を見せてょ…あれ、お茶でも煎れてくれるの?気が利くな」
「何を眠たいコト逝ってンだ。"アキバの重要参考人"に出すお茶はねぇよ。ホラ、特別サービスで検挙者の名簿。テリィの調書は廃棄スルからな」
確かにほうじ茶の香りがしたンだけど… 名簿に目を通すが王女らしい名前はナイ。
や?麻薬取締官かと思ったランパも検挙されてる…Gメンも捕まる急襲だったの?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんは怒ってイルw
現場で新橋鮫に"的確な指示"を与え、検挙者名簿を確認してから光速で御帰宅したが…
手遅れだwミユリさんには、ジュリ経由で既に欺瞞情報が吹き込まれてる。つまりその…
僕は業務上過失"3P"で検挙され(かけ)て…
「テリィ様!まさか3Pだなんてw」
「あぁミユリさん!タッチの差で君の耳に足枷となるニセ情報が…」
「足枷?私がテリィ様の足枷だと仰るのですか?」
ヤバい。作戦変更!
「僕は、いつもミユリさんのコトだけ思ってる。羨ましい。いや、ミユリさんではなく、君が口にするカクテルに僕は嫉妬スル。君のオリジナルカクテルに、僕はなりたい…」
「バカ」
「…うーんエロティックムードで誘惑丸め込み作戦も失敗か。もう少し低いハードルから始めないと僕には無理だなw」
見かねたヘルプのつぼみんがモジモジ。
「なぁ、つぼみちゃんからも一言頼むょ」
「ミユリ姉様、ベッドの御不満を御屋敷に持ち込むのはちょっち…」
「お黙り」
ありがと、つぼみん。
君は君の義務を完遂←
気まずい沈黙が流出原油のように広がり、取り巻く常連の輪が遠ざかる中、電話が鳴る。
御屋敷宛の電話と逝うのも珍しい。電話に出たつぼみんが無言で僕に受話器を差し出す。
「もしもし、テリィです。あ、鮫の旦那」
「…」
「…わかった、ありがと。ちょっち今、取り込んでるから」
新橋鮫から情報を聞くだけ聞き電話を切る。
傍らで王女探しに必死のミライがせっつく。
「何?王女の手がかりが見つかったの?」
「いや。でも、気になってたコトがあって。現場に漂ってたほうじ茶の香りナンだけど」
「ほうじ茶?ソレは、刑事の言ってた"麻薬性のガス"の残り香だわ。でも、既に消散したから問題はナイでしょ」
消散?何気に業界用語だょw
「でもさ、普通そーゆー匂いって甘ったるいンだょね?コパトーンみたいにさ。ソレが…ほうじ茶だょ?ソレも…天井近くの換気口から匂ったような気がするンだけど」
「換気口?テリィたんの気のせいでしょ。私と"3P"した時のアドレナリンが未だ残ってンじゃナイの?」
「(あれ?ホントに3Pしたのかなヲレw)あのな。何か必死に話題を変えようとしてるょね?で、念のために鮫の旦那に調べてもらったら、あの建物は、平成の頃に改修されてた。地上3階は店舗になったけど、空調は1つの配管で各階に空気を循環させてるらしいンだ」
「じゃ他の階の人達も多幸性ガスを浴びたの?」
「え?なぜ多幸性ガスだと?…3階は空き部屋でテナント募集中、2階が"マサラ"で1階の路面店はゲームのコンセプトカフェで夜は無人だった」
「そう。良かったじゃない。じゃ、もうそのコトは忘れましょ!あぁ忘れたわー!スッキリー(ワイドショーかょw)!」
「いや。そーゆー目線で再度現場を見に逝きたい。何か見落としがアルに違いナイ」
「えっ?何で?必要ナイでしょ?無駄足を踏むのは絶対に断固、徹底的に嫌ょ」
「異様に嫌がってるなぁwじゃ良いょ。僕だけで逝くから。ミユリさんも逝く?」
