ばれた交際
◇◇◇第二組曲、求愛からの続き◇◇◇
「洋美!愛美!幸美!お前ら、どういう事なの!?異性交際は厳禁だろ!」
葵奈友美は三人の妹の洋美、愛美、幸美に問い詰める。洋美は左頬の痛みをこらへながら話す。
洋美:「私達、この人の妹になりたいの」
愛美:「愛美だって、悠お兄ちゃんの妹になりたい」
幸美:「幸美も同じ、もう友美姉ちゃんの妹でいるのは・・・」
友美:「どうしてなの?」
洋美:「友美姉ちゃん、怒ると、すぐ平手打ちだから」
愛美:「愛美だって、もう嫌よ!」
幸美:「幸美も同じ、もう友美姉ちゃんの妹でいるの嫌!」
友美:「洋美、愛美、幸美、お前ら、何考えてるんだ、バカ言うな!」
三人の妹に罵声を浴びせていた友美は三矢悠斗に向き直り問い詰める。
「ちょっと、私の妹に手を出したのは、あんたでしょ?何か、みだらで変な事を仕出かしたの!?」
友美の同級生二人が友美を引っ張り悠斗から強引に引き離す。そして遠くへと連れて行き立ち去って行く。友美と同級生の三人の姿が見えなくなるのを待って悠斗は洋美、愛美、幸美に声をかける。
悠斗:「洋美、愛美、幸美、大丈夫?」
洋美:「ううっ、いった〜い」
愛美:「うぇ〜ん、痛い。もう首女中に通えない〜」
幸美:「うぇ〜ん、痛い。これじゃ、もう家に帰れない〜。うぇ〜ん」
愛美と幸美は悠斗にしがみ付いて泣きじゃくる。
悠斗:「帰りは俺が家まで送ってあげるよ。これから、どうする?」
洋美:「ゆうにい、それじゃ今から私達の家に来る?」
悠斗:「喜んで、よさせてもらうよ」
愛美:「ゆうお兄ちゃん、それじゃ、今から一緒に」
幸美:「ゆうお兄ちゃん、一緒に帰ろう」
四人はモノレールに乗るべく改札口を通る。その様子をやや離れた所で友美は二人の同級生と共に呆然と眺めていた。
同級生甲:「友美、怒る気持ちは最もだけど、さっきの喧嘩腰はマズイよ。ここは公共の場なんだからさ」
同級生乙:「妹ちゃん達には異性交際、禁止しているの?」
友美:「当然よ、禁止しているのよ」
同級生甲:「それで怒ったんだ」
同級生乙:「なるほど。気持ちは最もだけど、どうしてなの?」
友美:「妹達に結婚、追い越されたくないから」
同級生甲:「そおなの?」
同級生乙:「それだったら妹ちゃんから、彼氏没収して友美の彼氏にしてしまえば良いじゃん」
友美:「彼氏没収?」
同級生甲:「異性交際禁止に違反したから、と言う名目で彼氏を奪って自身のモノにするのよ。だって妹ちゃん達、『この人の妹になりたい』と言ってたじゃん」
友美:「そっ、それ手かも・・・」
二人の同級生の進言に友美は目を丸めていた。
一方、洋美、愛美、幸美は悠斗とモノレールの車内で会話を続けていた。
悠斗:「大丈夫?まだ痛い?」
愛美:「ゆうお兄ちゃんと話してたら痛みが無くなりそう」
幸美:「幸美も同感」
洋美:「慣れているとはいえ痛いわよ」
悠斗:「そうなんだ、俺だって愛美と幸美を妹にもらいたい」
洋美:「私も妹にしてよ。愛美、幸美だけでなく」
悠斗:「それだったら俺、友美と・・・」
愛美:「友美姉ちゃんと結婚は考えなくても良いけど、愛美達を妹にしてほしい」
幸美:「友美姉ちゃんと結婚するのが嫌なら別に構わないけど幸美達を妹にしてほしい」
悠斗:「それだったら洋美達の家で話さしてくれない?」
こうして四人はモノレールを降りたあと葵奈家の自宅へと歩き出す。もう少しで自宅に到着するところで四人は葵奈姉妹の長姉、葵奈歩美とその長女、依沙美にかち合う。
歩美:「洋美、愛美、幸美、今帰りなの?」
洋美:「歩美姉ちゃん、私達、今日は私達の写真集を愛用している人と一緒なのよ」
歩美:「そおなの?側にいる男性なの?」
洋美:「そおよ、紹介するわ。三矢悠斗さんよ。私は『ゆうにい』と呼ばせてもらっているの」
愛美:「愛美は『ゆうお兄ちゃん』と呼ばせてもらっているのよ」
幸美:「幸美も『ゆうお兄ちゃん』と呼んでいるのよ」
悠斗:「三矢悠斗です。初めまして、お姉さんでいらっしゃいますか?」
歩美:「ええ、長姉の歩美です。よろしく。それと私の長女、依沙美です」
依沙美:「あれ、友美おばちゃんは?」
洋美:「ゆうにい、私達の姪、依沙美よ。友美姉ちゃんは同級生と会っているのよ。これから、ゆうにい、と一緒に家に帰ろうと思っていたのよ」
歩美:「私も依沙美を連れてね」
依沙美:「ママと一緒にばあばあに会いに行くの」
こうして六人は葵奈家の自宅へとたどり着く。葵奈姉妹の母、葵奈育美が出迎える。
歩美:「ただいま」
洋美:「ただいま」
愛美と幸美:「ただいま」
育美:「おかえり、あら、そちらの方は?」
洋美:「紹介するわ。私達の写真集を買って愛用して下さっている方、お客さん、三矢悠斗さんよ。」
悠斗:「初めまして、お母様ですか?こんにちは。いきなりの訪問で申し訳ございません。私はこれにて」
愛美:「ゆうお兄ちゃん、せっかくだから休んでいったら」
洋美:「友美姉ちゃんの理解は愚か誤解も解けてないからね休んでいき」
幸美:「友美姉ちゃんに悠斗さんの幼稚園時代の事、解ってもらいたいものがあるから、休んでいってよ」
悠斗:「解ったよ、御言葉に甘えて」
育美:「どうぞ、ゆっくりして下さいね」
葵奈家のキッチンで悠斗は洋美、愛美、幸美、歩美、依沙美、育美と共に悠斗の卒園アルバム、卒業アルバムを出す。同時に葵奈姉妹の写真集も二冊取り出した。写真集は長年愛用しているためか少し痛みがある。
幸美:「あっ、ゆうお兄ちゃん、幸美達の写真集も」
愛美:「どれどれ、あっ本当だ。愛美達の写真集だ」
洋美:「いつ撮影されたものかな?一冊は去年かな?もう一冊は一昨年のものだわ」
歩美:「悠斗さんの卒園、卒業アルバムね」
依沙美:「どんなのが、あるの?」
洋美:「幼稚園の卒園アルバムが面白いのよ。友美姉ちゃんに見せたら、どんな反応が帰って来るのかが気になるわ。メールで知らせてみよう」
洋美は友美のスマホにメールで知らせる。葵奈姉妹(友美を除く)と育美、悠斗はしばらくアルバムで談笑し続けた。
そして友美は同級生二人と共に帰宅の徒についていた。自宅の最寄りのモノレール駅で下車して自宅へと歩き出す。そこへ友美のスマホに洋美からのメールが入る。友美はメールを見て驚きの表情をする。その仕草に同級生は尋ねる。
同級生甲:「どうしたの?」
同級生乙:「何かあったの?」
友美:「実は妹達が会っていた男性が私の家に来ているとのことなのよ」
同級生甲:「えっ?!」
友美:「男性の持っている幼稚園の卒園アルバムに面白い写真が載っている事なんだけど」
同級生乙:「面白い写真と言われても私にはピンとは来ないわ」
友美:「だよね、男性は私と妹達の写真集を買って愛用している人みたいだけど。とにかく家へ急ぎたいわ。どうする?」
同級生甲:「そおね、とにかく友美を家までおくるわ」
友美と二人の同級生は葵奈家の自宅へと歩きたどり着いた。玄関の扉を開けると床には妹達の靴に混じって見慣れぬ男性の靴もあるのだった。
(誰の靴かしら!?)
友美は不思議に思いながらも
「ただいま」
と声をあげる。その時、キッチンから母、育美が顔を出す。
「友美、お帰り。今、お客さんが来ているのよ」
育美の声に友美は
「洋美からのメールで知ったから帰って来たのよ」
と答える。友美の二人の同級生は友美に訪ねる。
同級生甲:「私達、どうしようかな?」
同級生乙:「邪魔だったら今日は、これにて失礼するわ」
友美:「そう?ごめんね、また連絡入れるわ」
同級生甲:「それじゃ、バイバイ友美」
同級生乙:「またね」
二人の同級生は帰って行った。二人の姿が見えなくなるのを待って友美はキッチンに入る。中には育美、歩美、洋美、愛美、幸美、依沙美がテーブルでアルバムを見ている。悠斗の姿もあるのだった。
友美:「何見ているの?」
洋美:「実は菊池先生の幼稚園時代の写真を見ているの」
友美:「えっ?菊池先生の幼稚園時代?」
悠斗:「俺の幼稚園の卒園アルバムに載っている写真です。あっ、お邪魔しています」
洋美:「友美姉ちゃん、この人、私達の写真集、買って愛用して下さった方なのよ」
友美:「えっ?そおなの!?」
洋美:「そおよ!」
愛美:「愛美達の写真集を愛用している、お客さんよ!」
幸美:「幸美達の写真集、グレードアップしていかないとね」
歩美:「三波春夫じゃないけど、お客様は神様だからね」
育美:「グラドル撮影に関して助言して下さるんだから友美もちゃんと行儀よく挨拶しなさい!」
ふてぶてしい態度の友美だったが母親の育美と姉の歩美にたしなめられ渋々挨拶をする。
友美:「ところで菊池先生の幼稚園時代の写真ってどれなの?」
洋美:「これよ」
友美は担任の教師、菊池由利の写真に見入った。
友美:「何となく菊池先生の面影、感じるわ。私のスマホに撮影して入れておくわ」
友美は自身のスマホで菊池の幼稚園時代の写真を撮影した。
「よし、撮影したわ」
友美は悠斗に向き直り尋ねる。
友美:「妹の洋美、愛美、幸美とは、どういう、経緯で知り合ったのです?」
悠斗:「今年の正月の初詣で願い事の絵馬を見てアクセスしてくれたのが愛美ちゃんと幸美ちゃんだったので」
洋美:「最初、愛美と幸美が会ってバイキングで御馳走になっていたのよ。それで私が問い詰めて三人で、ゆうにいと会っていたの」
友美:「そおだったの、私に一言、言って欲しいわ」
葵奈姉妹達は悠斗のアルバムを見て過ごしたりして過ごした。やがて夕方になると悠斗は別れを告げて帰宅しようとする。
悠斗:「そろそろ遅くなりますので今宵は失礼したいと思います」
愛美:「ゆうお兄ちゃん、帰りわかる?」
悠斗:「大丈夫だよ」
幸美:「気をつけてね」
歩美:「悠斗さん、気をつけてね」
依沙美:「悠斗おじちゃん、気をつけて帰ってね」
洋美:「悠にい、今日はご馳走さま」
愛美と幸美:「悠お兄ちゃんご馳走さまでした」
悠斗:「お邪魔しました。失礼いたします」
悠斗は葵奈姉妹と家族に別れを告げて帰宅の徒についた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時間はややさかのぼる(5月3日土曜日の昼前ごろに)。
友美と友美のクラスメイト井之上真美奈の担任、菊池は牟田内悠真と洋美の担任、大水咲の三人で悠真の自宅で、お茶を飲みながら談笑をしていた。悠真の母が紅茶を出す。
悠真:「ゴールデンウィーク明けから私、モノレールで通学するわ」
菊池:「歩くのは大丈夫?」
悠真:「ゴールデンウィークの間に歩けるように頑張ってみるわ」
大水:「無理の無いようにね」
悠真:「うん、クラスメートの愛美、幸美、佳那子には手助けしてもらっているわ」
菊池:「良かったわ。その調子で体育の授業も出られるようになって欲しいものだわ」
悠真:「監禁生活の最中と最近、夢の中に私の姉と名乗る人物が出てくる事が多いわ。どうしてかしら?」
大水:「悠真の姉と名乗る人物?」
悠真:「そうなのよ、その人物は私に『悠真、悠真、私はあなたの姉の悠華!悠華よ』と話し掛けるのよ」
菊池:「えっ!?」
大水:「もしかして悠真にお姉ちゃんがいるの?」
悠真の母:「本当は話したくはないのだけど、いたのよ・・・悠真が産まれる前に交通事故で・・・・」
悠真:「私に、おっ、お姉ちゃんが、いたなんて・・・・」
悠真の母:「私、悠真は悠華の生まれ変わりじゃないかと思う事がしばしばなのよ」
悠真の目から涙があるれ出ていた。菊池は悠真を慰める。
菊池:「悠真、辛いけど元気出して」
しばらくして話は水泳の授業の話題へとシフトしていった。
悠真:「水泳の授業は水中ウォーキングだったら良いのになあ」
菊池:「それじゃ放課後、水泳部競泳部門と一緒に補習と行こうよ、悠真」
悠真:「うん、水泳部の人達、仲よくしてくれると良いのになあ」
大水:「大丈夫よ、葵奈姉妹がいるから」
菊池:「彼女達なら大丈夫よ」
その時、牟田内家のインターホンが鳴り響き悠真の母が対応した。やがて母が悠真に告げる。
悠真の母:「悠真、12年前の中等部一年の時の同級生が来ているわ。どうする?」
悠真:「名前は?誰かしら?」
悠真の母:「名前は山地真紀、と言う人だけど、悠真、覚えている?」
悠真:「覚えてないわ。交流は、ほとんど無かったから」
菊池:「山地真紀、ああ覚えている。ヤマキよね」
大水:「私も覚えている。確か首女大卒業した後、自動車販売会社に就職したみたいだけと、何が目的かしら?」
悠真の母:「どうする?悠真に会いたいと言っているけど」
悠真:「そおね、由利と咲が会いたいのなら会ってもいいけど」
悠真の母:「わかった、通すわ」
ほどなく山地真紀が入ってきた。
菊池:「あらヤマキ、久しぶりじゃん」
大水:「どうしたの?今日は」
山地:「あら、由利、咲、来ていたの!?」
菊池:「そおよ」
大水:「悠真の世話の為にね」
山地:「そおなんだ。悠真に御願いがあって来たのよ」
たちまち菊池の目は閻魔の目付きと変貌した。
菊池:「悠真に御願い?もしかして、クルマを買って欲しいと言うこと?私の目はふしあなじゃないわよ!」
大水:「由利の目は全てお見通しよ、ヤマキ」
山地:「バレちゃったか、ねぇ悠真、車買ってよ」
悠真:「私は免許と収入無いから勘弁してよ」
山地:「そんな事言わないでよ、一生のお願いだから」
菊池:「ヤマキ、悠真は中等部生活を再開させたばっかしなのよ」
山地:「再開って昼間は働きながら夜間中学に通っているんでしょ」
大水:「違うわよ!現役の中学生と一緒に首女中で学校生活を送って勉強しているのよ。働いてないわよ!」
山地:「え〜っ!?うっそぉ!?マジで!?それじゃ24歳の中等部一年じゃん」
菊池:「12年及んだ監禁生活から解放され復学したのよ」
山地:「それはニュースで知ったわ。犯人が逮捕された事も知っているから」
菊池:「罪名は未成年者誘拐、監禁致慯容疑だからね」
山地:「それなら犯人から賠償金、むしり取ってしまえば良いじゃん。裁判起こして1000万から2000万賠償請求すれば良いじゃん。それで放課後、自動車教習所に通って免許取れば・・・・」
大水:「ちょっとヤマキ、出任せ言わないでよ!」
菊池:「悠真は放課後、プールで水中ウォーキングで特訓させるつもりよ!」
悠真の母:「それなら父さんと相談しないとね」
菊池:「冗談じゃないわ!1000万もの賠償請求の裁判となると弁護士を入れないと起こせないわ。弁護士費用も訴訟費用もバカにならないし」
大水:「起こす起こさないは別として相談する価値はありそうよ」
悠真:「どっちにしろ買う気は愚か免許も取る気にはなれない。買っても支払いは出来ない」
山地:「あ〜あっ、にべもないわ。営業成績がかかっているのに」
菊池:「クルマの事なら他あたってよ」
山地:「他と言っても・・・」
大水:「個人じゃなくて法人を中心に当たればいいというのよ」
山地:「法人?」
菊池:「団体が主よ。医療法人、福祉法人、宗教法人が狙い目じゃない?」
大水:「私が通勤で乗っている軽自動車は親戚からの御下がり車なの。中古で購入したから最初は廃車のつもりだったらしいけどね、下取り価値は無いから」
山地:「ねぇ咲、新しいのに乗り換える気は無い?」
大水:「なれない。家族が反対しそうだから。下取り価値が無いとなれば尚更無理よ」
山地はしばらく菊池、大水、悠真、悠真の母と会話をしたが、長くは続けずに帰宅していった。山地が帰って行った後、悠真は口を開く。
悠真:「免許取ってクルマまで買うとしたら、どれぐらいの費用かしらね?」
大水:「免許取得に18万から25万、買うクルマがヌキホン(税抜き車両本体価格)で500万だとしたら、諸経費等を合わせたら600万強かしら。自賠責保険と任意保険の加入も必須だからね」
悠真:「そんなに!?百年ローンだったら、まだ考えられるかも」
菊池:「ヤマキが賠償金と言っていたのもうなずけそう。とりあえず当分は免許の事は無しで良いじゃん」
悠真:「まずは歩ける事を完璧にする事よね。ところで遊園地はどうする?行くとしたら明日の日曜日か明後日の月曜日、祝日しかないわ」
菊池:「どっちにする?」
悠真:「じゃあ明日はどうかしら?」
菊池:「私はOKよ」
大水:「私もOKよ。でもクルマはNGで良い?渋滞に会いそうだから」
悠真:「電車で行こう。電車及びモノレール通学の練習のつもりで」
三人は明日の日曜日、遊園地に行く約束を決めた。
(間違っても、ドタキャン、すっぽかしは駄目だわ)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一方、葵奈四姉妹も三矢悠斗との事で話題になっていた。姉妹の部屋で友美は洋美、愛美、幸美に改めて問いただそうとする。
友美:「洋美、愛美、幸美、お前らが会っていた男性の事、教えてよ」
洋美:「男性って三矢悠斗さん『ゆうにい』の事よね。愛美と幸美が最初なのよ」
友美:「愛美と幸美が最初なのか!?」
洋美:「そおなのよ、明日、一緒に遊園地に行く約束したのよ」
友美:「そんなに付き合いたいのか!?だったら私も連れていけ!」
洋美:「わかったよ。ゆうにいにメールで知らせておくわ」
愛美:「友美姉ちゃんも行くんだ」
幸美:「友美姉ちゃんと、ゆうお兄ちゃん、相性はどうなのか気になる」
友美:「洋美、愛美、幸美、その三矢悠斗さんとは今まで、どういう関わりがあったのか話してよ」
洋美:「菊池先生と大水先生の同級生で誘拐事件で12年間も監禁生活を強いられていた牟田内悠真さんの事、知ってるよね?」
友美:「ああ、知っているよ、愛美、幸美、佳那子のクラスで勉強している人ね」