「モチロン参りません」←
「ほーら、御覧なさい。逝くならコンビで逝かなきゃ意味ナイわ。だって、テリィたんの目は節穴だから。だから!絶対に断固、徹底的に"モロッコビル"へ逝くのはおやめなさい」
「じゃ僕1人で逝く。現場100回って逝うだろ?調査の基本だ」
「…うーん仕方ナイ。ソレじゃ私も逝きます」
「え?今更ソレこそ要らないょ。ミユリさんが逝かナイのにミライと逝ったら、また誤解されるだけだ。ミライこそ来るな。絶対に断固、徹底的にお断り」
「ソ、ソコまで…わかりました!私もアラビアンなヘソ出しベリーダンサーのコスプレをしてあげます!ソレならテリィたんも私の同行を拒めないでしょ!どーよ!」
「う!そ、その手があったか…」
「テリィ様!」
わ!今度はミユリさんが大噴火w
「念のために申し上げておきますが、私はベリーダンサーのコスプレとか絶対致しませんので!念のため」
第3章 "6"の空爆要請
結局、ミライがコスプレするのを待ち2人でお出掛けスル。
ミユリさんが珍しくカウンターから出て来て僕に抱きつく。
まるで今生の別れみたいだ…
一方、ミライは"マサラ"までの夜道をアラビアンなダンスを踊りながら歩くがアチコチに付けたミニシンバルがメッチャうるさいw
思わズ僕も大声にナルw
「でさ!例の"モロッコビル"の地下だけどさ!きっと内緒で大麻の栽培とかやってるょね!」
「ええっ?!シッ!何でソンなスゴいコト、大きな声で逝うの?カルテルに消されるわよっ!」
「…だって、ミライのシンバルがウルさいンだモノ」
真夜中のパーツ通りのど真ん中で、アラビアンなコスプレ女と暫し無言で見つめ合う僕←
「テリィたん。貴方、ナゼ地下に栽培ハウスがアルとわかったの?」
「恐らく業界人のミライは承知だろうけど、大麻の栽培ハウスって大量のライトを1日中使うょね?僕は、昼間は趣味でサラリーマンをやってて、勤務先は第3新東京電力だ。"モロッコビル"で最も電力を消費している契約先を調べたら、何とあのビルには地下があってソコが1番使ってた。で、実は、さっきの電話だと、既に鮫の旦那と特殊部隊が現場に向かってる」
「ええっ?私、何処かで急いで着替えなきゃ。何でこんな格好してるの、私。バッカみたい」
え!そんな!せっかくのコスプレ脱ぐなょ!
「ま、待てょ!その前に話し合おうょ!」
「何を?」
「えっ?何を?そ、そうだね…」
僕の脳内は、千夜一夜物語を紡ぐシェヘラザード姫のように目まぐるしく働く!そうだ!
「君は何者?タダのお転婆王女のお目付役じゃナイょね?」
「私は…実は、ロイズ傘下の保険引受業者に雇われた調査員。地下の栽培ハウスは、ソンジョソコラの麻薬シンジケートの地下工場とはケタが違う。世界の農業界を支配スル国際医療メジャーが、植物学と遺伝子工学を掛け合わせ新種の大麻を作り出すための最先端地下実験施設なの。既に総額1兆ドルを注ぎ込んでる。当然、多額の保険もかけられてるわ」
「待って。鮫の旦那からメールだ。思った通り"モロッコビル"の地下は栽培ハウスだったらしい。すぐに来いって」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"モロッコビル"の地下には、恐らくビルより広い、小学校の講堂のような地下空間があり、そこ一面に"大麻"が植えられてるが…
その大麻が無惨に焼け焦げてイル。
「我々が到着した時は人の気配がなかった。完全にロボット化された最新型の大麻栽培施設みたいだ。ソレはともかく、この草を見てくれ」
「萌え…じゃなかった燃えてる」
「今は鎮火してるが、相当規模の火災があったらしい。末端価格で数億円分の大麻が焼失した。テリィが浮かれて3Pに励んだ麻薬性ガスは"マサラ"の連中がパーティの景気づけに撒き散らかしたモノじゃナイ。地下火災の煙だったンだ」
ソレで、俗に逝う甘ったるい香りではなくて、草が萌える、じゃなかった燃えるような、ほうじ茶?みたいな匂いがしたワケだw
「因みに、ココは正式に大麻取扱者を選任し知事免許を得て運営されてる認可ラボだ。所有名義は、国際医療メジャーの日本法人。そうとわかって特殊部隊は下がらせ、代わりに神田消防を呼んだ」
「どーりで。さっき、焼けた大麻の向こうに知合いのハシゴ小隊長の顔が見えた。つぼみんのTOナンだ」
「しかし、不思議なコトにラボ側からは、今もって火災通報がナイ。今回の消防出動の通報者は、何と俺だ」
「と逝うコトは、国際医療メジャーは、未だ火災を知らないのか?火災になれば、自動で通報が逝くシステムになってるだろう」
「まさか…」
僕の"冴え渡る鋭い直感"に基づき、新橋鮫が調べると、果たして警報は切られてイルw
「コレは火災じゃナイ…放火だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
放火は、殺人・強盗に次ぐ凶悪犯罪だ。
現住建造物等放火となると本庁捜査1課の出番にもなりかねない。
ところが、火災鑑識の準備に入った新橋鮫に何と撤収命令が出る。
「おい!何だかワカランが大急ぎで現場を撤収しろとのお達しだ!テリィ達もだ!外へ出ろ!」
「え?鮫の旦那、そりゃナイだろ。燃焼残物の確認・収去だけでも行おうょ」
「ダメだ。即時、非常線まで全員撤収!」
部下に大声で命令しつつ、地上へ走る新橋鮫の後を追おうとして…つまずくw
焼け残った大麻の間から緑の運動靴を履いた人の足が出てる!誰か倒れてる?
「大丈夫?あ、あれ?上半身が…」
「動かないで!大人しく手を上げて、テリィたん!」
「え?何?」
抱き起しながら僕が振り向くと、ミライが拳銃を突きつけるw
おいおいおい。保険の調査員って拳銃なんか持ってンのかよ?
「この上半身が黒焦げな人、ミライの知り合いか?関係を聞いても良いかな」
「良いけど…その答えを聞いたら、テリィたんにも同じ黒焦げになってもらう。その黒焦げは…私の元カレ」
「うーん黒焦げになる前からの元カレ?ソレとも黒焦げになったから元カレになったの?」
「微妙。別れたのは去年。実は何度も浮気されて。でも数ヶ月前"マサラ"で再会して、何となく、昔の感じに戻った」
「寝てる?」
「何度かね。でも、ヨリは戻してないけど。楽しむだけ」←
「彼は…この地下ラボの科学者だね?」
「地下ラボ…確かに国際医療メジャーはそう呼んでいたわね。でも、実態はアトリエよ。彼は、遺伝子操作をする、いわば芸術家なの。感心したわ。あんなに繊細で複雑なものを複製するなんて。科学と言うより、やはり芸術ね…ノルマで大麻を一定量栽培したら、後は彼は自由に研究に打ち込んでいた。その方面の博士号もいくつも持ってる」
「医療用大麻から娯楽用大麻への大麻合法化の流れが世界的に加速してる。国際医療メジャーはソッチ方面の布石を打ってるのでは?」
「公表はしてナイけど、モチロン麻薬合法化の準備もしてる。法律が変わり次第、直ぐに動けるようにね。しかし、国際医療メジャーは、必ずしも彼の才能を正しく評価しているとは限らなかった」