洋美:「その悠真さんを救出したのは私と愛美、幸美、ゆうにいだったのよ」
友美:「そぉだったの?」
洋美は悠真を救出した時の様子を赤裸々に話した。
友美:「そぉなのか、洋美が救出現場で指揮を取ったのか、と言う事は洋美が一番兵で指揮官、愛美が二番兵、幸美が三番兵、三矢悠斗さんが四番兵といった所だったんだ。詳しいことは明日、悠斗さんからも聞かせてもらおうかしら?」
洋美:「あの日の前の晩、友美姉ちゃんは佳那子と一緒に井之上先輩の家に一泊二日で泊まっていたじゃん」
友美:「そおだったわ」
愛美:「愛美達が救出劇に遭遇したのはバイキングで御馳走になった後だったわ」
幸美:「あの日はトータルで美味しい1日だったよ」
こうして、葵奈四姉妹は悠斗との約束を決め就寝する。そして就寝中、愛美と幸美は目を覚ましてしまう。
愛美:「幸美、トイレ行く?」
幸美:「うん、行く」
愛美:「一緒にトイレ行こう」
愛美と幸美はトイレで用便を済ませた。愛美が幸美に声をかける。
愛美:「幸美、恋愛は異性恋愛と女同士との同性恋愛、どっちが好き?」
幸美:「幸美は同性恋愛なら愛美お姉ちゃんとがいいと思うの、異性恋愛なら、ゆうお兄ちゃんがいいのよ。」
愛美:「愛美も同じよ、異性恋愛なら、ゆうお兄ちゃんが理想なのよ」
幸美:「愛美お姉ちゃんも、ゆうお兄ちゃんを狙っているとしたら、幸美、愛美お姉ちゃんと喧嘩になりそうな気がしそう」
愛美:「幸美、ゆうお兄ちゃんを狙っているの?」
幸美:「幸美はゆうお兄ちゃんの妹になるつもりよ。間違っても彼女になるきは毛頭ないの」
愛美:「愛美も同じよ。洋美姉ちゃんも、ゆうお兄ちゃんの妹になりたいと言ってるから、友美姉ちゃんには嫌でも絶対に、ゆうお兄ちゃんと結婚してもらわないと駄目よね」
幸美:「幸美は愛美お姉ちゃんとの同性恋愛が一番かもね」
愛美:「愛美だって最愛の妹、幸美との同性恋愛が一番だと思うのよ。女同士の性交のやり方、教えてくれる人いないかな、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、真美奈姉ちゃん、美幸姉ちゃん、香織姉ちゃん、高等部のお姉ちゃんに聞いてみようかな?」
幸美:「間違っても菊池先生や大水先生には聞けないね」
そこへ、友美と洋美が部屋から出て来た。
友美:「愛美、幸美、相変わらず話し合っているな、何を話していた?」
愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、女同士の性交ってどうやるの?」
幸美:「教えてくれたら何回でも平手打ちされてもいいから」
友美:「そおなの?その事は私、先輩から教わったよ。でも遅いし明日は遊園地だろ。早く寝ろ」
洋美:「寝坊することないように」
友美と洋美に促され愛美と幸美は部屋のベッドで再び就寝する。
そして、翌朝の五月四日の日曜日、四姉妹は目を覚まし朝食を取り遊園地に行く為の準備を整える。家を出てモノレールの駅へと歩きモノレールに乗り悠斗との待ち合わせ場所へと向かう。待ち合わせの駅に到着すると四姉妹は改札を出て悠斗を待つ。友美が愛美と幸美、洋美に問いかける。
友美:「悠斗さんと会っていた時は、ここで待ち合わせしていたの?」
愛美:「そおよ。最初は幸美と二人で、ゆうお兄ちゃんと会ったの」
幸美:「二回目から洋美姉ちゃんが加わったんだから」
洋美:「その時に悠真さんの救出劇に遭遇したのよ」
四人が話し合っていると悠斗が現れた。
悠斗:「洋美、愛美、幸美、おはよう。あれ?今日は、さらに一人多いね」
洋美:「ゆうにい、ごめんなさい。今日は友美姉ちゃんも来たのよ、私も連れていけ、と」
悠斗:「女の子だったら少ないより多いほうが良いじゃん」
友美:「悠斗さんよね?私の妹、勝手に連れ出すのは勘弁してよ。私の断り無しに」
洋美:「ちょっと、友美姉ちゃん、喧嘩腰はやめてよ」
愛美:「そおよ、友美姉ちゃん、怒るとあれだから」
幸美:「せっかくの楽しいムード壊さないでよ」
友美:「わかったわよ」
悠斗:「それじゃあ遊園地行きの直通バスに乗ろう」
悠斗と葵奈四姉妹の五人は遊園地行きのバス停へと歩き、列の最後尾に陣取る。やがてバスが到着し五人は乗車する。遊園地の近くのバス停に到着すると五人は他の乗客と共に降車し遊園地の入場券売り場で入場券を購入し入場ゲートの列に加わり開園を待つ。ゴールデンウィークの為か人はかなり多い。五人は各々の知人がいないか辺りを見回す。やがて開園になり五人は入場する。入場してからも五人は辺りを見回していたが洋美は口を開く。
洋美:「どれから廻ってみる?」
愛美:「愛美はジェットコースターに乗りたい」
幸美:「幸美も愛美お姉ちゃんと一緒にジェットコースターに乗る」
悠斗:「愛美と幸美は、いつも二人一緒だなぁ。息がぴったり」
友美:「ふたりはシンクロナイズドダイビングでペアを組んでいるのよ」
悠斗:「それって、二人一組の飛込み競技なんだ」
友美:「私も洋美もシンクロナイズドダイビングで各々のペアを組んでいるけど息のぴったりでは愛美と幸美のペアには、及ばないのがあるのよ」
悠斗:「そおなんだ」
洋美:「私は基本的にはソロで飛び込んでいるけどね。ジェットコースターの方へ歩こうよ」
五人はジェットコースターのあるエリアへと移動を始める。移動すると愛美と幸美はジェットコースターに搭乗する為の列に並ぶ。愛美が悠斗に問いかける。
愛美:「ゆうお兄ちゃんは乗らないの?」
悠斗:「俺はパスするよ。苦手だから」
友美:「愛美と幸美は高い所は苦手じゃないから」
洋美:「私はゆうにい、友美姉ちゃんと一緒に見ている事にするわ」
愛美と幸美はジェットコースターに乗りハイスピードを満喫し、友美と洋美は悠斗との会話を楽しんだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
菊池と大水、悠真も葵奈姉妹と悠斗が訪れている遊園地に来ていた。
悠真:「久しぶりの遊園地、新鮮な感じだわ。お姉ちゃんと一緒に来たかったわ」
菊池:「一緒に行くのが大幅に遅れたから、私も何か新鮮な気がするわ」
大水:「十二年の間に、どれだけ変わったのかな?」
菊池:「どこから廻る?」
悠真:「観覧車はどうかしら」
菊池:「いいと思うけど一通り見て回ってからでも良いじゃない?ゴールデンウィーク明けからの登校に備える為の歩く練習を兼ねて」
悠真:「そおしよう」
三人は歩き始める。ほどなくジェットコースターのエリアに差し掛かった時、ジェットコースターの搭乗待ちをしている葵奈姉妹の愛美と幸美にかち合った。
愛美:「あっ、菊池先生、大水先生、悠真さん!」
幸美:「来ていたのですか?幸美達は来て間もないのですよ」
菊池:「あら愛美ちゃん、幸美ちゃん、私達も今来たばかりよ。偶然ね、あなた達に会うなんて」
大水:「今日は悠真の歩行訓練を兼ねて来たのよ」
幸美:「悠真さん、調子はどうですか?」
悠真:「ぼちぼちだわ。でも走るのはまだまだかも」
愛美:「頑張って走れるようになってね」
幸美:「飛び込んで泳げるようになったら良いのにね」
菊池:「ゴールデンウィーク明けから毎日、悠真を放課後、水泳の補習に参加させるつもりよ」
大水:「今日は誰と来ているの?」
愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美達の写真集を愛用してくれるお客さんの五人で来ているんです」
大水:「そおなんだ」
やがて愛美と幸美はジェットコースターに乗り楽しむ。その光景を悠真は菊池、大水と共に眺めた。
(二人はスピードとスリルを楽しんでいる。私の楽しみは何であるべきなのか、二人と同じ学級であるから・・・)
悠真が思案に暮れているうちに愛美と幸美がジェットコースターからの搭乗を終え他の乗客と共に降りてきた。菊池、大水、悠真のもとに愛美と幸美がよると、友美、洋美、悠斗も駆け寄ってきた。
愛美:「楽しかった。悠真さんはジェットコースター好きですか?」
悠真:「好きな方じゃないわ」
幸美:「何が好きですか?」
悠真:「強いていうなら観覧車かしら」
友美:「菊池先生、大水先生、来ていたんですね」
菊池:「そおよ、悠真を連れてね」
洋美:「私達これから園内を歩いてまわるつもりなんです。先生達はこれから?」
大水:「私達も悠真と一緒に歩いてまわるつもりよ」
悠斗:「牟田内さん、ご無沙汰です。最近どうですか?」
悠真:「ええ、あなたは私の救出に携わった方ですね」
悠斗:「そうです。三矢です。あれからどうですか?お調子は」
悠真:「ぼちぼちです。色々見てまわるつもりですけどキャラクターショー用のイベントステージで参加可能のイベントショーがあるので見てみたいと思うので一緒に見てみますか?」
悠斗:「そうですね、葵奈姉妹にぴったりの参加イベントだったら面白いかも知れませんね」
愛美:「どんなイベントかな?」
幸美:「参加したら何が出来るのか気になる。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、見てみようよ」
こうして葵奈四姉妹、悠斗、菊池、大水、悠真の八人はイベントステージと歩く。イベントステージの片隅でイベント参加者を募っていた。早速、愛美と幸美が申し込みへと走る。参加を申し込んでいるのは幼稚園児や未就学児とその保護者、小学校低学年の友達同士が多い。友美、洋美、悠斗、菊池、大水、悠真の六人は観客席で場所を確保する。イベントを観ようとする来園客はさほど多くはないので六人は観客席の前の方で確保出来た。開始時間が近づくにつれ客の数が多くなった。やがて女性司会者の音頭でイベント開始となり愛美と幸美、他の参加者達はステージの片隅に集合する。イベントは小さい子供に人気のキャラクターと力試しで任意の種目で試す事が出来るのであった。多くの参加者は腕相撲や縄跳び、軽いダンスであった。そして、愛美と幸美の番になり女性司会者がマイクで
「はーい、次は双子のお姉ちゃんの番です。挑戦するのは何ですか?」
愛美と幸美はお互いに頷き会いステージの真ん中で、いきなりバク宙を披露した。たちまち会場内はどよめきと歓声に溢れる。オマケに連続抱え型前宙も披露した。会場内の観客の中にはスマホやデジカメで二人を撮影する者もいる。女性司会者は驚きの表情で愛美と幸美に質問する。
「はい!お姉ちゃん達、バク宙すごいですね、体操競技をしているのですか?それとも何かスポーツしているのですか?」
女性司会者の質問に愛美と幸美は
「部活で水泳です。体操の床演技は小さい時にやってました」
と口を揃えて答える。女性司会者は更に質問する。
「得意種目は何ですか?」
「10メートル高飛び込みです。目標は109Cを完璧です」
「109Cとは何ですか?」
「前飛込み抱え型四回転半です」
愛美と幸美の返答に女性司会者は驚くばかりであった。出番が終わる時に愛美と幸美はアンコールでバク宙と連続前宙を披露し会場は歓声に包まれた。イベントが終了すると愛美と幸美は参加賞に遊園地の乗り物乗車券を受け取り友美、洋美、悠斗、菊池、大水、悠真の元へ戻ろうとする。しかし愛美と幸美のバク宙を見ていた小さい子供達から、
「あっ、バク宙のお姉ちゃん、凄いなー」
「バク宙の双子お姉ちゃん、カッコいい」
と声がかかる。中には一緒に記念撮影を申し出る親子連れも続出してイベントステージの客席は大変な騒ぎになった。愛美と幸美は嫌な顔はせずに快く答えていく。子供の中には
「ねぇ、どうやったら、出来るようになるの?」
と質問するのが多い。愛美と幸美は
「器械体操を練習したらいいから体操教室に通ってみてはどう?」
と答えるしかない。その光景を友美、洋美、悠斗、菊池、大水、悠真は見守るのみだった。悠斗は
(葵奈姉妹の看板キャラは愛美と幸美が色合いが強い)
と思い、悠真は
(愛美と幸美は私とは対称的、同じ学級であるとはいえ違いは雲泥の差かしら?悠華お姉ちゃんが見たらどう思うかしら?)
と思案に暮れる。記念撮影を申し出た親子連れ以外にも数人の他の中学校の生徒らしき者が二人に駆け寄り声をかける。
他校の中学生A:「ねぇねぇ、何処の中学?」
愛美と幸美:「首女中なのよ」
他校の中学生B:「首女中って首都女子大学付属女子中学校の事なんだ。どんな学校なの?」
愛美:「指定された制服の中から好きな型、色、組み合わせを選択して着用できるのよ」
幸美:「ブレザー、セーラー服、セーラーブレザーが有って色んな色があるのよ。体操服、水着も同じよ。それと体育の授業に水泳の飛込み競技があるのよ」
他校の中学生C:「そおなんだ。ところで彼氏いる?」
愛美と幸美:「ごめんなさい、ノーコメントです」
他校の中学生D:「誰と来ているの?」
愛美と幸美:「お姉ちゃん、友達、学校の先生と一緒なの」
他校の中学生E:「制服は何を着ているの?」
愛美:「青のセーラーブレザーに青のチェック柄のスカートよ」
幸美:「体操服は紺ブルなのよ」
他校の中学生E:「えっ!紺ブルって何それ?」
幸美:「紺色のブルマの事だよ。他にも青ブル、赤ブル、ミドブルもあるの。短パン、ハーフジャージ、スパッツもあって色んな色があるのよ」
他校の中学生一同:「へぇー!そおなんだ・・・名前はなあに?」
愛美:「愛美よ、四女でお姉ちゃんなの」
幸美:「幸美よ、五女で妹なのよ」
他校の中学生A:「ねぇ愛美、幸美、メッセージのやり取りは駄目?」
愛美:「いいよ、何だったら首女中と首女高を覗いてね」
他校の中学生達とのやりとりにさすがの愛美と幸美も疲れと空腹を禁じ得なくなった。それを察した友美は愛美と幸美に声をかける。
友美:「愛美、幸美、お昼にしよう!」
愛美:「そうしようよ、友美姉ちゃん、愛美腹減った」
幸美:「幸美も腹減った。やっぱバク宙は腹が減る。みんなごめんね、お姉ちゃん達が呼んでいるから」
他校の中学生一同:「愛美、幸美、バイバイ。またメッセージ送らせてもらうわ」
愛美と幸美は中学生達と別れ友美達の元へ急ぐ。八人は昼食の為にフードコートのエリアへと歩き出す。歩き出す愛美と幸美にも声をかける小さい子供がいるのだった。
「あっ、ステージでバク宙してた双子のお姉ちゃんだ!」
フードコートで八人は昼食を取り談笑を楽しむ。しかしフードコートでも隣のテーブル席に着いた親子連れの小さい子供が愛美と幸美を見て、
「バク宙の双子お姉ちゃんだー!」
とはしゃぎだすのだった。すかさず子供の親がなだめたので八人は落ち着いて昼食を取る事が出来た。菊池と大水、友美、洋美、悠斗は苦笑いの表情で、悠真は複雑な心境の表情である。
「腹も満たせた事だから園内を歩きましょうよ」
悠真が促し八人はフードコートを出て園内を歩き出す。ゲームコーナーに差し掛かると愛美と幸美は、はしゃぎ出した。
「幸美、ちょっとやっていかない?愛美やりたいのがあるの」
「幸美もやってみたいのがあるの」
愛美と幸美がやりたいと思っていたのはカーレースのゲームだった。カーレースのゲームをプレイしたのは愛美、幸美、悠斗、大水だった。菊池が悠真に声をかける。
菊池:「悠真はやらないのね」
悠真:「私、車の運転なんて解らないし、お姉ちゃんが交通事故で死んだから」
菊池:「ヤマキには、悠真の心境、解らないかもね。ところで悠真、段々気持ちが晴れてきたみたいね。学校生活を再開した時は口数少なかったけど」
悠真:「愛美と幸美からパワーをもらったからよ。ゴールデンウィーク明けから明るさに自信が沸きそうだわ」
菊池:「その意気込みよ、悠真。水泳の補習、頑張ろうよ」
悠真:「うん、頑張ってみるわ、愛美、幸美、佳那子達の飛込みも拝みたいから」
愛美、幸美、悠斗、大水がゲームを終えると八人は再び歩き出す。しばらく歩くと今はまだ閉鎖中のプールエリアに差し掛かった。
悠斗:「プールエリアか、夏になったら、賑わうだろうね」
友美:「賑わうわ、でも愛美と幸美は退屈するわ。飛込みプールが無いし飛込み禁止だから」
洋美:「私だって飛込みプールが無い所は嫌」
菊池:「それだったら学校のプールに限るね」
愛美:「そおよ、学校で飛込みプールあるのは首女中と首女高だけ」
幸美:「そおだね飛込みの練習で菊池先生の平手打ちの入った厳しい特訓が入れば格別だよね」
菊池:「ちょっと、やだあ」
大水:「あはは、由利ったら生徒に好かれているじゃない」
悠真:「私だったら由利みたいに好かれそうにないかも。まだ暗い雰囲気しかないし」
洋美:「菊池先生は憎めないタイプだから」
菊池:「もぉう、やだぁ〜」
友美:「夏休みも毎日登校しないとね」
悠斗:「冬場はスケート場になるだろうね」
愛美:「愛美、スケートは好き」
幸美:「幸美もスケートは好きだけど、強いて言うのなら飛込み競技の方が好き」
悠真:「歩くのも良いけど観覧車に乗ってみたいわ」
悠斗:「牟田内さん、観覧車が好きなんだ」
愛美:「良いじゃない、愛美、ステージイベントで乗り物乗車券をゲットしたたから悠真さんの為に使おうよ」
幸美:「幸美も同感」
八人は観覧車のあるエリアへと歩く。観覧車のゴンドラは一つに付き四人乗れるが乗り降りをスムーズにするため三つに分乗する事にした。最初に菊池、大水、悠真が乗り、次に友美、洋美、悠斗が乗り、最後に愛美と幸美が乗った。菊池、大水と乗った悠真は眼下に広がる遊園地の景色を眺めた。入場ゲート、ジェットコースター、イベントステージ等がジオラマのように小さくなって見える。
(結構歩いたんだ、歩くのに自信が着いたわ。次は走る事か泳ぐ事かしら?)
悠真が物思いにふけっていると菊池と大水は会話をする。
大水:「この遊園地、私達が首女中に入学する少し前に出来てオープンしたんだね」
菊池:「そうだったよね」
そして、友美、洋美、悠斗のゴンドラでも会話が展開している。
友美:「さっきのゲームコーナーで見ていたけど悠斗さんってカーレースのゲーム得意なんだ」
洋美:「ゆうにい、免許持っているのよ」
悠斗:「そんなに上手くはないよ」
友美:「車とかは乗るの?」
悠斗:「めったに乗らないよ」
洋美:「悠真さんの救出劇に遭遇した日にレンタカーを借りてもらったのよ」
友美:「それじゃレンタカーでドライブ?」
洋美:「そうよ、愛美、幸美と一緒にケーキとスイーツのバイキングでご馳走になったのよ。その後、写真集の撮影現場だった廃校した中学校を訪れ、それから移動して救出劇に遭遇したのよ」
また愛美と幸美のゴンドラでも会話が展開されていた。
愛美:「ねぇ幸美、この遊園地のプール、どう思う?愛美はイマイチだけど」
幸美:「幸美は面白いとは思わない。飛込みプールは無いし全てのプールは飛込み禁止だから。首女中のプールが良い」
愛美:「そうだよね、菊池先生の厳しい特訓がついたら、なお格別だよね」
幸美:「そうそう、菊池先生の平手打ち、飛び込みの入水時の衝撃よりも気持ちいいからね」
愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃんのよりも気持ちいいよね」
幸美:「でも、よく考えてみれば幸美、愛美お姉ちゃんのは一回もないわ」
二人が話し合っているとゴンドラはスタート地点へ戻ってきた。外を見るとゴンドラを降りた菊池、大水、悠真、友美、洋美、悠斗の姿が見える。観覧車のゴンドラから愛美と幸美は降り、八人は遊園地内を散策するように歩く。悠真の歩行能力は葵奈姉妹達と遜色は無い程に回復していた。
悠真:「コーヒーカップの乗り物に乗ってみたい」
菊池:「悠真、表情に明るさが戻ってきたみたいね」
大水:「これで体育の授業も出られたら良いよね」
愛美:「愛美も乗ってみる」
幸美:「幸美も」
八人は分乗してコーヒーカップを楽しむ。色々と楽しんで八人は遊園地を出ようとゲートへと歩き始めた。ゲートに近づいた時、小さい子供が愛美と幸美を見て、
「あっ、バク宙の双子お姉ちゃんいた!」
と叫びながら駆け寄ってきた。その後を子供の母親が追いかけて来て子供を抱える。子供は幼稚園児かと思える女の子だった。髪型はツインテールのロングである。
母親:「これこれ、走ったら危ないでしょ」
子供:「だって、お姉ちゃん達が・・・」
愛美:「お嬢ちゃん、みたい?」
幸美:「バク宙をみたいの?」
子供:「みたい」
愛美と幸美は周囲の安全を確認しバク宙を女の子に披露する。
子供:「わーいっ!凄い!お姉ちゃん凄い!名前はなあに?」
愛美:「愛美よ」
幸美:「幸美よ」
母親:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、どちらが、お姉ちゃん、妹ですか?」
愛美:「私が四女でお姉ちゃんです」
幸美:「私が五女で妹です」
母親:「へぇー!五人姉妹なんですね。誰と来ているの?」
愛美:「二番目と三番目のお姉ちゃん、友達、学校の先生と来ています」
子供:「愛美お姉ちゃん、幸美お姉ちゃん、カッコいい!どうしたら出来るようになれるの?」
愛美:「体操教室に行ってみたらどう?」
幸美:「基礎から教えてくれると思うよ」
母親:「お姉ちゃん達みたいになりたいのなら体操教室に通いなさい」
子供:「うっ、うん・・・」
愛美:「お嬢ちゃん名前は何て言うの?」
子供:「まりな、なの」
幸美:「まりなちゃん、頑張って体操教室に通ってね」
まりな:「愛美お姉ちゃん、幸美お姉ちゃん、ありがとう」
まりなの母親:「愛美ちゃん、幸美ちゃん、ありがとう」
愛美と幸美は記念撮影にも応じる。それを見ていた他の親子連れにも記念撮影を求められる有り様が続いた。それらが終わる頃には太陽の光が白色から山吹色に変わっていた。ゲートを出てから八人はモノレール駅へのバスに乗車した。モノレールの駅にて解散となり葵奈姉妹はモノレール、菊池、大水、悠真、悠斗は電車で帰宅の徒につく。モノレールの車内では葵奈姉妹の会話が続いていた。
友美:「今日は愛美、幸美、大ハッスルだったね」
洋美:「あれだけバク宙と連続前宙で注目浴びたから目立つのは当然ね」
愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、腹減った」
幸美:「幸美も腹減った。モノレール降りたら何か食べたい」
友美:「そんな事言われたら私まで腹減るじゃん」
洋美:「そおね、降りたら食べよう」
愛美:「ケーキやスイーツのバイキングがあれば良いのになあ」
友美:「家に帰ったら晩御飯があるじゃない、我慢しなさい!」
洋美:「私達の最寄り駅周辺はそこそこ飲食店あるし、たまには良いと思うわ」
自宅の最寄り駅でモノレールを降りた葵奈四姉妹は商店街を歩き始める。アイスクリームショップに差し掛かると愛美と幸美は
「アイス食べたい」
と口をそろえる。四姉妹は店内でアイスを買いテーブル席に着き食べ始める。そこへ友美の小学校時代の同級生二人が入ってきて友美に声をかけてきた二人もアイスを買って食べようと四姉妹の向かい隣のテーブル席に座る。
同級生甲:「友美、アイス食べているんだ」
同級生乙:「妹ちゃん達と一緒に」
友美:「そおよ、今日は遊園地に行って来たのよ」
同級生甲:「そおなんだ」
同級生乙:「楽しかった?」
友美:「私より妹の愛美と幸美が楽しかったよ」
同級生甲:「四姉妹で行って来たの?」
友美:「私達の写真集を買って愛用しているお客さんと五人で。でも遊園地で学校の先生に会った」
同級生乙:「お客さんって友美の家に来てた男の人だよね」
友美:「そうよ、洋美、愛美、幸美ったら、この人の妹になりたい、と言って、うるさいのよ」
同級生甲:「そうと来たら彼氏没収といくしかないじゃん」
友美:「かっ彼氏没収って。ところで、まだ加代の詳細、まだ解らない?」
同級生甲:「まだよ、あれから全く進展なし」
同級生乙:「最近じゃ携帯、通じない」
友美:「そおなんだ、やっぱり」
同級生甲:「ところで噂を聞いたんだけど12年の間、誘拐された上、監禁されていた人、首女中の人じゃない?」
同級生乙:「ニュースで知ったのよ」
友美:「そおよ、その人、愛美と幸美の学級で勉強して学校生活を送っているわよ」
同級生甲:「24歳の中1と言う事になるのよね」
しばらく会話を続けたあと、葵奈姉妹と同級生二人は店を出て歩きだす。
葵奈姉妹の自宅に近づくと、同級生二人と別れる。帰宅して夕食、入浴、勉強を済ませた。友美と洋美が就寝しようとすると、愛美と幸美は問いかける。
愛美:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、聞きたいんだけど」
幸美:「女同士の性交って、どうやってするの?」
友美:「どうして、そんな事聞くの?」
洋美:「あのね、性交は男と女が子供を作る為のものよ」
愛美:「じゃあ歩美姉ちゃんに聞くのはダメ?」
幸美:「依沙美が産まれた仕組みが解りそうだから」
友美:「そんなに知りたいの?」
愛美:「知りたい。この際、友美姉ちゃんに叩かれても我慢するから」
幸美:「幸美だって同感、知りたい」
友美:「やれやれ仕方ないわね」
友美と洋美は愛美と幸美に話を始めた。話し終えての就寝後、いつものように愛美と幸美が目を覚ます。
愛美:「幸美、トイレ?」
幸美:「愛美姉ちゃんもトイレ?」
愛美:「そおよ、一緒に行こう」
二人はトイレで用便を済ませるが、部屋に戻ろうとした時、幸美が愛美に抱きつく。
愛美:「幸美、どうしたの?愛美に抱きついて」
幸美:「愛美お姉ちゃん、姉と妹の関係、入れかえっこしたいと思う事ある?」
愛美:「入れかえっこ?」
幸美:「愛美お姉ちゃんには幸美という妹がいるけど、幸美には妹がいないの。愛美お姉ちゃんを妹にするのは、どうかなと」
愛美:「そおね、一度、幸美の事を『幸美お姉ちゃん』と呼ぶのはどうかと考えてしまう事あるわ。一番、良いのは佳那子が勝幸と結婚する事なんだけどね」
幸美:「愛美が幸美の事を『幸美お姉ちゃん』と呼ぶのね、たまには気分が変わって良いかもね」
そこへ洋美が部屋から出て来て二人に声をかける。
洋美:「愛美、幸美、お前らトイレに行く度に、いつも話し合っているな。何話している?」
愛美:「その時次第だけど」
幸美:「愛美お姉ちゃんと話し合っている時が楽しく感じる」
洋美:「仲いいね、息もぴったりだし」
愛美:「洋美姉ちゃんは友美姉ちゃんと二人きりで話し合ったりしないの?」
洋美:「私が中等部一年の時は二年生だった友美姉ちゃんと話したよ。登下校の時にね。でも部活の時は、よく怒られたし、怒鳴られたし、平手打ちされたわ、美千代と礼子が見ている前でね。今でも変わらないけど、愛美と幸美が入学し入部してからは命令される事が多くなったわ。今でも友美姉ちゃんは恐くて逆らえないよ」
愛美:「愛美だって友美姉ちゃん恐い。平手打ちが痛いから」
幸美:「幸美だって同じよ。平手打ちされるのなら菊池先生に限るわ。でも愛美姉ちゃんにされた事ないけど」
愛美:「ちょっと幸美、そんな事言われたら愛美、悲しくなりそうよ」
洋美:「さっ、もう寝よう」
洋美に促され愛美と幸美はベッドで抱き合って寝る。そして翌朝の5月5日月曜日の祝日、友美は目を覚ます。洋美、愛美、幸美は、まだ眠っている。
(今日は祝日、休みだから無理に起こさなくてもいいか)
友美は自身の机でスマホを見る。今日はどう過ごすか考えあぐねていると一通のメールがきた。メールの相手は愛美と幸美、悠真のクラスメートの小湊佳那子だった。メールの内容は
『友美姉ちゃん、おはようございます。昨日はどうやって過ごしましたか?
私は小学校時代の同級生と一緒に商業施設で楽しみました。今日はどうやって過ごす予定ですか?もし、よろしければ友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美、幸美、勝幸君に会えると良いのですが、どうでしょうか?』
であった。友美は佳那子に電話をかける。
友美:「おはよう佳那子。メールが来たから電話させてもらったわ」
佳那子:「おはようございます友美姉ちゃん」
友美:「昨日は妹達と一緒に遊園地に行ったわ。菊池先生、大水先生、悠真さんに会ったわ」
佳那子:「えっ!そおだったんですか?」
友美:「愛美と幸美、大ハッスルだったから」
佳那子:「そおだったんですか?詳しい事きかせて頂けると嬉しいです」
友美:「今、妹三人まだ寝ているけど、良かったらウチに来る?勝幸もまだ寝ていると思うし今日の予定は、まだ解らないけど」
佳那子:「よさせて頂きます」
友美:「あっ、今、妹三人起きたわ」
洋美:「友美姉ちゃん、誰と話しているの?」
愛美:「誰と?」
幸美:「もしかして佳那子?」
友美:「そおよ、ウチに来ると言ってるけど、どう?」
洋美:「OKよ」
愛美:「OKよ」
幸美:「OK待っているよ」
友美:「三人の妹も待っているから気をつけておいで」
佳那子:「はい、解りました」
佳那子との会話を終えると、友美は洋美、愛美、幸美と共に歯磨きと食事をすまさせ佳那子の到着を待つ。弟の勝幸にも食事、歯磨きをさせた。やがて佳那子が二人の弟、勇神と龍神を連れてやって来た。
友美:「佳那子、おはよう。勇神君に龍神君、おはよう」
洋美:「おはよう佳那子、弟ちゃんも来たんだ」
愛美:「おはよう佳那子、弟ちゃんも一緒なんだね」
幸美:「おはよう佳那子、弟見るなんて初めて」
勝幸:「佳那子さん、おはようございます」
佳那子:「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、おはようございます。愛美、幸美、勝幸君、おはよう」
勇神&龍神:「おはようございます。今日は勝幸兄ちゃんに会いたくて来ました。」
勝幸:「おはよう、勇神、龍神」
八人は挨拶を交わし勝幸は勇神と龍神を連れて自身の部屋に入りゲームに没頭する。佳那子は葵奈四姉妹と共に姉妹の部屋に入る。
佳那子:「あの、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、遊園地の出来事はどうだったのですか?」
友美:「遊園地で菊池先生、大水先生、悠真さんに会ったのよ」
洋美:「ステージイベントでは愛美と幸美、バク中したのよ」
佳那子:「えっ!マジで?」
愛美:「そおよ」
幸美:「観客、みんなビックリだったわ。小さい子供の親子連れからの記念撮影攻めの対応に大童だったわ」
佳那子:「そおだったの?」
愛美:「他の中学の生徒からも質問攻めにあったからね」
幸美:「佳那子はバク転、バク宙、前宙は出来る?」
佳那子:「駄目。出来ない」
友美:「その時の様子、スマホで動画撮影したの、見てみる?」
友美は佳那子に愛美と幸美がバク宙と連続前宙を披露した時の動画を見せた。スマホの画面を見つめる佳那子の顔つきは驚きの表情であった。そんな佳那子に愛美は声をかける。
愛美:「ねぇ佳那子、バク宙出来るようになろうよ」
幸美:「それプラス、前宙もね」
佳那子:「え〜っ、やらないといけないの?」
愛美:「愛美達が補助してあげるから」
幸美:「飛び込み競技とグラドル撮影の為にも」
洋美:「頑張って出来るようになろう!目標は109Cを完璧にね」
友美:「佳那子、頑張って出来るようになろう!悠真さんだって水泳の補習、頑張るんだから」
佳那子:「は、はい・・・」
友美:「その返事、おびえてるみたい。いいわ、私達が厳しくしごいてあげるから安心してね」
佳那子:「厳しくって、私、叩かれてしごかれるのかしら・・・」
洋美:「あははっ。本当は、それを望んでいるんじゃない?顔に書いてあるわよ、佳那子。特訓は昼休みか、放課後の部活の飛び込みの練習の合間でやろうよ」
佳那子:「は、はい。ところで写真集、いつ出来るのでしょうか?」
友美:「カメラマンの長野さんの話だと早くて今月の中旬か下旬みたいだよ」
佳那子:「どんな感じで載るのか楽しみです。買って下さる人がいれば良いのですが・・・」
友美:「いるよ。最近、知り合った男性で私達の写真集を愛用してくれる人がいるのよ」
佳那子:「どういう、いきさつで知り合ったのですか?」
友美:「妹の愛美と幸美が見つけていたのよ。最初は、その二人で、次に洋美が加わって、その時に悠真さんの救出劇に遭遇したのよ」
佳那子:「え〜っ!そおなんですか!?悠真さんの救出に洋美姉ちゃん、愛美、幸美が加担していたのですね、驚きです!」
洋美:「それには菊池先生もビックリだったわ」
佳那子:「そおなんですか!?」
洋美:「そおよ。その時の菊池先生の驚きの表情、忘れられないわ」
佳那子:「悠真さんを12年の間、監禁していた犯人は捕まったんですね」
友美:「そおよ、最初は逃亡していたみたいだけど結局は見つかって逮捕されたからね」
佳那子:「悠真さんは菊池先生、大水先生と同学年で同い年の24歳なんですよね?本当は」
友美:「それが逮捕された犯人に誘拐され監禁生活を12年間、強いられた事によって佳那子、愛美、幸美と同学年になってしまったのよ」
佳那子:「じゃあ悠真さんは24歳の中等部一年生と言う事ですね」
友美:「そうよ。でも間違っても悠真さんに対して『あなたは24歳でしょ』は禁句よ。菊池先生や大水先生には口にするなと言われているからね」
愛美:「だとすると車および運転免許に関する事もダメなのかなあ?」
友美:「当たり前じゃん!」
幸美:「ダメでなかったら有難いのがあるのに」
洋美:「何が有難いなのよ?」
佳那子:「車でドライブかしら?私の弟、二人とも車に興味あるのよ。レーシングカータイプの」
友美:「本人に聞かないと解らないと思うけど恐らく悠真さんは車と運転免許には興味を示せる質ではないと思うわ」
洋美:「そお言えば遊園地のゲーセンでのカーレースのゲーム、悠真さんはやっていなかったわ」
愛美:「やっていたのは愛美、幸美、大水先生に悠斗さんだったよ」
佳那子:「ねぇ愛美、その悠斗さんって、誰なの?」
愛美:「葵奈姉妹の写真集を買って愛用して下さる方よ。その人にレンタカーで車を出してもらって出かけたことあるのよ」
佳那子:「そおなの」
愛美:「悠斗さんも一緒に遊園地に行ったのよ」
幸美:「悠斗さんだって、いつ写真集が出るか気にしているみたいだよ」
佳那子:「私が載ったのなら、どう思うのでしょうか気になります」
愛美:「佳那子の事知らないからニューフェイスと思うよ」
五人が話し合っているうちに友美のスマホにメールの着信を知らせるアラームが鳴り響いた。メールの相手はカメラマンの長野明子である。友美はメールを見て声をあげる。
友美:「長野さんからだわ。写真集は今月の中旬過ぎに出るようだわ」
佳那子:「そおなんですか!?あれから1ヶ月で発売といったペースですね、思っていたより早いみたいです」
友美:「佳那子も載るみたいだわ」
佳那子:「だとしたら楽しみです。あの時は楽しかったです」
愛美:「愛美だって楽しかった。佳那子がいたから」
幸美:「幸美も楽しかった。葵奈姉妹には佳那子がいないと寂しい」
洋美:「葵奈姉妹には歩美姉ちゃんよりも佳那子が必要。いないと画竜点睛を欠くようなものよ」
佳那子:「そのノリで首女高と首女中水泳部のグラビア写真集が出せたらもっと楽しいと思うんですけど、どうでしょうか?」
友美:「それいいかも、長野さんと菊池先生、大水先生、池澤先生は、首女中、首女高、首女大の卒業生だから言ってみると良いかもね」
洋美:「撮影場所は首女高と首女中の校内でないとね」
佳那子:「長野さんって年齢は菊池先生より年上ぽいですけど、いくつなんでしょう?」
友美:「26か27ぐらいだと思う。悠真さんの事、知っている可能性はありそうよ」
佳那子:「友美姉ちゃん、長野さんと話す機会があれば次の撮影の事、聞いておいてくれませんか?次も有れば出てみたいです」
友美:「解ったわ、聞いておくわ。撮影場所も聞けたら聞くつもりよ」
佳那子:「もし次も参加出来るとしたら首女中のプールはどうかと思うのがありますね。私、個人の意見ですが」
洋美:「そうだと良いなあと思うわ。その方が飛び込みの撮影が出来るから」
愛美:「愛美だって幸美とのシンクロダイビング、動画撮影でBlu-rayをどしどし出したい」
幸美:「幸美だって同じよ。愛美お姉ちゃんとペアを組んでなら楽しいの。食事と勉強は勿論の事、運動、部活、入浴、睡眠に用便だって一緒でないとやっていけないのがあるのよ」
佳那子:「え〜っ、そおなの?」
友美:「そおよ、二人は毎晩、同じベッドで抱き合ってキスしながら寝ているよ、愛し合うようにね」
佳那子:「愛し合うようにですか?それってシンクロダイビングで息を合わせる為でしょうか。私だったら、誰と愛し合えば良いのか・・・」
洋美:「もう佳那子ったら、いつもそんな事を考えているの?」