「どういう意味?」
「彼は、大学院時代に大麻の新種を作り始めた。遺伝子操作で。自分では吸わなかったけど、改良方法は確立した。そして、国際医療メジャーに目をつけられ…」
「雇われたのか。でも、潤沢な資金を与えられ自由に研究出来る御身分だった彼が、何で黒焦げにならなきゃナンないの?」
「彼は…飽きてたの、人生に。さらに、彼の存在や才能に気づいた世界の麻薬カルテルが彼の引き抜きに掛かってた。最初はみんな、金を積んだわ。でもね、彼の一族は…実はトンでもない大富豪なの。だから、最近では何処も脅迫に切り替えてたわw」
「まさか、ミライが探してるヤンチャな王女様の失踪は、その脅迫と何か関係が?」
「YES。王妃は…彼の妹です」
と逝うコトは、この黒焦げの人も王子と逝うコト?いやはや、王族も何百人もいるとなると、様々な運命を辿る人が出て来るモノだw
「さて、テリィたん。貴方は余りにも知り過ぎ、近づき過ぎ、秘密を握り過ぎたわ」
「ま、待て!今、全部キレイさっぱり忘れたトコロだ。あれ?君は誰?」
「最後まで愉快な人。じゃサヨナラ」
ミライが拳銃を僕のコメカミに…
その時、彼女のスマホに電話がw
「あら?ミユリさん?何で私の番号が…掛け直しても良いかしら。ちょっち立て込んでルンだけど」
「こんばんわ。ミライさんょね?ウチのテリィ様と御一緒かしら?」
「ええ。ちょうど今、3Pを終えて、コレから殺すトコロょ」←
「良かった!テリィ様とは、ちょうど潮時だったのょ」
「良かった?…テリィたん!何か喜んでるわょミユリさん」
「あぁ実は今、ちょっち(3Pで)モメてルンだ。参ったな」
「ミライさん。貴女を止めるつもりはないわ。でも、貴女と3Pしたり、殺されたりスル前に、テリィ様に一言お話ししておきたいコトがあるの。電話に出してくださる?」
「あはは。テリィたんも最後まで大変ね。ホラ、いとしのメイド長から最後の電話ょ」
「ミユリさん、僕だ。ホントに悪かったと思うけど。でも、コレが僕だから」
「テリィ様は、今のテリィ様のママで結構です。あ、そうそう。でもあと1つお話が。3,2,1…伏せてっ!」
大閃光と大音響。
僕の意識は飛ぶ。
第4章 サヨナラは空爆の後で
「"6"よりHQ。承認8480チャーリー。空爆命令。座標送る」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
指令を受けた"彼"は、闇夜に電子の目を凝らし、屋上の通風孔に狙いを定める。
高度3000mで"グランドスラム爆弾"をリリース。速やかに翼を翻して離脱スル。
"彼"が放った"グランドスラム爆弾"は、尾部のフィンを微調整させながら、美しい放物線を描きビル屋上の通風孔へと滑り込む。
そのママ通風孔を地下まで落ちて"地震爆弾"は起爆、地下ラボを完全に破砕スル。
だが、この作戦成功を"彼"が喜ぶコトはナイ。ナゼなら"彼"は、無人機だから。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
だが、ソノ空爆で地下ラボは全壊だw
"地震爆弾"だから火の手は上がらないが柱は折れ壁一面がヒビ割れ天井が落ちかける。
濛々たる粉塵の中、ライト片手の救助隊?がラボに飛び込んで来て、僕の名を呼んでる…
おぉい、ココだ…
真っ先に飛び込んで来た人影は…やや?頭にカチューシャだと?メイド?ミユリさんか?