佳那子:「は、はい。友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、勝幸君よりも菊池先生にうつつ抜かす事が多くなっています」
洋美:「やっぱり、そうだったのね。佳那子、菊池先生が好きなのね」
佳那子:「はい、私は菊池先生との恋愛に溺れています」
友美:「あはは、けっ傑作だわ〜!」
洋美:「あはは、佳那子は海、プールでは溺れなくても菊池先生との恋愛だと溺れてしまうのね」
愛美:「あはは、どうして菊池先生との恋愛に溺れる事になったのかしら?」
幸美:「菊池先生の制服姿、スク水姿かしら?だとしたら体操着姿もだったりして」
佳那子:「私は菊池先生のスク水姿にですね、恋心を抱いたのは」
葵奈四姉妹と佳那子が話し合っているうちに勝幸が部屋の外から声をかける。
「友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、愛美姉ちゃん、幸美姉ちゃん、佳那子さん、お昼にしようとママが言っているよ」
五人は台所へと降りていく。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一歩、牟田内家では悠真が菊池と大水の手ほどきを受けながら歩行訓練を受けていた。明日、連休明けからの電車とモノレール通学に備える為である。
菊池:「悠真、明日の通学、大丈夫?」
悠真:「いけると思うわ、通学中に誰と合う事になるのか楽しみよ」
大水:「その調子よ、楽しみがあっての回復と上達だからね」
悠真:「それにしても昨日の遊園地での出来事、私にとってはカルチャーショックだったわ」
菊池:「何がカルチャーショックなの?」
悠真:「私のクラスメートの愛美と幸美よ」
菊池:「そおなんだね、二人は一卵性双生児だから顔立ちも性格も瓜二つ、それだからか息が合うのよね」
大水:「ところで、昨日、葵奈姉妹と来ていた男性だけど葵奈姉妹の写真集を愛用しているみたいだよね」
菊池:「名前は確か、三矢悠斗だったけど何か聞いた事ありそうな氏名だったわ」
大水:「聞いた事ありそうって同じ学校に通っていたと言う事?」
菊池:「小学校では一緒ではなかったと思うわ」
大水:「じゃあ幼稚園?」
菊池:「だったりして」
大水:「それなら卒園アルバム見てみたら解るじゃん」
菊池:「そおね、帰ったらアルバム探してみようかしら」
悠真:「面白い事になったりして」
菊池:「ところで悠真、明日からの連休明けの放課後は水泳の補習授業を受けてもらうわよ。水泳部員からの手ほどきがあるかも知れないから」
悠真:「解っているわ、毎日補習なら愛美と幸美、佳那子の飛び込み、補習の合間に拝めそうだから」
菊池:「双子姉妹の飛び込みを見るのが楽しみなのね」
悠真:「そおなのよ」
大水:「泳ぐのと飛び込むのと、どちらが好きになるかは、そのうちに解るかもね」
三人が会話をしていると悠真の母親が声をかける。
「お昼にしましょう」
三人はキッチンへと足を運ぶ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
食事を終えた葵奈姉妹と佳那子、勝幸、勇神、龍神は二つに分かれて過ごす事にした。勝幸の部屋で佳那子と勝幸が、葵奈姉妹の部屋では四姉妹と勇神、龍神が会話を楽しむ事になった。姉妹の部屋では四姉妹が勇神と龍神に話しかける。
愛美:「勇神君と龍神君はカーレースゲームが好きなの?」
勇神:「好きだよ」
龍神:「好き。愛美お姉ちゃん達も好きなの?」
愛美:「勿論よ。あまり上手じゃないけど」
幸美:「幸美だって上手な方じゃない。飛び込みの方が好きだから」
勇神:「好きなのはやはり・・・・」
愛美:「一番には飛び込み、二番にはスイーツ&ケーキバイキング、三番にはアイススケートよ」
龍神:「そおなんだ」
幸美:「幸美も基本的には同じよ。飛び込みよりも好きなのは愛美お姉ちゃんと一緒にいる事かな」
友美:「二人は双子だから中が良いのよ」
洋美:「夜寝る時は、いつも一緒に寝ているのよ」
勇神:「そおなんだ、僕、龍神と部屋が一緒だよ」
龍神:「寝る時は二段ベッドの下で寝てる」
友美:「お兄ちゃんの勇神君は上で寝てるんだね」
勇神:「そおなんだ」
一方、勝幸の部屋では佳那子が勝幸と会話を楽しんでいた。
佳那子:「勝幸君の部屋なんだね」
勝幸:「汚ない部屋だけど・・・・」
佳那子:「良いのよ、気にしなくて。綺麗よりも小汚ない方が生活感が感じるから、かえって良いじゃん」
勝幸:「佳那子さん、弟の勇神君と龍神君、僕の弟に欲しい位です」
佳那子:「意気投合が出来てきたのね、じゃあ私の言いなりになれる?」
勝幸:「言いなりって何ですか?」
佳那子:「それは、私と結婚できる?」
勝幸:「けっ、結婚ですか!?僕はまだ小学五年生ですよ」
佳那子:「赤面しちゃって。勝幸君はベッドで寝ているだね、一緒に寝ない?」
勝幸:「寝ない、と言われても、まだ昼過ぎですよ」
佳那子:「そおだね、ところで勝幸君はゲームの類いが好きなんだね」
勝幸:「はい、たまに愛美姉ちゃんと幸美姉ちゃんに相手をしてもらう事があります」
佳那子:「私の二人の弟と楽しく楽しんだ?」
勝幸:「楽しみました。佳那子さんはしないのですか?」
佳那子:「私はやらない方だわ。なんだったら、また勇神と龍神とやりたい?」
勝幸:「やりたいですよ」
佳那子:「それじゃ、お姉ちゃん達の部屋へ行こう」
佳那子と勝幸は、葵奈四姉妹の部屋へと入る。入るや否や洋美は佳那子に声をかけスマホの写真を見せる。
「佳那子、実は見せてみたいものがあるのよ。これは菊池先生の幼稚園時代と思われる写真よ」
「えっ!そおなんですか!?」
こうして再び佳那子は葵奈姉妹と、勝幸は勇神と龍神の小湊兄弟と、それぞれ会話を楽しんだ。そして夕方、佳那子、勇神、龍神は帰宅していった。
その日の晩の就寝時、愛美と幸美は目を覚まし用便の為にトイレに行く。用意を済ませると幸美は愛美に抱きつく。
幸美:「愛美お姉ちゃん」
愛美:「幸美ったら愛美に抱きつくのが好きなんだ」
幸美:「幸美は愛美お姉ちゃんと抱き合うのが好き」
愛美:「愛美だって幸美と抱き合うのが好き。もし愛美が男子になったとしたら幸美と性交するかも知れないわ」
幸美:「もし、そおだとしたら、幸美、妊娠してしまうわ」
愛美:「そおだよね。現実にそんな事、あり得ないけどね、ベッドへ戻って寝よう」
幸美:「うん、幸美の大好きな愛美お姉ちゃん」
翌日の5月6日火曜日、友美は一番早く目を覚ました。
(さぁてと洋美、愛美、幸美を叩き起こそうか)
友美が最初に洋美を叩き起こそうと近寄ると洋美が目を覚まし上半身を起こす。
友美:「わっ!洋美!起きたの」
洋美:「起きたよ。もうすぐ愛美と幸美も起きると思うよ」
友美:「起きれたんだね。真美奈、美幸、香織はゴールデンウィークはどう過ごしたのかな?」
洋美:「聞いてみたら良いじゃん。私だって美千代、礼子どうしていたのか気になるのだから」
友美と洋美が話し合っていると、愛美と幸美が目を覚ました。
愛美:「ふあぁぁっ、良い夢だったわ」
幸美:「ふあぁぁっ、美味しい夢だったわ」
友美:「どんな夢を見ていたの?」
愛美:「愛美は幸美、佳那子と一緒に菊池先生の飛び込みの特訓を受けていた夢を見た」
幸美:「幸美は愛美お姉ちゃんと一緒にケーキの早食い競争に出て優勝した夢を見たわよ」
洋美:「愛美と幸美で違う夢を見たんだ」
友美:「早く着替えて朝御飯取ろう」
四姉妹は朝食、歯磨きを済ませ当校すべく家を出てモノレールの駅へと歩き、ホームでモノレールの到着を待つ。やがてモノレールが到着し四姉妹は乗車する。車内には菊池、悠真、水泳部飛込み競技部門の宇都香織、洋美のクラスメートの工藤美千代が乗っていた。
菊池:「おはよう、四姉妹揃っての当校ね」
悠真:「おはよう」
香織:「おはよう、友美、洋美ちゃん、愛美ちゃん、幸美ちゃん」
美千代:「おはようございます、葵奈先輩いや友美姉ちゃん。おはよう洋美、愛美ちゃん、幸美ちゃん」
友美:「おはようございます、菊池先生、悠真さん。香織、工藤、おはよう」
洋美:「おはようございます、菊池先生、悠真さん、宇都先輩。美千代、おはよう」
幸美:「おはようございます」
愛美:「おはようございます、今日から悠真さん、モノレールで通学ですね」
悠真:「電車とモノレールの二種類でね。十二年前と変わらないわ」
洋美:「そおなんですか、通学は電車とモノレールに限るのでしょうか?」
悠真:「その通りよ」
菊池:「悠真、解ってるわよね?今日から放課後、水泳の補習よ」
悠真:「そおだった!?」
愛美:「もしかして悠真さん、水着の用意、忘れたの?」
幸美:「もし、そうだったら昼休み、一緒に購買部へ行きましょうよ」
悠真:「ええ、そうするわ」
やがて次の駅に到着すると佳那子が乗車してきて挨拶をする。
佳那子:「おはようございます、菊池先生、悠真さん、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、香織姉ちゃん。美千代姉ちゃん、それに愛美、幸美、おはよう」
菊池:「おはよう小湊さん」
悠真:「おはよう佳那子」
香織:「おはよう佳那子ちゃん」
洋美:「おはよう佳那子ちゃん」
愛美と幸美:「おはよう佳那子」
佳那子:「今日も菊池先生のスク水姿、楽しみです」
菊池:「小湊さん、それを楽しみにしているのね?」
佳那子:「はい、そおです」
洋美:「やっぱり佳那子、そればっかし気にしているのね」
佳那子:「はい、制服姿は見る事が多いですけど体操服姿は見れてないですね」
菊池:「あははっ、実は私、コスプレが趣味なのよ」
佳那子:「えっ!そおなんですか!?以外だと思ってしまいました」
菊池:「私の体操服姿、気になるの?」
佳那子:「なります。型は私と同じ紺ブルだったら・・・なんて思ってしまう事が・・・・」
菊池:「あははっ、小湊さんたら」
香織:「佳那子ちゃん、菊池先生の虜になっちゃっているのね」
一同は呵呵大笑した。やがてモノレールは首女中と首女高の最寄り駅である終点駅に到着し、葵奈姉妹、菊池、悠真、香織、佳那子は下車して校門へと歩いていく。校内に入ると菊池は職員用の更衣室へ、友美は中等部三年A組へ、香織はB組へ、洋美と美千代は二年B組へ、愛美と幸美、佳那子、悠真は一年A組へと別れ入っていく。悠真が愛美と幸美、佳那子と一緒に教室に入ると同級生達は挨拶をする。
同級生A:「おはよう悠真さん」
同級生B:「おはよう悠真さん」
同級生D:「おはよう悠真さん、愛美、幸美、佳那子と一緒なんだね」
悠真:「今日から電車とモノレールで登下校よ」
同級生E:「そおなんだ」
同級生A:「久しぶりの電車通学は新鮮に感じません?」
悠真:「感じるわ。ところで名前は、まだ覚えてないけど」
同級生A:「私の名前ですか?私は赤木ほのか、部活は陸上部ですよ」
悠真:「じゃ『ほのか』で良いかしら?」
赤木:「いいですよ、悠真さん」
同級生B:「私は馬場崎麻里です。部活はバスケットボール部です。呼び方は麻里でいいですよ」
同級生D:「私は土門麻子代です。麻子代でいいですよ」
同級生E:「私は石澤優子です。優子でいいですよ」
やがて一年A組の担任、池澤瑠美奈が入って来てホームルームになった。
「これから出席を取ります」
一方、二年B組でも洋美と美千代が津軽礼子と談笑を楽しんでいた。
美千代:「ゴールデンウィークはどう過ごした?」
洋美:「私は友美姉ちゃん、愛美、幸美と一緒に遊園地に行った。そこで菊池先生、大水先生、悠真さんに会った」
美千代:「そおなんだ。私はお兄ちゃん達としゃべって過ごしたわ」
礼子:「私は青森へ帰郷してたわ。やっぱり故郷は良いものだわ」
洋美:「美千代、お兄ちゃん達とは何を話したの?」
美千代:「首女中の制服、体操服、の事が多かったわ」
礼子:「私達にとってごく普通の制服等も男の人にしてみれば色気を感じる事が多いのかなあ?」
美千代:「そおかもね、私、二人のお兄ちゃんに制服姿、体操着姿、水着姿を披露したよ」
洋美:「へぇー!二人のお兄ちゃんにとっては妹のセクシーショーみたいかもね、どうだった?」
美千代:「私、二人のお兄ちゃん達に制服や体操着の事で助言してもらっていたのよ。私、赤が好きな色だから」
洋美:「私が美千代の立場だったら積極的に助言を求めているかも知れないわ」
美千代:「二人のお兄ちゃんに体操着の事を聞いてみたら体操着は紺ブルが一番って言うのよ。赤ブルはその次と言った具合だわ」
礼子:「そおなんだ、恥ずかしくなかった?」
美千代:「最初はためらったけど押しにおされて見せてあげたわ。二人のお兄ちゃんには私の制服姿、紺ブルと赤ブルの体操着姿、水着姿を写メールで送ってあげたのよ」
洋美:「反応はどうだった?」
美千代:「大喜びだったわ」
やがて教室に大水が入って来てホームルームとなる。大水の服装は首女高の制服である。
また一方、三年A組では友美と真美奈が談笑していた。
友美:「真美奈、ゴールデンウィークはどうしてた?」
真美奈:「ピアノ演奏のリサイタルに出てましたわ」
友美:「真美奈は、やっぱりピアノ上手いんだ、愛美、幸美、佳那子だったらうたた寝してしまうかも」
真美奈:「あははっ、私の演奏って、そんなに眠気が来やすいのかしら?」
友美:「そおかも、で結果は?」
真美奈:「結果は、と言っても私だけ演奏するピアノリサイタルだから、そんなに人は多くなかったけどね。来ていた人達は気持ち良く聞いていたわ、中にはうたた寝していた人もいたみたいだったけど」
友美:「そおなんだ。私は妹達と遊園地に行ったわ。菊池先生、大水先生、悠真さんに会ったわ」
真美奈:「あら、そおなの。悠真さんって菊池先生、大水先生と一緒にいる事が多いよね」
友美:「そおよ、悠真さんは菊池先生、大水先生と一緒に卒業したかったんだ、本当は」
真美奈:「でも現実は愛美ちゃん、幸美ちゃん、佳那子ちゃんと一緒に卒業する事になるのよね」
やがて教室に制服姿の菊池が入って来てホームルームになる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
四時間目が終わり昼休みに入ると、悠真は菊池、大水、愛美、幸美、佳那子と一緒に食堂へと移動する。そこへ一年A組の赤木、馬場崎、土門、石澤がやって来て一緒に食事しょうと申し出て十人で食事となった。
愛美:「食事の後、一緒に購買部へ寄ろうよ、悠真さん」
悠真:「そおね、今日の放課後、水泳の補習に出ないとね、水着はどれにしようかな?十二年前に購入したのは小さくて着れないし」
幸美:「監禁生活でも背丈は伸びたのね」
悠真:「伸びたわ、少しは。食事は1日、パンもしくはお握り一個か二個だけだったから」
赤木:「用便と風呂はどうだったのですか?」
悠真:「用便?トイレね、簡易トイレで足していたわ、犯人の監視下だったら監禁されていた家のトイレを使えた。風呂はお湯で絞ったタオルで体を拭く事しか出来なかった。もちろん外へ遊びにいく事も叶わなかったわ」
馬場崎:「監禁生活での楽しみは?」
悠真:「無かったわ、ただ一つ思っていたのは『どんな事があっても由利と咲と一緒に首女中へ通う事』だったわ。何年経っても、何十年経っても」
土門:「想いと執念の強さよね」
石澤:「ねぇ悠真さん、運転免許の類いは・・・」
愛美:「優子、その話は禁句よ!」
石澤:「どうしてなの?」
愛美:「年齢がらみになるから」
食事を終えると悠真は愛美と幸美、佳那子の三人に連れられて購買部へと足を運ぶ。
愛美:「悠真さん、水泳の補習で着用する水着どれにする?愛美と幸美が着用しているのは、この型なんだけど」
悠真:「肩の紐が白の紺の型よね」
幸美:「そおよ、幸美達が部活と水泳の授業で着ているものよ。菊池先生も部活で着用する事、多いよ」
佳那子:「私も、その型を着用しているのよ」
悠真:「じゃあ私も適合サイズを選んでこれにしようかな?」
愛美:「それと水着の下に着用するスイムインナーとスイムキャップが必要よ」
悠真:「スイムキャップかぶらないといけないのかな?」
愛美:「かぶらないと愛美達が所属している水泳部飛込み競技部門に間違って入部させられるかも知れないからね」
佳那子:「それと体育の授業の為の体操服も必要だわ」
悠真:「どれにしようかな、これにしよう、下はどれにしようかな、短パンにしようかな?」
佳那子:「緑の短パンなら私の物を貸してあげるわ。私、体育では紺ブルを履いているから」
悠真:「ありがとう、そうさせて頂くわ。今回、購入すべきは四点ね、ゴーグルはあるから持ってきたわ」
幸美:「購入代金は幸美達が出してあげるわ。補習、頑張ろうね」
購入代金の支払いを済ませ愛美、幸美、佳那子、悠真は一年A組の教室へと戻った。教室へと戻ると赤木、馬場崎、土門、石澤が談笑していた。
赤木:「お帰り、愛美、幸美、佳那子、悠真さん」
馬場崎:「購買部での買い物、済んだのね」
悠真:「ええ済ませたわ」
やがて昼休みが終わり五時間目の授業となる。そして放課後、部活の時間となり悠真は愛美、幸美、佳那子に連れられてプールへ向かおうとした。校舎を出た所で菊池にかち合った。その出で立ちは水着の上に体操服を着たものだった。
菊池:「悠真、水泳の補習よ。私もプールに向かう所だから一緒に行こう」
愛美:「菊池先生は悠真さんの水泳の補習で付きっきりになるんですね」
菊池:「そおよ」
愛美:「昨夜は夢の中に菊池先生、佳那子、幸美が出てきました」
菊池:「あら、そのなの?どんな夢だったの?」
愛美:「幸美、佳那子と一緒に菊池先生の飛込み競技の特訓を受けている夢でした」
菊池:「へぇー、どんな感じの特訓だったの?」
愛美:「全国大会に向けての厳しい特訓でした。正夢だったらどうかなぁと」
幸美:「幸美はケーキの早食い競争で優勝した夢を見てしまいました」
菊池:「双子でも見た夢は違うのね」
悠真、愛美、幸美、佳那子、菊池はプールへと到着し、水着に着替える。
愛美、幸美、佳那子は飛込みプールへ移動し、悠真は競泳プールの側でたたずむ。
(首女中のプール、入学して十二年後になって初めて入る事になるとは)
菊池が悠真に声をかける。
「悠真、準備体操しよう」
菊池に促され悠真は準備体操をしシャワーを浴び水中ウォーキングに取り組む。
「悠真さん、頑張って」
競泳部門の部員が優しく励ます。葵奈姉妹、佳那子をはじめとする飛込み競技部門の部員達も悠真の様子を気にしていた。友美は真美奈と、美幸は香織と、美千代は礼子と、愛美は幸美と、洋美は佳那子とシンクロダイブの練習に励む。一方、プールの外のグランドでは陸上部部員達が悠真の事を気にかけていた。
陸上部部員A:「悠真さん、水泳の補習なんだ。菊池先生の元で」
赤木:「ええ、私のクラスメート、愛美、幸美、佳那子が飛込み競技部門ですけどね」
陸上部部員B:「そおなんだ、赤木は走るのと泳ぐのでは、どっちが好き?」
赤木:「両方好きですけど強いていうなら走るほうですね」
陸上部部員B:「私も同じよ。でも走ると汗だくだからね」
陸上部部員C:「練習の後で、ひと飛込みと、ひと泳ぎできたら気持ちいいんだけどね」
陸上部部員A:「練習終わったら悠真さんの様子、見てみない?」
陸上部部員B:「そおね」
そして放課後の部外が終わりに近づくころ陸上部部員達はプールを覗く。競泳プールでは悠真が菊池の元で水中ウォーキングをこなしているのだった。他の競泳部門の部員達も悠真を励ましている。
陸上部部員A:「悠真さん、頑張っているわ」
陸上部部員B:「歩くのは大丈夫であっても走るのはさすがに、まだまだしんどいかな?」
プールでは水泳部員達が練習を終えつつあった。菊池は佳那子だけをプールサイドに残して話し合う。
菊池:「小湊さん、私に見とれている事、多いのね」
佳那子:「はい、私、菊池先生にメロメロで」
菊池:「そおなの?実は私だってあなたに恋心抱いているのよ」
佳那子:「そおなんですか!?私、実は菊池先生と二人きりで同性デートを、と思っていたんです。先生のスクール水着姿、セクシーです」
菊池:「赤面しそうだわ、あなたのスクール水着姿もキュートでセクシーよ」
佳那子:「嬉しいです。もっと話しあえる時間があればいいです。先生のストレス発散って何なのか気になる事が多いんです」
菊池:「一人で飛び込んで泳ぐ事かしら。やっぱり飛込みは気持ちいいからね。小湊さんはどうかしら?」
佳那子:「私は先生と同じく飛込みですね。言うのはあれかも知れませんが菊池先生の平手打ちが飛込みの入水よりも気持ちいいです」
菊池:「やだわ、んもう。でも小湊さん、私の虜なのね」
佳那子:「はい、私、菊池先生の中で溺れました」
菊池:「そおなの?じゃこれはどうかしら?」
菊池は佳那子の唇に口付けをした。
菊池:「小湊さん、あなたの唇、美味しく感じるわ」
佳那子:「先生の口付け、気持ちいいです。平手打ちよりも気持ちいいです」
菊池:「その方が私、嬉しいわ。小湊さん、一緒にひと飛込みとひと泳ぎしましょう」
佳那子:「はい、喜んで」
菊池と佳那子は飛込みと泳ぎを一緒に楽しんだ。
菊池:「小湊さん、そろそろ着替えて下校準備に入ってね。私は職員用の更衣室で着替えるから」
菊池は泳ぐ時に脱いだ体操服を水着に着て職員用の更衣室へと歩いて行った。佳那子は部員用の更衣室へ入る。更衣室には愛美、幸美、悠真が着替えを済ませて待っていた。
愛美:「佳那子、着替えようね」
幸美:「菊池先生との一時、楽しかった?」
佳那子:「楽しくて気持ち良かったわ。もっと菊池先生と二人きりで過ごせる時間が欲しいくらいだわ」
悠真:「そおなの」
佳那子:「悠真さん、水中ウォーキングどうでしたか?」
悠真:「由利だけでなく競泳部門の部員達も励ましてくれたから頑張れたわ」
愛美:「良かったわ。佳那子、着替えを急ごう」
佳那子は着替えを済ませて下校の準備を急ぐ。そして校門へと歩くと、友美、洋美、他の部員達が談笑を楽しんでいた。真美奈と美幸は迎えの車で帰宅していた。愛美、幸美、佳那子、悠真も談笑を楽しむ。しばらくすると着替えと帰宅準備を整えた菊池がやって来た。その時の出で立ちは出勤時の私服である。
菊池:「あら、みんな談笑していたのね」
友美:「ええ、そおなんです。やっぱり談笑は楽しくて、なかなかやめれないです」
菊池:「私だって、現役の首女中生と首女高生の時もそおだったわ。友達同士の談笑はなかなか止められないわ、わかる。でも遅くならないように帰宅しなさいね」
部員達は菊池に促され帰宅のとについた。葵奈姉妹、佳那子、美千代達はモノレールに乗る。悠真も菊池と一緒に乗った。佳那子が降り、次の駅で葵奈姉妹が降り終着駅で悠真、菊池、美千代、香織達は乗り換えの為にモノレールを降りる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
モノレールの駅を降りた葵奈姉妹は自宅へと歩いていた。愛美のスマホがメール着信を知らせるアラームが鳴った。すぐさま愛美と幸美がチェックする。
友美:「誰からのメールなの?」
愛美:「遊園地で会った他校の中学生からだわ」
友美:「愛美と幸美、人気が益々ついていくね」
洋美:「メールの内容は何なの?」
愛美:「機会があれば、また会って遊ぼう、だわ」
幸美:「スケジュールの調整、つけるのが難しいかも」
友美:「愛美、幸美、会いたいと思っているの?」
愛美:「出来れば。会うとしたら首女中の制服で」
幸美:「お互いの学校の制服を見せ合う形だったらどうかと思っているのよ」
洋美:「そおなの。ところで、『ゆうにい』からのメールはないの?」
愛美:「今はないけど、こっちからしてみようと思うのはあるよ」
洋美:「してみりゃ良いじゃん。またバイキングを考えているの?」
友美:「だったら私も誘って欲しいものだわ」
幸美:「友美姉ちゃんもバイキング、行きたいんだ」
洋美:「他校の中学生、主にどの辺りを行動しているのかが問題だわ」
やがて四姉妹は自宅にたどり着き入浴と食事を済ませる。就寝時、愛美と幸美は毎日のように目を覚ます。
愛美:「幸美、トイレに行くけど」
幸美:「幸美も行く」
二人は用便を済ませると、いつものように会話をする。
愛美:「幸美、他校の中学生と会うのはどう?」
幸美:「そおよね、万が一、ゆうお兄ちゃんと重なったらどうしようか迷うのがあるわ」
愛美:「そういう時は友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんに行ってもらうのはどうかと思うのがあるわ」
幸美:「他校の中学生に会いに行くのなら幸美は紺ブルの体操服の上に首女中の制服を着て行こうと思っているの」
愛美:「愛美も同じよ、他校の中学生、どう思うか反応を見るのが楽しみに思えるわ」
幸美:「そおよね、他校の中学生に会いたいと言ってみる?」
愛美:「友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんに許可取らないとね」
そして、友美と洋美も目を覚ました。
友美:「洋美、目を覚ましたんだね」
洋美:「うん、愛美と幸美、トイレに行って話し合っているわ」
友美:「洋美、もし悠斗さんに会うとしたら次は何処へ行くつもりなの?」
洋美:「友美姉ちゃん、気になるんだ。悠斗さん次第だと思うけど」
友美:「もし、会うとしたら私も入れて・・・」
洋美:「入れろ、なのね。入れるつもりよ。ゆうにいのリクエストを聞いておいた方が良いかも」
友美:「リクエストを聞く?」
洋美:「例えば、どんな服装で着て欲しいか、スカートの中は何が良いのかだわ」
友美と洋美が話し合っていると愛美と幸美がトイレから戻ってきた。四姉妹は再び就寝する。
そして5月7日水曜日、四姉妹は毎朝のように当校する。モノレールに乗ると車内に香織、美千代、悠真、菊池の姿があり、四姉妹は挨拶をする。次の駅で佳那子が乗ってくる。
佳那子:「おはようございます。悠真さんと菊池先生、一緒ですね」
悠真:「そおなのよ。毎日、水泳の補習に出ないといけないから」
菊池:「水中ウォーキングで慣れたら次は泳ぎだわ」
佳那子:「悠真さん、走りの方はどうなんですか?」
悠真:「まだまだしんどい。激しい運動はまだどうしても」
菊池:「最近じゃ陸上部の生徒が悠真の事、気にしているようだわ」
友美:「陸上だったら走るだけでなく飛ぶ力も要求されるからねぇ」
洋美:「走り高跳び、走り幅跳びがあるからね。今の悠真さんにはキツすぎるかもね」
菊池:「まだまだリハビリは始まったばかりだから」
やがてモノレールは首女中と首女高の最寄りの終着駅に到着し四姉妹達は首女校へ歩いて行く。校門を通り抜けると各々の教室へと分かれる。愛美と幸美は悠真と佳那子を伴って一年A組へと歩く。菊池は教職員用の更衣室へと歩いていく。
赤木:「おはよう、愛美、幸美、佳那子、悠真さん」
悠真:「おはよう、ほのか」
赤木:「悠真さん、今日も菊池先生と一緒に当校ですか」
悠真:「そおよ。由利、たまには学校に寝泊まりする事を考えているみたい」
佳那子:「悠真さん、それ本当何ですか!?」
悠真:「まだ解らないけど可能性はあると思うわ」
愛美:「佳那子、気になるの?」
幸美:「佳那子、菊池先生の事となると周りが見えなくなるのね」
馬場崎:「悠真さん、今日の二時間目は体育で三時間目は水泳だけど、どうするのです?また見学のつもりですか?」
悠真:「出ようと思っているのよ」
馬場崎:「大丈夫?どうしてもしんどくなったら浦木先生に言った方がいいですよ」
やがて、一年A組の教室に担任の池澤瑠美菜が入ってきてホームルームに移行する。そして、一時間目が終わり二時間目の体育の授業に備えて体操服に着替えグランドへ移動する。
愛美:「悠真さん、学校生活再開後、二回目の体育の授業ですけど大丈夫ですか?」
悠真:「やってみるわ。でも何か緊張する。今まで見学していたせいかしら」
幸美:「まあ気楽にいこうよ」
やがて体育の教師、浦木麻衣がやって来て号令をかける。
「集合!」
一年A組の生徒達は集合し整列する。整列すると浦木は口を開く。
「これから体育の授業を始めます。牟田内さん、やれますか?」
「解りませんが、やってみます」
準備体操の後、グランドのランニングに入る。愛美、幸美、佳那子、赤木達は楽勝気分で走っていたが悠真はペースが遅い為か集団から外れ後方に置いてきぼりとなった。やがて体をふらつかせたと思うとその場で倒れてしまった。すぐさま浦木が保健室に連絡を入れ悠真は保健室へと運ばれていった。
佳那子:「悠真さん、歩くのは大丈夫であっても走るのは無理かなあ?」
赤木:「あ〜駄目だこりゃ。これじゃ陸上部には誘えないわ」
馬場崎:「まさか心臓の心室に穴開いてないよね」
土門:「開いてない事を祈るわ」
三時間目の水泳の授業でも悠真は保健室での見学となった。そして四時間目終了後の昼休み、悠真は菊池、大水、愛美、幸美、佳那子、赤木、馬場崎、土門、石澤と共に食堂で食事を取る。
菊池:「悠真、また倒れたのね。体育の授業で・・・」
悠真:「うん、ランニングの時に」
佳那子:「今日は準備体操するまでは大丈夫でした」
大水:「まだ半月も経ってないから、これからだわ。リハビリは」
赤木:「今の状態じゃ陸上部に誘えないですわ」
石澤:「十二年のハンデは、やっぱ重いのね」
悠真:「何か十二年間、楽しみたくても出来なかった事、まとめて楽しめないかしら?」
愛美:「まとめて楽しむとは?」
土門:「海水浴、コンサート、ピアノリサイタル、旅行、美術鑑賞などをまとめて楽しむ事かしら?」
幸美:「海水浴なら幸美は深い海での飛込みが良いなあ」
愛美:「愛美も同じよ。ピアノリサイタルなら真美奈姉ちゃんのピアノ演奏が良いじゃん。水泳部の泊まり込みの合宿で真美奈姉ちゃんのピアノ演奏を楽しむ事できたらどうかと思うんだけどなあ」
菊池:「井之上さんのピアノね」
悠真:「真美奈さん、飛込みだけでなくピアノ演奏も出きるのね」
佳那子:「悠真さん、機会があれば真美奈姉ちゃんの家に泊まりに行ってピアノ演奏を聞かせてもらったらどうですか?私、真美奈姉ちゃんの家に泊まって演奏を楽しんだ事ありますよ」
悠真:「良いかも」
そこへ昼食を終えた友美と洋美がやって来て佳那子に声をかける。
友美:「佳那子、食事が終わったらバク転、バク宙、前宙の特訓よ」
洋美:「愛美、幸美もサポートしてよ」
佳那子:「私、先に行きます」
葵奈姉妹に手を引かれ佳那子は食堂から退室して行った。佳那子の姿が見えなくなると菊池、大水、悠真、赤木、土門、馬場崎、石澤は席を立つ。菊池と大水は職員室へ。悠真、赤木、土門、馬場崎、石澤は一年A組へと歩く。
教室に戻ると馬場崎が悠真に声をかける。
馬場崎:「悠真さん、思い出したくはないかも知れませんが誘拐された時はどうでしたか?」
悠真:「そおね、いきなり後ろから顔を隠されて何かに放り込まれたわ、気が付いたら監禁されていた部屋だったわ」
馬場崎:「そおだったんですか」
土門:「食事は1日おにぎり一個か二個でしたね、他に何か口に出来たのはありませんでしたか?」
悠真:「何か変な飲み物を飲まされた。ひょっとしたら、お酒だったかも」
石澤:「え〜っ!お酒!?」
悠真:「犯人には、お薬だと言われたの」
赤木:「悠真さん、お酒飲めるんだ」
悠真:「今は飲みたくないの。誘拐された時の事を思い出すので」
やがて昼休み終了のチャイムが鳴り愛美、幸美、佳那子が戻ってきた。そして放課後、悠真は愛美、幸美、佳那子に連れられプールへと歩く。悠真は競泳部門の部員達から水中ウォーキングの手ほどきを受け、葵奈姉妹達は飛び込み競技の練習にいそしむ。その頃グランドの陸上部では悠真の事で話題になっていた。
陸上部部員A:「ねぇ赤木、悠真さん体育の授業で倒れたんじゃない?」
赤木:「はい、二回目です。前回は整列集合した時で、今回は準備体操の後のランニングの時です。これじゃ陸上部に誘うのは」
陸上部部員B:「まだ半月も経ってないから、リハビリはこれからだと思うわ」
赤木:「大水先生も同じ事、言ってました。今は歩くのが限界で自転車に乗るのも四苦八苦だそうです」
陸上部部員C:「自転車に乗れないのなら単車も自動二輪も乗れないわ。やっぱり運転免許の事は悠真さんに対してタブーかしら?」
飛び込みプールの側では葵奈姉妹達が練習の合間に悠真の水中ウォーキングを見守っていた。やがて部活終了の時刻が近づいてきて部員達は練習を終え更衣室へと入っていく。佳那子と菊池はプールサイドに残っていた。
佳那子:「菊池先生は学校で寝泊まり考えた事ありますか?」
菊池:「そおね、やる事次第かしら、どうして?」
佳那子:「もっと菊池先生と一緒に過ごせる時間があれば、と思ったのですけどそうはいきませんね」
菊池:「小湊さん、もしかして私と一緒に寝泊まりしたいの?」
佳那子:「あっ・・・・」
菊池:「顔に現れているわよ。本当は私、夜中に一人で飛び込みをやろうかと考えているのよ」
佳那子:「だとしたら学校内に寝泊まりが出来る部屋か寮が必要ですね。校舎の七階、八階は地方出身者用の寮ですけど」
菊池:「教職員用の宿泊部屋は多くはないけどね」
佳那子:「私が学校に寝泊まりするのなら礼子姉ちゃんの部屋に泊めてもらうしかないのでしょうか」
菊池:「プールか体育館に寝泊まり可能な部屋があれば良いのだけど」
佳那子:「体育館の倉庫は空気は良くないみたいですし水泳部の部室は湿度が高過ぎるんじゃないかと」
菊池:「そおね、ゆっくり考える事にしましょう」
佳那子:「そおですね」
菊池:「さっ早く着替えて帰宅の準備に入りなさい」
菊池は教職員用の更衣室へ、佳那子は部室へと分かれる。部室には愛美と幸美が着替えを済ませ待っていた。
愛美:「佳那子、菊池先生と一緒の一時、楽しかった?」
佳那子:「うん、悠真さんは?」
幸美:「陸上部の人達と会話を楽しんでいるわ」
佳那子:「そおなの、私、着替えるわ」
佳那子は急いで着替えを済ませ部室を出て校門へと歩く。校門を出た所では悠真が赤木を始めとする陸上部部員と談笑を楽しんでいた。
陸上部部員A:「悠真さん、水泳の補習はどう?」
悠真:「水泳部競泳部門の人達がサポートしてくれるのでやりがいはあるわ」
陸上部部員B:「良かったわ。しかし、それにしても十二年間の監禁生活は辛かったですね。食生活はどうだったのですか?」
悠真:「食事は1日、パンか、おにぎり一個か二個、トイレは簡易トイレ、風呂はお湯で絞ったタオルで体をふくだけだった。それに何か変な飲み物を飲まされた」
赤木:「変な飲み物は、お酒だったみたいです」
陸上部部員C:「お酒、飲まされていたのね」
悠真:「ほぼ毎日でした。日によって日本酒だったり、ワインだったりしました」
陸上部部員D:「それで曜日感覚、日にち感覚が麻痺したんだ」
悠真:「気が付いたら何年間、監禁生活していたのか解らなくなっていた。でも由利、咲と一緒に首女中に行きたいという気持ちは崩れる事はなかったわ。かたとき足りとも」
陸上部部員A:「悠真さんって執念深いんだ」
陸上部部員B:「菊池先生、大水先生と一緒に首女中に通いたい、と言う想い、すざましいわ」
陸上部部員C:「悠真さん、今はまだ運動能力は完全に回復してないようだけど回復したら部活はどうするつもりですか?」
悠真:「そおね、まだ何とも言えないわ。監禁されていた間にやりたくてもやれなかった事をしたいのがあるわ」
陸上部部員D:「やりたくてもやれなかった事って何でしょうか?」
その時、菊池がやって来て談笑を楽しんでいる生徒達に促した。
「みんな、早く帰宅しなさい!遅くならないように」
菊池に促され首女中と首女高の生徒達は帰宅の徒につく。モノレールには首女中と首女高の生徒達でほぼ満員に近い状態であった。佳那子が降りると次の駅で葵奈姉妹が降りた。友美と洋美は先頭を歩き、やや離れた後ろを愛美と幸美が歩く。愛美はスマホを取り出しメールのやり取りをする。
幸美:「愛美お姉ちゃん、誰とメールなの?」
愛美:「遊園地で会った他校の中学生よ」
幸美:「ねぇ、今の日曜日だけど、グラドルの撮影がないのなら会う約束してみない?」
愛美:「そおね、良いかも」
幸美:「名前は誰と誰だったかな」
愛美:「えーっと、高牧由美子、高石麗美菜、榊野真由、他二人のわせて五人だったわ」
幸美:「五人は同じ中学の遊び仲間かな?学年はどうなんだろう?」
愛美:「愛美も気になる、メールで質問してみるわ」
愛美は質問内容を送信する。二人は返信を待つ。幸美は辺りを見回すが友美と洋美の姿は先に帰宅したためか姿が見えない。送信して五、六分ほどすると返信のメールがきた。二人はメールの内容をみる。
『愛美、幸美、メールありがとう。あの時はかっこ良かったよ。バク宙と連続前宙、上手でビックリした。私達の学年?みんな中二で遊び仲間なのよ。愛美と幸美は中一なんだね。私達の学校に愛美と幸美のような後輩がいたらいいなあ。私達の学校は市立だから男女共学なの。今度の日曜日に会いたいの?あの時のメンバーで?何して楽しむ?お互いの学校の制服&体操服の見せ合い?面白いね。聞いてみるわ。もし会った時はバク宙を見せてね。
BY 由美子』
愛美:「幸美、今度の日曜日、愛美楽しみ」
幸美:「幸美も楽しみ。友美姉ちゃんと洋美姉ちゃんに許可を取らないとね」
愛美:「そおだよね、あれ?友美姉ちゃんと洋美姉ちゃん、先に帰ったのかな?急いで帰らないと」
二人は急いで帰宅すべく走りだす。自宅に到着すると玄関に友美と洋美が靴を脱いで上がろうとしていた。
友美:「愛美、幸美、どうしたんだ急いで?」
愛美:「遅いと平手打ちが怖いから」
幸美:「菊池先生の方が気持ちいいし」
友美:「どうして私より菊池先生の方が気持ちいいのかしら?」
洋美:「不思議だわ」
四姉妹は上がると食事と入浴、宿題を済ませる。就寝前に愛美と幸美は友美と洋美に今度の日曜日の事を打ち明ける。
友美:「今度の日曜日、遊園地で知り合った他校の中学生に会いに行くの?」
洋美:「学年は?人数は?」
愛美:「五人とも女子。みんな洋美姉ちゃんと同じ二年生よ」
幸美:「部活は解らないけど遊び仲間みたい」