「テリィ様!テリィ様は御無事ですか?」
「…生きてるょ。御帰宅しよう。御屋敷は何処?」
「ミライの元カレは、焼かれる前に死んでたそうです。死因は後頭部の鈍器損傷」
いきなりソレかょw
「うーん生きたまま焼くのが"ネックレーシング"なんだけどね」
「"ネックレーシング"?」
「麻薬カルテルが好む公開処刑の方法だ」
「"電子レンジ"みたいな?」
「うん。でも、やり方は、首にかけたタイヤにガソリンを入れて点火w」
「あら」
「黒焦げの元カレの横に落ちてたメモにポルトガル語で"徹底抗戦"とあった。間違いなくカルテルの手口だ。ブラジル系の麻薬シンジケートじゃナイかな。しかし、処刑前に殺すとは、案外寛大ナンだね」
「ライバルの麻薬カルテルの仕業でしょうか?」
「カルテルなら、通常は殺したサインを残したがるょ。ラボで実験中だった新種大麻を闇に流してトラブったとか…」
「新種大麻の闇に流す?」
「そう。ほとんどはネットオークションだ。出品するのは無難なモノ。例えばこのテーブル。その背景に本当に売りたいモノ、例えば新種大麻の鉢植えを置く。素人目にはただの背景だね」
「でも、テーブルが超高値で売れたら、ネットで話題になるでしょう?」
「取引は、非公開に出来る。そして1ドルの表示を100か1000の設定にする。もし15ドルで売れたら…」
「実際は1万5千ドル」
「ミライの元カレは、競り負けた者の恨みを買って殺されたのカモ」
「あぁ、またまたテリィ様の妄想が止まらない。空爆で死にかけた直後だと逝うのに」
「妄想じゃナイ。コレは推理だ。オフレコだけど、政治的報復の可能性もある。さっきカルテルの名が出たブラジルって麻薬的に10億規模のマーケットだけど、複数のカルテルが選挙に金を注ぎ込んで、自分達に有利な政策を展開したり…ソレをよく思わないカルテルがいたり」
「ハイ、ソコまで。ドレか1つは必ずや真実だとは思いマスが、それ以外は妄想ってコトで。クスクス」
「じゃ最後に妄想じゃナイ事実を1つ。元カレを縛ってたロープが燃えてない。普通はタイヤの熱で燃えるが、パラ系アラミド繊維カモしれない。極度の火に耐える目的で作られている。焼殺にはモッテコイだけど、コレが買えるのは軍用品や消防関係の店に限られる。まぁココから先は新橋鮫の仕事だょね。鮫の旦那にお任せサ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、新橋鮫がロープを大量に買った男を聞き込みで見つけ、防犯カメラに映ってた車のナンバーから指名手配、犯人は検挙される。
行方不明だった王女も、程なく"喜び組"に売り飛ばされる寸前にミライに救出される。
あ、ソレよりナニより…
あの空爆は、出がけに僕に抱きつくフリして付けた盗聴器で事態を察したミユリさんが"6"に相談した結果、行われたとのコトだ。
"6"はスパイのハンドラーで1回しか会ったコトが無いが、僕は彼女に貸しがアル←
まぁ、確かに貸しはアルのだけども…まーさかソノ貸しを"空爆"で返すか?普通w
ネックレーシングされた元カレも、消えた王女も、新種大麻の研究に1兆ドル出したスポンサーも、全員、産油国の華麗なる王族だ。
そして"モロッコビル"の"地下の花園"での秘めゴトは、王族間の駆け引きの末に空爆処分が決まり当局に通告されたモノらしいw
王宮でめぐらされる権謀術数の末に導き出される結論は、常に複雑怪奇だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の夜。
御屋敷へ通じる外階段の踊り場で、つぼみんが頑張っている。
いつも通り、三々五々御帰宅して来た常連達は全員足止めだ。
「今宵はテイクアウトオンリーです!」
「え?テイクアウト?バーのテイクアウトって聞いたコト無いなw」
「あ、テリィ様はどーぞ。他の御主人様方は全員、今宵はテイクアウトなのですっ!」
狐につままれたような顔で、つぼみんの脇を通り過ぎると"女子のヤメてはヤメないで"とかフシをつけて歌うように耳打ちされる。
嫌な予感しかしナイw
ママょと御帰宅すると、当たり前だけどカウンターには誰もいない。
すると、バックヤードのドアが薄く開き、細い手首がニュッと出る。
その指の指シンバルがシャンシャンとリズムを刻み出すや…ミユリさんが真っ赤なベリーダンサーのコスプレで…文字通り躍り出るw
誘うようなフィンガーアクション、挑むような眼差し、そして…激し過ぎる腰のクネり!
「わーお!素晴らしい!ミユリさん、最高だよっ!」
「いやーん、恥ずかしいwおヤメください」
「…」
大人しく黙ると頰赤らめミユリさんは呟くw
「…ホントにヤメちゃうの?」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"麻薬の地下ラボ"をネタに、同ラボの科学者、その妹で消えた王女、王女を探す保険会社の調査員などが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナ第2波に揺れる秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。