友美:「そおなの・・・・じゃあ洋美、お前も愛美、幸美と一緒に行け」
洋美:「友美姉ちゃんは、どうするの?」
友美:「別行動したいの。ところで悠斗さんとは最近どうなの?」
愛美:「どうなのって・・・」
友美:「洋美、愛美、幸美、お前ら悠斗さんの妹になりたいと口やかましく言ってたじゃん」
幸美:「そうだけど、友美姉ちゃん、悠斗さんに対し無断で幸美達に手を出さないでと言ったんじゃないの?」
友美:「そうだけど、私から悠斗さんにメールしても良いか?」
愛美:「仲よく交際を考えるなら望む所よ」
幸美:「幸美も同感。ゆうお兄ちゃんと友美姉ちゃんが結婚してくれたら洋美姉ちゃん、愛美お姉ちゃんと幸美は、ゆうお兄ちゃんの妹になれる。夢はかなう事になるの」
友美:「最初は私、洋美と愛美、幸美が悠斗さんの彼女の座を争っているのかと思ったわ。早とちりだったかしら」
洋美:「とにかく友美姉ちゃん、ゆうにいと上手くやって欲しい。ゆうにいと会うのが嫌なら、加代ねえはどうなっているのか・・・」
友美:「加代か、まだ解らないわ。最近どうしてるのか」
会話を終え四姉妹は就寝する。しかし、愛美と幸美は目を覚ましトイレに行ったついでに話し合いをする。
愛美:「幸美、今度の日曜日、楽しみだね」
幸美:「うん、愛美お姉ちゃん。幸美、楽しみ」
愛美:「当日、着て行く服装は紺ブルの体操服の上に首女中の制服を着るからね」
幸美:「洋美姉ちゃんにそれ伝えないといけないね」
愛美:「洋美姉ちゃんもついて来る事を由美子に伝えなくてはならないわ」
そこへ洋美が部屋から出てくる。
洋美:「愛美、幸美、いつも話し合っているわね。何を話してたの?」
愛美:「洋美姉ちゃん、今度の日曜日の事だけど、同日の服装は紺ブルの体操服の上に首女中の制服を着て欲しいの」
洋美:「いいけど、どうして?」
幸美:「当日は、お互いの学校の制服&体操服を見せ合いをしようと約束しているのよ」
洋美:「成る程、それじゃあ私の提案だけど当日に会う他校の中学生に首女中の体操服を着せてみるのはどうかと思うのだけど」
愛美:「首女中の体操服を?」
洋美:「紺ブルでも、赤ブルでも、ミドブルでもいいから」
幸美:「向こうは五人よ。五人分の・・・・」
愛美:「適合サイズも解らないし」
洋美:「じゃあメールで聞いてみたら。着ている体操服のサイズを」
愛美:「教えてくれるかな?遊園地で会った時、五人の体型は愛美と幸美よりも背が高かったみたいだし」
幸美:「洋美姉ちゃんとだったら大差はそんなにないのでは」
洋美:「私と大差はない?ちょっと待って、確か五人の中に一人、体がでかいのがいたような気がするわ」
愛美:「だとしたらサイズはかなり大きめかもね」
愛美:「それなら特注になりそうね」
洋美:「そうかもね。明日もあるし早く寝よう」
そして明くる朝の5月8日木曜日、毎日のように葵奈姉妹は当校のためモノレールに乗る。車内には菊池、悠真、美千代、香織の姿があった。他にも高等部の生徒、他の部活の部員の生徒の姿もある。次の駅で佳那子が乗車してきた。
佳那子:「おはようございます。菊池先生、今夜の学校での泊まり込み楽しみです」
菊池:「私も、あなたとの泊まり込みが楽しみよ」
友美:「佳那子、今夜、首女中に泊まるの?」
佳那子:「はい、昨夜、菊池先生からメールがあったので泊まる事にしたんです。両親と弟たちには泊まり込みで特別指導を受けると言ってきました」
洋美:「そおなんだ。家族には何て言われた?」
佳那子:「頑張っておいで、です」
愛美:「そおなんだ、今夜は楽しみだね」
菊池:「悠真には今日だけ宇都さん、工藤さんと一緒に帰ってもらうつもりよ」
幸美:「それなら幸美も悠真さんを送ろうかな」
愛美:「愛美も香織姉ちゃん、美千代姉ちゃんと一緒に悠真さんを送りたい。悠真さんがモノレールを降りる駅まで」
そして学校に到着すると愛美と幸美は教室で今度の日曜日に会う他校の中学生にメールを送信する。
幸美:「愛美お姉ちゃん、由美子にメール、何てしたの?」
愛美:「洋美姉ちゃんがついて来る事と首女中の体操服を着てみる?の事よ」
幸美:「待ち合わせの場所は何処になるの?」
愛美:「そおね、とりあえず遊園地のバスターミナルでどうかしら?」
幸美:「それで話をすすめてみようよ。洋美姉ちゃんにも言っておこうよ」
そして放課後、佳那子は菊池と落ち合う。
菊池:「小湊さん、今夜、泊まるのは教職員用の宿泊部屋よ。案内するから今日はここで着替えてプールへ行きましょ」
菊池と佳那子は水着に着替え、その上に体操服を着てプールへ移動する。プールに着くと葵奈姉妹や悠真が他の部員達と共に着替えを済ませていた。菊池は悠真の水中ウォーキングでの特訓の為に50㍍プールへ佳那子は飛び込みプールへと分かれる。そして練習が終わると佳那子と菊池はプールサイドに残り他の部員達は帰宅の為に着替えを始める。葵奈姉妹、悠真、美千代、香織達は校門を出てモノレールに乗る。友美と洋美は自宅の最寄り駅で降りるが愛美と幸美は香織、美千代と一緒に悠真を送る為に終着駅まで乗ることにした。終着駅に着くと愛美は悠真に声をかける。
愛美:「悠真さん、もし時間に余裕があるのなら商店街を歩きませんか?」
悠真:「ありがとう、お言葉に甘えてご一緒しますわ」
幸美:「良かったら香織姉ちゃん、美千代姉ちゃんもどう?」
香織:「お気持ちは嬉しいけど、母親が待っているので」
美千代:「私もお兄ちゃん達が待っているから、ごめんね」
愛美、幸美、悠真は美千代、香織と別れ商店街を歩き始める。
悠真:「愛美、幸美、一緒にいてくれて、ありがとう。思ってもいなかったわ。感無量よ」
愛美:「悠真さんは愛美達にとって同い年の同級生ですから。それに今夜は菊池先生、佳那子と一緒に学校に宿泊ですから」
幸美:「ところで悠真さん、小腹空きませんか?」
悠真:「そおね、空いてきたわ」
愛美:「何か食べません?」
悠真:「ファミレスがあれば良いのだけど」
幸美:「近くにありますよ、入りましょう」
三人はファミレスを見つけると入店する。入店すると店員が
「いらっしゃいませ、三名様ですか?」
と声をかけ三人は窓際のテーブル席に着く。三人はパスタとコーヒーのセットを注文する。
愛美:「悠真さん、お代は気にしないで下さい。愛美達は悠真さんを救出した賞金で稼いだんですから」
悠真:「そおなの?」
幸美:「はい、そうです。菊池先生と大水先生、池澤先生に言われたんです。賞金は悠真を精神的に支える為に使うように、と」
悠真:「さすがは私の同級生、由利、咲だわ、池澤先輩もだわ」
愛美:「悠真さん、私達のクラスメートと仲よく出来るようになってきましたね。思ったよりも早い感じで驚いてます」
悠真:「そうかしら?私、周りに気遣いばかりさせてるから」
幸美:「悠真さん、気にしないで」
やがて注文したパスタが来て三人はすすり食べる。食べ終えると会話は再開される。
愛美:「悠真さんはピアノ演奏を聴くのは好きですか?」
悠真:「嫌いじゃないわ。でも眠くなるからメチャメチャ好きにはなりにくいのがあるわ」
幸美:「水泳部飛び込み競技部門にピアノ演奏が得意な部員が三年生に二人いるんですよ」
悠真:「井之上さんと遠藤さんの事なのね」
愛美:「そうです。真美奈姉ちゃん、美幸姉ちゃんの事です。機会があれば自宅に行かせてもらったらどうでしょうか?愛美と幸美は真美奈姉ちゃんと美幸姉ちゃんの自宅に泊まった事あります」
やがて食後のコーヒーが来ると三人は飲み始めるが店内にOL風の女性が二人ほど入って来た。二人は悠真の姿を見るや否や三人に近づいてきた。二人のOLの内一人が悠真に話しかけてきた。話しかけてきたのは山地真紀だった。山地ともう一人のOLは三人のテーブル席の隣のテーブル席に座り注文する。
山地:「悠真、しばらくね。今日はクラスメートと一緒なのね」
悠真:「そおよ、今帰りなの」
もう一人のOL:「山地さん、もしかして十二年間も監禁されていた人なの?」
山地:「そおよ、紹介しておくわ、牟田内悠真、私の同級生なの」
もう一人のOL:「どうして制服を着ているのかしら?」
山地:「現役の中学生なのよ、24歳の中学一年生なのよ」
もう一人のOL:「にっ、24歳の中学一年生!?」
愛美:「悠真さん、この人達誰なんですか?知り合いですか?」
悠真:「一人は私の同級生、山地真紀なのよ」
幸美:「それじゃあ、菊池先生、大水先生とも同級生なんですね」
愛美:「あの山地さん、何をしているのですか?」
山地:「あなた達は悠真のクラスメートなのね」
愛美:「はい、悠真さんの同じ学級の葵奈愛美12歳です」
幸美:「同じく同じ学級の葵奈幸美12歳です」
山地:「二人とも顔が似ているね」
悠真:「二人は双子姉妹だから」
山地:「私達は自動車を販売している会社に勤めているの」
愛美:「そおなんだ」
山地:「ねぇ悠真、くどいけど車購入、何とか出来ない?」
悠真:「出来ない、免許取る予定ないから」
幸美:「車って免許いるんだ」
愛美:「山地さん、悠真さんは現役の中学生なんですよ。どうしてもだったら愛美達のような中学生が買って乗れる車を、用意できない?」
山地:「それは出来ないよ・・・・」
もう一人のOL:「無理としか言い様がないわ」
その時、愛美のスマホが電話の着信音が鳴った。かけてきたのは三矢悠斗である。愛美はすぐさま出て通話し外部スピーカーに切り替え幸美に聞こえるようにする。
愛美:「ゆうお兄ちゃん、久しぶり」
悠斗:「愛美、久しぶり。友美、洋美、幸美、牟田内さんは元気かな?」
愛美:「ゆうお兄ちゃん、実はその悠真さんが・・・」
悠斗:「えっ!?牟田内さんに、また何かあったの!?」
愛美:「実は自動車販売会社に勤めている悠真さんの同級生が悠真さんに車買って欲しいと言ってきているのよ」
悠斗:「くっ、車を買って欲しいって!?高い買い物じゃん。車庫証明、印鑑証明、住民票もいる。ガソリン代だけでなく自動車税、自賠責保険、任意保険にも金かかる。どんなタイプの車をすすめるかは知らないけど今の牟田内さんには無理、絶対に無理、絶対に断るべきだよ!冗談じゃない!」
愛美:「悠真さんは無理と言ってるんだけど・・・」
悠斗:「牟田内さんは自転車に乗っているのかな?」
愛美:「悠真さんは誘拐される前は乗っていたみたいだけど今は乗れないから処分をどうしようか悩んでいるみたい」
悠斗:「それなら自転車の下取りで買える車を探してくれ、と言うのも手だと思うよ。どうしても断れないのならね。言うまでもないけど車及び普通車を運転するには第一種普通免許がいるよ」
愛美:「自転車の下取り?」
悠斗:「そうだよ。支払いは自転車の下取りで済ませてくれ、と頼むしかないよ心を鬼にして。高額での下取りは期待出来ないけど第一、悠真さんは体が24歳であっても心は12歳の中学生でもあるからね。その点は、ゆめゆめ忘れたらだめだよ」
愛美:「うん。やっぱり車って高いんだよね?」
悠斗:「モノによるけど高いよ。どうしても買わなきゃ駄目なのなら自動車解体工場で探してもらうのも手だよ。安く済ませるのなら」
愛美:「うん、わかった、ありがとう。またこちらからメールもしくは電話するわ」
悠斗:「うん、ごめんね、また」
愛美は悠斗との通話を終え山地に向き直る。
愛美:「山地さん、聞いてのとおり悠真さんは自転車に乗る事もかなわないのよ。体は24歳であっても心は12歳の中学生なんです。不要になった自転車の下取りで買える車を出せません?自動車解体工場でも構いませんし、どれだけ安い車でも良いので」
幸美:「悠真さん、お金無いから。小中学生で乗れる車を自動車解体工場でお願いします」
山地:「出来ないわよ。やっぱり駄目なんだ。今の通話相手はお兄さん?」
愛美:「お姉ちゃんの彼氏です。私達、遅くなるとまずいので、悠真さん出ましょう」
愛美、幸美、悠真は席を立つ。愛美と幸美が支払い勘定を済ませ三人は店を出る。
愛美:「悠真さん、愛美、幸美は、これ以上遅くなるといけないので」
悠真:「わかったわ、ここから一人で帰れるわ。ありがとう、ご馳走様でした」
幸美:「悠真さん、気をつけて帰って下さいね、また明日」
悠真は電車に乗り、愛美と幸美は再びモノレールに乗り帰宅の徒に着く。車内で愛美は幸美と共に日曜日に会う中学生とのメールに腐心する。自宅の最寄り駅『榊台』で降りると雨が降っていた。改札を出て雨宿りをしようかと考えあぐねたが愛美は幸美に提案する。
愛美:「ねぇ幸美、雨宿りを兼ねて本屋に寄っていかない?」
幸美:「良いけど、どうしてなの?愛美お姉ちゃん」
愛美:「車と運転免許に関する本を見てみたいのよ。山地さんの影響で」
幸美:「良いね。幸美も山地さんがきっかけで車と運転免許の事、気になった」
二人は自動車情報誌と普通免許に関する本を探して購入することにした。支払いを済ませて本屋を後にして歩きだす。少し歩くと友美と洋美に会った。
友美:「愛美、幸美、帰ってきたんだ」
洋美:「悠真さん送ってきたんだ」
愛美:「送ってきたよ」
幸美:「小腹空いたから悠真さんと一緒に食事した」
友美:「そおなの?私も小腹空いたから洋美と一緒にファーストフードで食べていたよ」
四姉妹が話し合っているうちに雨は小降りになり止む。四人は自宅へと急いだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時間はややさかのぼる。他の部員、生徒達が帰宅した後、佳那子と菊池はプールサイドで話し合いを始めた。
菊池:「小湊さん、二人きりになれたね」
佳那子:「はい、菊池先生。お揃いの水着で同性デート感無量です」
菊池:「あなたと同性デートとなると中学時代、高校時代に戻りたくなるわ」
佳那子:「菊池先生のスクール水着姿、プロモーションが素敵でセクシーです。私、グラドルやろうかと思っているので、あこがれてます」
菊池:「そおなの?小湊さんならグラドルで通用すると思うよ」
佳那子:「友美姉ちゃんに誘われてグラドルグループ『葵奈姉妹』のメンバーなんです」
菊池:「そおなの!?撮影するカメラマンはどんな人かしら?」
佳那子:「長野明子さんなんですけど菊池先生、知ってますか?首女中、首女高、首女大の卒業生なんです」
菊池:「ああ、長野さんね。私と咲、悠真より二つ年上の先輩だから」
佳那子:「首女中と首女高のプールで葵奈姉妹のグラドル撮影はどうかと思うのがあります」
菊池:「プールでグラドル撮影ね」
佳那子:「そのノリで水泳部も写真集でグラドルデビューといけたらどうかと・・・・」
菊池:「だとしたら、この学校で合宿する時にグラドルの撮影ね。今よりも厳しく鍛えてプロモーションを美しくしなくてはね」
佳那子:「厳しく鍛える考え、菊池先生らしいですわ」
菊池:「そおかしら?小湊さん食堂へ行って夕食をしましょう」
菊池と佳那子は水着の上に体操服を着て食堂で食事を取る。食堂では校舎の寮で寮生活をしている生徒達も食事していた。その中には礼子の姿もあった。
礼子:「あっ佳那子、今日は家に帰らないの?」
佳那子:「帰らないです、菊池先生と一緒に泊まりだから」
礼子:「そおなんだ、菊池先生と一緒なんだね」
佳那子:「機会があれば礼子姉ちゃんの部屋で一緒に寝泊まりしてみたいです」
菊池:「今夜は小湊さんと一緒に過ごすつもりなのよ。良かったら津軽さんもどう?」
礼子:「今夜は私、青森の実家に住んでいる母と話したいので、ごめんなさい。失礼します」
礼子は寮に戻るべく食堂から出ていく。礼子の姿が見えなくなると佳那子と菊池は立ち外へと歩く。
菊池:「小湊さん、プールへ戻りましょう」
佳那子:「はい、食後の運動で、ひと泳ぎ、ひと飛び込みしたいです」
二人はプールに戻り水着になって飛び込みと泳ぎ、談笑を楽しむ。
菊池:「小湊さん、一番気持ちいいのはなあに?」
佳那子:「飛び込みの入水時と菊池先生の平手打ちと優しさですね」
菊池:「私の平手打ちって、そんなに気持ちいいの?」
佳那子:「はい、気持ちいいです。菊池先生の虜になって溺れてるので」
菊池:「そう言われると私も、あなたの虜になって溺れそうだわ」
佳那子:「私、この学校に入って葵奈姉妹、飛び込み競技、グラドル活動、そして菊池先生に出会えたから良かったと思ってます」
菊池:「そおなの?実は私、びくびくしていたのよ」
佳那子:「平手打ちの事ですか?」
菊池:「そおなのよ」
佳那子:「私、友美姉ちゃん、洋美姉ちゃん、菊池先生のお陰で体罰に対して恐怖心を感じなくなりました」
菊池:「そおなの?小湊さん、何か強くたくましくなったみたいだわ。さあ、ひと飛び込みとひと泳ぎしましょ」
泳ぎを終えると二人は宿泊部屋へ戻って制服に着替える。
菊池:「小湊さん、次は校舎の屋上に行ってみない?」
佳那子:「はい。濡れた水着は脱水機で脱水して干しておきたいです。それから屋上に行きましょう」
二人は校舎のエレベーターに乗り八階の上の屋上へと上がる。屋上では何人かの生徒が夜景を眺めている。
佳那子:「ここから眺める夜景は良いですよ。私の自宅マンションから見る夜景も良いですけど」
菊池:「そおなの?小湊さんと一緒に眺めるの夜景も格別だわ」
佳那子:「でも、仮に彼氏ができても一緒には楽しめないですね。ここでは」
菊池:「小湊さん、もしかして彼氏を探しているの?」
佳那子:「いえ、友美姉ちゃんから『私の弟と付き合わない?』と言われているんです。でも弟さんは小学五年生で私の弟は小学四年生と小学一年生の二人なんです」
菊池:「そおなの?」
佳那子:「はい、仮に結婚するとしたら最低でも八年以上は菊池先生との同性恋愛で我慢しなくてはならないでしょう。それに菊池先生、あとどれぐらい首女中と首女高の教師でいるのか解らないですし、いささか気になります」
菊池:「この先何年間、この学校にいるかは解らないけど葵奈姉妹と小湊さん、それに悠真が高等部を卒業するまでは、この学校の教師でいたいと思っているのよ。あと最低でも六年。その頃は私、アラサーだわ」
菊池と佳那子はお互いに寄り添っていた。そこへ屋上にいる生徒達が二人に声をかけてきた。
寮生活の生徒A:「ねぇ、あなた達も夜景見ているのね」
寮生活の生徒B:「何年生と何年生なの?」
菊池:「あら、私の事かしら?」
寮生活の生徒A:「あっ!きっ菊池先生!」
寮生活の生徒B:「ビックリした〜。高等部と中等部の二人組かと思った」
佳那子:「私は背が低いから中等部一年です」
寮生活の生徒A:「菊池先生に中等部一年A組の小湊さんね」
寮生活の生徒B:「制服姿の菊池先生、高等部の生徒と間違えてしまいます。肝を潰しましたわ」
菊池:「あら、そおかしら?」
寮生活の生徒B:「だって菊池先生、首女中と首女高で一番厳しくて怖いですから・・・・失禁しそうになりました」
菊池:「やはり、私ってそおかしら?ストレスたまりすぎかしら?」
寮生活の生徒A:「あれ?小湊さんって寮生活だったかしら?」
佳那子:「私は自宅から通学しているんですけど、今夜は菊池先生と一緒に寝泊まりなんです」
寮生活の生徒A:「自宅はどの辺りなの?」
佳那子:「モノレールに乗って三つ目の駅から徒歩で十分の所です」
寮生活の生徒A:「私は千葉県の房総半島の最南端よ」
寮生活の生徒B:「私は兵庫県芦屋市の出身なのよ」
菊池:「そう言えば兵庫県芦屋市は資産家の御屋敷が多いと聞いた事あるわ」
佳那子:「資産家の御屋敷って真美奈姉ちゃんと美幸姉ちゃんみたいな家庭ですね。私、真美奈姉ちゃんの家に宿泊させてもらった事があります。友美姉ちゃん洋美姉ちゃんの家も宿泊させてもらいました」
菊池:「小湊さんって色々と宿泊させてもらっているのね。確かに私が担任として受け持っている井之上さんの自宅は飛び込みプール付きの御屋敷だわ」
佳那子:「でも、この学校のプールに比べると規模は小さいので水泳部の合宿には適さないと思います」
寮生活の生徒A:「ところで小湊さんの学級に牟田内悠真さんがいるよね?」
佳那子:「はい、悠真さんの事ですね」
寮生活の生徒A:「牟田内さん、どうですか?仲良くやってる?」
佳那子:「はい、勿論です。毎日、放課後の水泳の補習で水中ウォーキングを頑張っています」
寮生活の生徒B:「十二年間の監禁生活は辛かったよね。思ったよりも早く立ち直ってるみたいで良かったわ」
その時、雨が降って来て屋上の生徒達は一斉に校舎の中へ入っていく。続くように菊池と佳那子も校舎の中へ急ぐ。
佳那子:「雨が降って来ましたね」
菊池:「予報では通り雨があると聞いていたわ。止んでくれたら良いのだけど」
佳那子:「止むのを祈りましょう。私、トイレに行きたいです」
菊池:「私も行くわ」
二人は八階のトイレへと歩く。トイレに礼子の姿があった。
礼子:「あっ菊池先生に佳那子、トイレね」
佳那子:「そおよ」
菊池:「私もよ」
二人は用便を済ませるとトイレを出て礼子と談笑する。
礼子:「佳那子、菊池先生とのデート、楽しんでいるかい?」
佳那子:「はい、楽しんでいます」
菊池:「私だって小湊さんとのデート、気持ちが癒されそうだわ。ストレスも払拭されそうだわ」
礼子:「佳那子は体育会系色よりも癒し系色が強いですね」
佳那子:「そうでしょうか?」
菊池:「そうだとしたら部員獲得は運動能力、競技能力よりも癒し系も重視した方が良いかしら?」
佳那子:「そおかも知れませね、RPGの世界でもパーティーを組む時、勇者と戦士もしくは武闘家以外に僧侶系が必要であるのと同じかも知れませんね」
礼子:「それってドラクエシリーズや、ウィザードリィーの世界じゃありません?」
菊池:「そうかしら?よく解らないけど。ところで今年の夏の合宿どうしようか考えなくてはならないわね」
礼子:「去年は学校に泊まっての合宿でしたね。その時は他の女子校の水泳部との合同合宿でしたわ」
佳那子:「今年の合宿も、この学校でやるのでしょうか?気になります」
菊池:「小湊さんは合宿、初体験になりそうね」
佳那子:「はい、愛美と幸美も初体験になりそうです」
菊池:「最近、他の学校の水泳部から、この学校のプールで一緒に練習させて欲しいと言う声が相次いで寄せられているのよ」
佳那子と礼子:「えっ!?そおなんですか!?」
菊池:「そおなのよ。一日に少なくても二、三件。多い時は十件近くも来るのよ」
礼子:「それなら使用料を高めに請求して応じた学校なら快諾すれば良いのではありません?」
菊池:「そおね、確かに生徒の保護者、及び親権者から徴収する授業料だけでは、この学校の運営は厳しいわ。この学校のプールの建築費は飛び込みプールもあるから他の学校のプールに比べると非常に高いから使用料徴収は妥当かもね、校長先生、教頭先生と協議しなくてはならないわ」
三人が話し合っているうちに雨は小降りになってきた。
佳那子:「雨、小降りになってきましたね」
菊池:「そろそろ、私と小湊さんは宿泊部屋で寝ようかと思うの。津軽さん、おやすみなさい」
礼子:「はい、おやすみ」
菊池と佳那子は津軽に休みを告げ宿泊部屋へと戻った。戻ると佳那子は充電していたスマホのチェックをする。
佳那子:「あっ、愛美からメールが入っています。悠真さんの事で」
菊池:「悠真の事で?内容はどんなの?」
佳那子はメールの内容を菊池に見せる。
『佳那子、菊池先生との学校内でのデート、楽しんでいるかい?愛美は幸美と悠真さんと一緒に食事した。愛美達がおごってあげたよ。食事してたら悠真さんの同級生の山地さんに会って悠真さんに車の購入、何とかならない?と頼んできた。愛美と幸美は山地さんに、悠真さんは体が24歳であっても心は私達と同じ中学生なんですよ。どうしてもなら中学生でも乗れる車を手配して欲しい。購入代金の支払いは悠真さんの不要になって処分に困っている自転車の下取りで済むようにして欲しい、と言って断ったよ。』
文面を菊池に見せた佳那子は口を開く。
佳那子:「愛美と幸美、なかなかの弁舌ぶりですね」
菊池:「ヤマキ、営業に四苦八苦、悪戦苦闘しているみたいね。やっぱり成績上がってないのかな?」
佳那子:「上がってないとはいえ中学生に対して『車買って』は問題外じゃありません?」
菊池:「確かに。最初は悠真の自宅にきたけどね」
佳那子:「山地さんってどんな人ですか?私は強引で、しつこい印象を受けました」
菊池:「私と咲、悠真の同級生で首女大を卒業した後、自動車販売会社に就職したのよ」
佳那子:「車の値段ってどれぐらいするのでしょうか?」
菊池:「咲が乗っている軽自動車だとヌキホン(税抜き車両本体価格)で二百万、高級車だと数百万から数千万円ね」
佳那子:「そんなに!?もっと安いのはないでしょうかねぇ」
菊池:「聞くところによるとインド製の車にヌキホンで十万ルピー、日本円で三十万足らずのがあるらしいけど・・・」
佳那子:「三十万でも高いですよ、私にとって」
菊池:「今の悠真に車、及び運転免許の事は年齢よりもタブーにしなくては。そろそろ寝ましょう。明日は五時に起きてプールで朝のひと飛び込みとひと泳ぎといきたいの。小湊さんも付き合ってくれない?」
佳那子:「はい、喜んで。今夜は菊池先生と抱き合って寝たいです」
菊池:「嬉しいわ、小湊さん。干している水着、どれぐらい乾いてる?」
佳那子:「まだまだ湿っている感じです」
菊池:「部屋干しでクーラーで除湿しよう」
菊池が布団を敷くと二人は消灯して就寝する。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
葵奈姉妹の部屋では就寝前の会話は悠真の事で盛り上がっていた。
友美:「悠真さんと食事したんだ」
愛美:「したよ」
洋美:「悠真さん、満足してたのね」
幸美:「でも食事中に、菊池先生と大水先生、それに悠真さんの同級生である山地さんに会ったのよ」
友美:「山地さんってどんな人?」
愛美:「自動車販売会社に勤める人なの」
友美:「その山地さんと何かあったの?」
愛美は友美と洋美に出来事を話す。
友美:「悠真さんに、車買って、か。高い代物だね」
洋美:「確かに悠真さんが車で私達と佳那子、美千代、宇都先輩を自宅から学校まで送迎してくれると有難いけど、その気になれないのなら無理よね」
友美:「それだと八人乗りか、九人乗りの車でないと駄目だわ。そろそろ寝よう」
四姉妹は就寝する。夜中に愛美と幸美は目を覚ましトイレに行って用便のついでに話し合う。
愛美:「ねぇ幸美、今日、本屋で買った自動車情報誌と運転免許の本、明日の休み時間でも見ようよ」
幸美:「うん、ところで愛美お姉ちゃん、今度の日曜日に会う由美子、麗美菜、真由の事だけど」
愛美:「そうそう、首女中の体操服はどうする?」
幸美:「そおね一応、紺ブルは履いていって他の色のは通学リュックに入れていこうと思うよ」
愛美:「問題は向こうがどういうかだよね。由美子達には洋美姉ちゃんも、ついてくるとメールで伝えたわ」
そこへ洋美が部屋から出て来た。
洋美:「愛美、幸美、何を話し合っていたの?」
愛美:「今度の日曜日の事なの」
幸美:「洋美姉ちゃんも一緒だからメールで伝えたよ」
洋美:「向こうは皆、私と同じ二年生だからね。待ち合わせ場所はどうなの?」
愛美:「遊園地のバスターミナルに午前10時を前提に話をすすめているけど」
洋美:「遊園地の開園時刻だな。明日もあるから早く寝よう」
5月9日金曜日になった。葵奈姉妹は毎日のようにモノレールで通学する。車内には香織、美千代、悠真の姿はあるが菊池の姿はない。次の駅では佳那子は現れない。モノレールを降りて首女中と首女高へ向かうと校門の側に菊池が制服姿で立っているのだった。
香織:「おはようございます、菊池先生。今朝は早いですね」
菊池:「おはよう、昨夜は小湊さんと宿泊だったからよ」
美千代、悠真、葵奈姉妹も挨拶して学校に入る。愛美と幸美、悠真が教室に入ると佳那子が挨拶してきた。
佳那子:「悠真さん、愛美、幸美おはよう」
愛美:「おはよう佳那子、昨夜の菊池先生とのデート、楽しかった?」
佳那子:「うん、今朝は五時に平手打ちで叩き起こされてプールで朝のひと飛び込みとひと泳ぎに付き合わされたよ。でも気持ち良かったわ」
幸美:「それで佳那子、さえてるんだ」
悠真:「愛美、幸美、昨日はご馳走様でした。ありがとう」
愛美と幸美:「いえ、どういたしまして」
佳那子:「悠真さん、昨日は山地さんに会ったのね」
悠真:「そおよ」
佳那子:「私にとっては強引で、しつこい印象でしたわ」
愛美:「愛美、会いました」
幸美:「幸美も一緒だった」
やがてホームルームを経て一時間目の授業が始待った。そして休み時間、愛美と幸美は昨日購入した自動車情報誌を広げ見いる。その二人に赤木、馬場崎らが声をかける。
赤木:「愛美、幸美、何見てるの?」
愛美:「自動車情報誌なの」
幸美:「昨日、本屋で買ったのよ」
馬場崎:「じっ、自動車情報誌!?どうして!?」
土門:「私達の年頃では手にかけるものではないじゃん」
愛美:「車って色々、種類があるし値段も異なるから気になるのよ」
石澤:「でも私達は手を出せないわ」
愛美:「多人数で楽しむのなら多く乗れるのが一番なんだけど悠真さんに話すわけにはいかないから愛美と幸美の二人で調べてみたくなったのよ」
赤木:「悠真さんは今、佳那子としゃべっているわ」
昼休み、放課後を経て部活終了後、愛美と幸美は校門の外で自動車情報誌と運転免許に関する本を見る。そこへ、高等部の部員が声をかける。
高等部部員A:「愛美ちゃん、幸美ちゃん何見てるの?」
愛美と幸美:「はっ、はい?」
高等部部員B:「自動車情報誌と運転免許の本じゃん。何故?」
愛美:「気になる事があるので」
幸美:「知りたくなったのよ」
高等部部員C:「もしかして将来、免許を取る為の予習なの?」
そこへ菊池が現れ談笑している生徒達に帰宅を促す。首女中と首女高の生徒達は下校するが愛美と幸美を見て菊池は二人に声をかける。
菊池:「あら、二人とも何見ているの?」
愛美と幸美:「自動車情報誌と運転免許の本なの」
菊池:「どうしてなの?取れる年齢じゃないのに」
愛美:「菊池先生、大水先生、悠真さんの同級生に山地さんと言う自動車販売会社に勤めている人いますよね」
菊池:「いるわ。ヤマキに会ったの?」
愛美:「はい、会いました。それで車の事が気になり調べる為に見ていたんです」
菊池:「そおなの?」
幸美:「はい。値段の事と免許の事が気になりましたので」
菊池:「今は時期尚早、早すぎるんじゃない?」
幸美:「確かに早いかも知れませんが山地さんが悠真さんに車の購入をお願いしていたのを見て気になり調べていたんです」
菊池:「成る程、ヤマキは悠真が私と同い年と言う事しか頭にないようだったかもしれないわ。監禁生活では運転免許の取得は不可能なのに。さあ、遅くなるから帰宅しなさい」
葵奈姉妹はもちろんの事、佳那子、美千代、香織、菊池も悠真と帰宅すべくモノレールに乗る。その日の晩、葵奈姉妹は部屋で就寝前の会話に自動車情報誌と運転免許の本を話題にした。
友美:「自動車情報誌か、こう見てると車って色々あるし値段も様々だね」
洋美:「葵奈家の車は大きいワゴン車だからね」
愛美:「山地さんは悠真さんにどんな車を買うように言ったのかな?」
幸美:「それが謎だわ。運転免許の本だって色々難しいわ」
友美:「車の免許は18歳、自動二輪の小型と中型は16歳とあるわ」
洋美:「そう言えば今月の15日木曜日は友美姉ちゃんの15回目の誕生日よね」
友美:「15歳になるのか、あと一年で原付と自動二輪の免許が取れるようになるね」
洋美:「友美姉ちゃん、自動二輪の免許、取る?来年の話だけど」
友美:「どうしようかな?」
愛美:「愛美は16歳なったら自動二輪の免許、取りたい」
幸美:「幸美も16歳なったら取りたい。双子のライダーとして」
会話を終えると四姉妹は就寝する。そして日にちは5月10日土曜日と過ぎ、5月11日の日曜日となった。友美は洋美と愛美、幸美を平手打ちでたたき起こす。乾いた音が三発、姉妹の部屋に炸裂し響きわたる。
パーン!パーン!パーン!
友美:「洋美!愛美!幸美!起きろ!今日はお前ら会う約束事があるだろ!」
洋美:「そおだったね、愛美!幸美!着替えるよ!」
愛美と幸美:「は〜い」
洋美、愛美、幸美はパジャマを脱いで紺ブルの体操服に着用し、その上に首女中の制服を着る。朝食と歯磨きを済ませ通学リュックを背負い出発する。玄関で友美は母親の育美と共に見送る。
育美:「洋美、愛美、幸美いってらっしゃい」
友美:「洋美、愛美、幸美、気をつけて」
育美:「友美、あんたは行かないのね」
友美:「私は一人で休みたい。三人の妹の世話は疲れるし、ストレスがすぐたまるよ」
育美:「歩美の気持ちも解るでしょ。歩美は四人の妹の世話をしていたからね」
友美:「私、今は佳那子が加わって四人同然よ。もし五人になったとしたら」
育美:「ああ、小湊さんとこの佳那子ちゃんね」
友美:「お姉ちゃん、お腹にいる二人目の名前は、どうするのかな?」
育美:「何だったら今日、歩美と依沙美を呼んで出前を取ろうかと思うけど、どうかしら?」
友美:「良いね、私それまで部屋で寝てる」
友美は部屋に戻って再び就寝し、育美は台所で歩美にメールを打つ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
自宅を出発した洋美、愛美、幸美の三姉妹はモノレールに乗り首女中とは反対方向の終着駅で遊園地前のバスターミナル行きのバスに乗った。バスを降りると三姉妹は周辺を見回す。愛美が到着のメールを送る。しばらくして愛美のスマホに電話の着信アラームが鳴る。
愛美:「あっ、由美子から電話だわ。もしもし」
由美子:「もしもし、おはよう愛美、着いたの?」
愛美:「うん、着いたよ。そちらはどうなの?みんな集まった?」
由美子:「私を入れて五人、集まったよ」
愛美:「愛美は幸美とお姉ちゃんの三人でバスターミナルにいるの」
由美子:「私達も今バスターミナルに着いたの。手を上げて合図して」
そして三姉妹は他校の中学生五人と合流した。
愛美:「由美子、麗美菜、真由、みんな、おはよう」
幸美:「おはよう、今日は一学年年上の、お姉ちゃんが来たので紹介するわ。洋美お姉ちゃんよ」
洋美:「おはよう、今日はみんな集まってありがとう。愛美と幸美の姉、洋美です。二年生です。よろしく」
由美子:「由美子です。洋美って私達と同じ二年生なんだ。愛美、幸美と顔立ちが似てる。やっぱり姉妹なんだね」
洋美:「実は私、三女だから高二と中三の姉がいるのよ」
麗美菜:「私は麗美菜。洋美って五人姉妹なんだ」
洋美:「それに小五の弟が一人だから六人姉弟なのよ」
真由:「私は真由。六人姉弟とは子沢山じゃない?」
洋美:「高二の姉は高校生主婦で子供がいるのよ。私と愛美、幸美にとっては姪。私達、小学生で叔母さんになったのよ」
由美子:「お姉さんの子供は女の子なのね。あっ、そうそう、あと二人紹介するわ。雅と若菜よ」
雅:「秋浦雅です。洋美、始めまして。愛美、幸美、久しぶり」
若菜:「中井若菜です。洋美、愛美、幸美これからも仲良くね」
洋美:「あなた達の制服と体操服なんだけど、由美子、麗美菜、真由は制服。雅と若菜は体操服なのね」
愛美:「学校の名前は何て言うの?愛美達の学校は首都女子大学附属女子中学校で首女中なのよ」
由美子:「私達の学校は市立旭中学校だから旭中なのよ」
幸美:「旭中の制服は紺のブレザーにグレーのスカートなんだね」
麗美菜:「そうよ。洋美、愛美、幸美の制服は紺のセーラーブレザーに青のチェック柄のスカートなんだね」
洋美:「そおよ。他にブレザーやセーラー服もあるし、色も赤色や緑色も紫色も茶色もあるのよ。好きな型や好きな色を選べるんだ。旭中の体操服は今どきの型であるハーフジャージだよね」
真由:「首女中の体操は?」
洋美:「制服の下に着こんでいるの。何だったらスカートをめくって中のぞいていいよ」
雅:「どれどれ、えっ、マジ?」
洋美:「紺ブルよ」
雅:「一瞬、水着か紺色のパンツかと思った」
愛美:「愛美もスカートの中は紺ブル、紺色のブルマだよ」
若菜:「そおなんだ」
幸美:「幸美も紺ブルよ。間違っても短パン、スパッツは履く気にはなれないわ」
由美子:「そおなんだね、信じられないわ」
麗美菜:「ねぇ、これから、どうする?遊園地に入らない?」
洋美:「良いね」
愛美:「入ろうよ。みんな遊園地、好きなんだね」
幸美:「先週入った時と同じイベントがあったら参加してみたい」
真由:「じゃ入ろう」
八人は遊園地に入園しイベントステージへと足を運ぶ。
洋美:「今日もイベントステージでのイベント、先週と同じみたい」
愛美:「愛美、幸美と一緒に申し込んで来る」
幸美:「愛美お姉ちゃん、申し込みに行こう」
愛美と幸美はイベント出場の為にイベント出場の申し込みブースへと急ぎ、洋美は場所確保の為に旭中の五人と共に観覧席に移動する。
洋美:「みんなは遊園地好きで集まったの?」
由美子:「そうじゃないけど自然に集まりが出来て遊園地で遊ぶようになったのよ」
洋美:「部活はどうなの?私は水泳部の飛び込み競技部門なのよ」
由美子:「洋美って飛び込み競技やるんだね。私は体操部なの」
麗美菜:「私は陸上部。飛び込み競技って板飛び込みと高飛び込みがあるんだね」
真由:「私はダンス部。洋美は板飛び込みと高飛び込み、どっちが好き?」
洋美:「基本的には両方だけど、強いて言うのなら高飛び込みかな」
雅:「高飛び込みって10メートルの高さから飛び込むんじゃない?私は怖くて無理。部活は帰宅部。買い食いが多いのよ」
若菜:「私はテニス部。私は高所恐怖症だから無理。ところで洋美、今朝はどうやって起きた?」
洋美:「私は中三の姉に平手打ちで叩き起こされたのよ、今日会う約束だろ、と怒鳴られた上で愛美も幸美も」
由美子:「ひっ、平手打ちで!?」
洋美:「そおなのよ私のお姉ちゃん、怒るとすぐ平手打ちだから怖いよ。まだヒリヒリして痛い〜」
愛美:「愛美も痛い」
幸美:「幸美も痛い」
麗美菜:「三人とも左頬にアザが出来ているわ」
ステージイベントが始めるまで六人は談笑を楽しむ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
葵奈家の台所では育美、歩美、友美、育美の夫で葵奈姉妹の父親、歩美の長女の依沙美が食事を楽しんでいた。
依沙美:「依沙美に妹が出来ているから産まれてくるのが楽しみ」
育美の夫:「依沙美も、もうすぐお姉ちゃんだね」
依沙美:「じいじ、嬉しそうじゃん」
育美:「孫が二人になるからね」
依沙美:「それにしても友美おばちゃん、洋美おばちゃん、愛美おばちゃん、幸美おばちゃんは子供、産まないのかな?」
歩美:「依沙美、どうしてなの?」
依沙美:「依沙美、妹だけでなく従兄弟も欲しい」
友美:「お姉ちゃん、二人目の名前、決まった?」
歩美:「主人(友美、洋美、愛美、幸美、勝幸からみると義兄)と話し合って決めたの。希沙美に決めたわ。三女が産まれたら希沙志、長男が産まれたら希沙也にしようかと思っているのよ」
友美:「お姉ちゃん、四人も産むの?」
歩美:「解らないわ」
友美:「私、お姉ちゃんと二人で近くを散歩したい」
歩美:「私だって友美と二人きりになりたいわ」
育美:「行っておいで」
育美の夫:「気をつけてな」
依沙美:「ママ、友美おばちゃん気をつけて」
歩美と友美は家を出て歩きだした。
歩美:「友美と二人で歩くの久しぶりね」
友美:「そおよね。お姉ちゃん、聞きたいんだけと」
歩美:「なあに?友美、どうしたの?」
友美:「お姉ちゃんは、お姉ちゃんを辞めたいと思った事ある?」
歩美:「お姉ちゃんを辞めたい?」
友美:「今日は洋美、愛美、幸美は出掛けているの。妹から解放してくれたら、と思うのよ」
歩美:「妹達の世話はストレスたまるね。実は私も同じ事あるわよ。だって私、長女で第一子だからお兄ちゃんもお姉ちゃんもいないのよ」
友美:「やっぱり、そおなのね」
歩美:「友美、今日はあんた、妹でいたら良いのよ。辞めたくても辞められないのは宿命の枠にはめられているとしか言いようがないかもね」
友美:「お、お姉ちゃん・・・」
歩美:「ところで最近、悠斗さんとは、どうなの?」
友美:「洋美、愛美、幸美は悠斗さんの妹になりたい、と言っているけど、私は何て言えば・・・」
歩美:「迷いがあるのね友美。本気で悠斗さんと付き合うのかどうかは知らないけど、洋美、愛美、幸美の世話で疲れている事を悠斗さんに伝えるのも手だと思うわ。もし付き合うとしたら友美が悠斗さんと二人三脚で洋美、愛美、幸美、勝幸の世話をするのも、どうかと思うのだけど」
気がつくと二人は近くの児童公園に来ていた。公園には親子連れの姿がある。二人は公園のベンチに腰掛け会話を続ける。
友美:「二人三脚で洋美、愛美、幸美の世話なのね。悠斗さんとは愛美と幸美が一番最初に出会って、次に洋美が出会い、そして私が出会ったわ」
歩美:「他の親子連れを見ると高校生であるとはいえ私も母親であるし、友美もいずれは母親になるのかと思わずにはいられないわ」
友美:「私が子供を産むと、お姉ちゃんは伯母さんになるよね」
歩美:「そういう事になるよね」
友美:「お姉ちゃんは伯母さんになることに抵抗はないの?」
歩美:「私は子持ちで、もうすぐ二人目が産まれるから抵抗は微塵もないわ」
友美:「今は依沙美、まだ二歳だけど中学は何処へ行かせるつもり?お姉ちゃんが通っていた市立榊台中学?それとも私と洋美、愛美、幸美が通っている首女中?」
歩美:「まだ何とも言えないわ。私の予想では私が通っていた市立榊台中学を選択しそうな気がするの。依沙美はその学校の保健室で産まれたらから」
友美:「依沙美って話し方、他の二歳児に比べると早い。マセてるみたい」
歩美:「そおかしら、そろそろ戻ろうよ。依沙美も待っているから。それに今日は母の日じゃん」
友美:「そおね、お姉ちゃん」
二人は公園を後にして自宅へと戻るべく歩きだした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
遊園地のイベントステージでイベントが開始された。洋美は旭中の五人と共に観客席でイベントの様子を見守る。観客席はかなりの人で埋まっている。愛美と幸美は参加者専用のコーナーで準備を整え他の参加者と共に出番を、待っていた。ある一人が愛美と幸美に声をかける。二人に声をかけてきたのはイベントに参加する子供の母親である。
母親:「あら、あなた達、着ているのは、もしかしてコスプレ衣裳?それとも学校の体操服?」
愛美:「学校の体操服です」
母親:「今時、珍しいわね」
幸美:「そおですか?私達の学校は制服、体操服、水着を指定された種類と色の中から好きなものを選択できるんです」
母親:「そおなの!?」
母親が驚いたのは愛美と幸美が紺ブルの体操服を来ていたからだった。イベント開始までの間に制服を脱ぎ、下に来ていた体操服にかえていたのである。イベントは、とあるチアーリーディングチームによるチアダンスから始まった。チアーリーディングチームのメンバーは小学生から大学まで十数人の女子で構成されている。チアーリーディングチームを目当てにしているためであるのか観客席の最前列近くにはカメラを手にした人達が多くいるのだった。カメラを手にした人達は次々とシャッターを切る。そして愛美と幸美の出番となり二人は司会者の声でステージの中央へ進む。
司会者:「はい、次は双子のお姉ちゃん達ですよ」
観客席にいる旭中の五人が声をかける。
「愛美!幸美!」
声の主は由美子、麗美菜、真由、雅、若菜である。愛美と幸美はお互いに顔を合わせバク転、バク宙を披露した。たちまち会場内は歓声とどよめきが広がる。同時にカメラを手にした人達は次々とシャッターを切っていく。チアダンスを披露したチアーリーディングチームの女子達も驚きの余り目が点になっていた。愛美と幸美はオマケに連続前宙も披露する。
司会者:「はい、双子のお姉ちゃん、カッコ良いですね!お名前は何ですか?どっちがお姉ちゃんで、どっちが妹ちゃんですか?」
愛美:「愛美です。四女でお姉ちゃんです」
幸美:「幸美です。五女で妹です」
司会者:「双子姉妹の愛美ちゃんと幸美ちゃん、ありがとうございました」
ステージイベントが終了すると愛美と幸美は参加賞に遊園地の乗り物乗車券を受けとる。そこへ二人の元にチアーリーディングのチームのメンバー達が歓声をあげて駆け寄ってきた。メンバーの中には中学生もいれば歩美と同い年の高校生もいる。
メンバーA:「ねえねえ愛美ちゃん、幸美ちゃん、あなた達は中学生?」
愛美と幸美:「はい、一年生です」
メンバーB:「愛美ちゃんと幸美ちゃんは何処の中学なの?」
愛美と幸美:「首女中です」
メンバーC:「首女中って首都女子大学附属女子中学校の事なんだね」
愛美:「はい、一応、中高一貫の女子校なんです。高等部から編入組もいます」
メンバーA:「そおなの、何か部活やっているの?」
幸美:「水泳部です」
メンバーB:「得意種目はなあに?平、クロ、バタ、それとも背泳ぎ?」
愛美と幸美:「10メートル高飛び込みです」
メンバーC:「え〜っ!たっ高飛び込み!?」
愛美:「そうですよ」
幸美:「目指しているのは109Cを完璧なんです」
メンバーC:「109Cってなあに?」
愛美:「前飛び込み抱え型四回転半です」
メンバーD:「ねえ、二人とも左頬にアザみたいなのがあるけど、どうしたの?」
愛美:「今朝、お姉ちゃんに平手打ちで叩き起こされたの」
幸美:「まだまだ痛い」
メンバーE:「そおなんだ。ビンタで叩き起すなんて怖いお姉ちゃんが、いるんだね」
愛美と幸美がチアーリーディングチームとのやり取りを洋美は旭中の五人と共に見守っていた。
由美子:「愛美、幸美、凄いわ」
麗美菜:「本当だわ」
真由:「紺ブルの体操服姿でバク中とは・・・」
雅:「うちの中学の男子が見たら、どう思うかしら?」
若菜:「動撮すべきだったかしら?」
洋美:「私、動画撮影したわ」
若菜:「後でメールで送って欲しいわ」
洋美:「今、送るわ」
由美子:「後で記念撮影はどうかしら?」
洋美:「良いね、愛美と幸美が戻ってきてからにしよう」
麗美菜:「愛美と幸美、まだまだチアーリーディングチームの人達と相手に談笑しているわ」
真由:「よっぽど目に止まって気に入られたのかな?」
雅:「スカウトされていたりして」
若菜:「どの辺りで活動しているのかな?」
洋美:「私が住んでいる所から遠い場所がメインかもね」
由美子:「愛美と幸美、チアーリーディングチームの人達と記念撮影してるわ」
麗美菜:「あの様子じゃ、まだまだ終わりそうにないみたい」
真由:「あっ親子連れにもカメラを持った男性達にも記念撮影をねだられているわ」
雅:「人気者は辛いよねえ。なんかアイドルの撮影会みたい」
若菜:「昼はどうする?正午は過ぎているわ」
洋美:「フードコーナーはどう?愛美と幸美が戻って来てからになるけど」
由美子:「いいよね」
麗美菜:「それにしても、撮影をねだられて愛美、幸美、大童だわ」
やがて撮影希望者とのやり取りを終えた愛美と幸美が紺ブルの体操服姿のまま、リュックを手にして洋美と旭中の五人の元に戻ってきた。
由美子:「愛美、幸美、お帰り。制服は?」
愛美:「リュックの中に入れた」
幸美:「スカート、カッターシャツ、セーラーブレザー、リボンネクタイ、リュックの中に入れた。あ〜疲れた」
雅:「そろそろ、お昼にしようよ」
葵奈三姉妹と旭中の五人はフードコーナーへと歩きだした。食事中でもステージイベントを見ていた小さい子供が愛美と幸美を見て声を上げる。
「あーっ!バク宙の双子姉ちゃんだ」
小さい子どもをよそに愛美は口を開く。
愛美:「これからどうする?良かったらジェットコースターか観覧車に乗らない?」
幸美:「イベントの参加賞は乗り物乗車券だから」
由美子:「良いね、ジェットコースターに乗ろうよ」
麗美菜:「良いね」
真由:「賛成」
雅:「スリル味わいたい」
若菜:「洋美、愛美、幸美に知り合えて良かった」
洋美:「ジェットコースターも良いけど、みんなで記念撮影はどう?」
愛美:「記念撮影はジェットコースターの後にしようよ」
八人はジェットコースターに乗り速い速度で迫り来る景色を楽しんだ。
幸美:「次は、どうする?ゲームコーナにする?観覧車に乗る?記念撮影をする?」
由美子:「広い休憩広場のような所で記念撮影はどう?」
麗美菜:「洋美の紺ブル体操姿、見てないから」
洋美:「そおね、観覧車乗り場に行くまでに休憩広場があるからそこで記念撮影しよう」
八人は休憩広場へ移動する。
愛美:「洋美姉ちゃんも制服脱いで紺ブルの体操服になってよ。記念撮影だから」
洋美:「わかったわよ。今から制服を脱ぐから」
洋美はブレザーを脱ぎ、リボンネクタイを外しカッターシャツとスカートを脱いで紺ブル体操服姿になる。八人は記念撮影をする。撮影を終えると洋美と愛美、幸美は体操服の上に制服を着る。そして八人は三つに分かれて観覧車に分乗する。1つ目に洋美と由美子が乗り、二つ目に愛美と麗美菜、真由が乗り、三つ目に幸美と雅、若菜が乗った。一つ目のゲージでは洋美と由美子が会話する。
由美子:「洋美って三姉妹のリーダー姉ちゃんみたい」
洋美:「そうかしら?私は五人姉妹の真ん中だけど愛美と幸美の三人だったら団子三兄弟ではなく団子三姉妹かも」
由美子:「その内の二人が一卵性双生児だよね」
洋美:「そうね、由美子が五人のリーダーなのかな?」
由美子:「いや、リーダーは意識してないわよ。あくまで言い出しっぺだよ」
洋美:「私、早とちりしてたのかな?話は変わるけど首女中の制服のスカート、旭中と同じグレーの色があったと思う。好きな組み合わせが出来るから試し着用したら面白いかも」
由美子:「そおね面白いかも。ねえ洋美、夏になったら園内プールがオープンするけど一緒にどう?」
洋美:「私からみれば、この遊園地のプールには飛び込みプールが無いし全てのプールは飛び込み禁止だからイマイチだと言わざるをえないわ」
由美子:「洋美って飛び込み競技が好きなんだね」
洋美:「そおなのよ。体育の水泳の授業に飛び込み競技があるからね」
由美子:「えっ!そおなの!?信じられないわ」
洋美:「私が入学した年度から体育の水泳の授業に飛び込みが加わったのよ」
二つ目のゲージでは愛美が麗美菜、真由との会話を展開させている。
麗美菜:「夏になったらプールがオープンするけど愛美はどう?」
愛美:「この遊園地のプールは飛び込みプールが無いし全てのプールは飛び込み禁止だからイマイチなの。愛美にとっては」
麗美菜:「そおなの」
真由:「愛美、飛び込み競技が好きなんだね」
愛美:「そおなのよ。学校の水泳の授業では飛び込み競技があるのよ」
麗美菜:「水泳の授業に飛び込み競技があるなんて、どういう学校かしら!?信じられないわ」
愛美:「50メートル競泳プールと飛び込み競技用のプールがあるの。しかも可動式の屋根だからオールシーズン泳げるし飛び込みも出来るのよ」
真由:「私達の学校のプールは25メートルなの。夏しか泳げないのよ。
首女中ってスケールがでかいね。ビックリだわ」
三つ目のゲージでは幸美が雅、若菜との会話を展開させていた。
雅:「幸美って運動神経抜群なんだね」
幸美:「そう?」
雅:「連続前宙をみたら109Cを完璧にしようと思っているのも頷けるわ。確か109Cって、どんな飛び込みかな?」
幸美:「前飛び込み抱え型四回転半よ」
若菜:「洋美、愛美、幸美の紺ブルの体操服、敏捷性に長けているからロンバク宙、前宙をするには必須なのね」
幸美:「そおよ、女子の体操服はブルマに限るわ、女子力アップの必須アイテムだから」
雅:「でも素足が完全に丸出しだから私は抵抗あるし似合いそうにないわ」
若菜:「雅、あんたみたいなデブにはブルマは似合わないわよ」
雅:「ちょっと若菜!何よそれ!?ムカつく!腹立つ!」
幸美:「若菜、ひどいことは言わないで。雅、落ち込まないで美しいプロモーションにないたい想いがあったら道は開けると思うよ」
雅:「そうなの?」
幸美:「そうだと思うよ」
雅:「幸美って運動神経だけでなく優しき心も鍛えられてるみたいだわ」
幸美:「そう?幸美はお姉ちゃんに怒られて平手打ちされる事が多いのよ」
若菜:「家族では誰が一番怖い?」
幸美:「一番怖いのは中三のお姉ちゃん、友美というのよ。二番目に怖いのは洋美姉ちゃん、三番目はママかな」
雅:「幸美のお姉ちゃんは二番目が友美、三番目が洋美、四番目が愛美なんだね。一番上は?」
幸美:「歩美と言うのよ」
雅:「そおなんだ」
やがて観覧車はスタート地点に戻り八人はゲージから降りた。
由美子:「ねえ、次はどこへ行ってみる?」
洋美:「ゲームコーナを覗くのはどう?」
麗美菜:「何か得意で好きなゲームはあるの?」
愛美:「愛美はカーレースのゲームが好き」
幸美:「幸美も好き。弟と対戦する事あるの」
真由:「私だってカーレースのゲーム好きよ。従兄弟と対戦することあるわ」
若菜:「私も好き。お兄ちゃんもやるから」
雅:「じゃ愛美、幸美、真由、若菜の対戦レースといかない?」
愛美:「良いね、首女中VS旭中の対戦形式で」
幸美:「愛美お姉ちゃん、頑張ろう。首女中の威信にかけて」
真由:「幸美って、お姉ちゃんっ子みたいだわ」
若菜:「面白いわ、旭中代表で頑張るっきゃないわ」
八人はゲームコーナへ移動し愛美、幸美、真由、若菜の四人が競争形式でカーレースゲームを始めた。洋美、由美子、麗美菜、雅の四人はレースを見守る。白熱するレースの末、一番は愛美、二番が幸美、三番が若菜、四番が真由の結果で幕を閉じた。八人はゲームコーナを出て歩きだす。
若菜:「あ〜面白かった。結果は首女中の勝ちになったけど楽しかった」
真由:「そおね、結果は負けだったけど有意義だったわ」
愛美:「機会があれば他の種目、ジャンルでも対戦してみたい」
幸美:「愛美お姉ちゃん、何で対戦なの?」
愛美:「何でと言われても・・・」
由美子:「ビーチバレーボールはどう?首女中対旭中の対戦形式だったら」
洋美:「スケジュールの都合がついたら良いと思うわ」
雅:「愛美と幸美のお陰で遊園地の乗り物代が浮いたわ。愛美と幸美の名前って愛されて幸を与える意味合いで名付けられたのかな?誰が名前をつけたのかな?」
洋美:「ママが付けたのよ」
若菜:「そおなんだ、ママと姪子の名前は何だろう?」
洋美:「ママが育美、姪は依沙美なのよ」
由美子:「みんな美の一字が付いているのね」
洋美:「ちなみにママの妹、叔母は明美なのよ」
麗美菜:「そおなんだ。伯母さんに子供はいるのかな?」
洋美:「いるけど今は疎遠状態なの」
麗美菜:「どうして疎遠状態なの?」
洋美:「弟をいじめて泣かしたから友美姉ちゃんメチャメチャ怒って連続平手打ちを食らわしたからなのよ」
麗美菜:「連続平手打ち!?洋美の友美姉ちゃん怖いなあ、くわばらくわばら」
若菜:「それで疎遠になっているんだ」
洋美:「私も愛美も幸美も友美姉ちゃんに叩かれる事、多いからね」
愛美:「愛美だって帰らずにみんなといたいなあ」
幸美:「幸美だって、このまま、帰りたくない。みんなと一緒にいたいなあ」
由美子:「愛美、幸美、帰らずに私達と一緒にいたいのね」
麗美菜:「私だって愛美と幸美のような後輩が欲しいなあ」
真由:「同感、このまま別れたくないなあ」
雅:「時刻はまだ午後3時ぐらいだよ」
若菜:「あと一時間か一時間半ぐらい後に遊園地を出るのはどう?」
洋美:「そおね、もう一つ何か乗る?それとも実は私達の写真集を持って来ているのよ。見てみる?」
由美子:「写真集?」
八人は再び休憩広場に移動し、洋美は背負っているリュックサックから自身の写真集を二冊ほど出し旭中の五人に見せる。
由美子:「これが洋美、愛美、幸美の写真集なんだ」
麗美菜:「どれどれ、『葵奈姉妹写真集』か。洋美のフルネームは『葵奈洋美』なんだ」
洋美:「そおよ」
真由:「写真集の撮影の時は顔の表情が命なのかな?」
雅:「制服で写している写真もあれば体操服やスクール水着で写っているのもあるわ」
若菜:「写真集の撮影で着る体操服は紺ブルなんだ。やっぱ水着姿でも素足丸出しが一番のポイントなのかな?」
由美子:「葵奈姉妹って四人で写真集を出しているのね」
麗美菜:「あっ、舞妓さんのような出で立ちで写っているのもあるわ」
真由:「もしかして京都で撮影したの?」
洋美:「そうよ、嵐山の渡月橋と太秦映画村へ行って撮影したのよ」
雅:「嵐山って土産物店が多いじゃん」
愛美:「そおよ、オルゴールの御店が三つぐらいあったよ」
若菜:「渡月橋と聞くと倉木麻衣の曲を連想しそうだわ」
幸美:「嵐山は外国人が多く来ていたわ」
由美子:「色んな所へ行って写真集の撮影をしているんだね」
麗美菜:「洋美、愛美、幸美ってアイドルなんだね。驚いたわ」
洋美:「アイドルと言ってもCDは出してないし音楽配信もしてないわ。グラビアアイドルだからグラドルなのよ」
真由:「私達から見れば洋美、愛美、幸美はアイドル同然に思えてしまうわ」
雅:「アイドルの写真集って値段は・・・税込で、2800円が相場なのかな?」
洋美:「そうなのよ。特別プロモーションBlu-ray DiscやDVD付きの初回特典限定版だと値段はもっと羽上がる事があるわ」
若菜:「へぇ〜!そおなんだ・・・」
由美子:「買う人、いるの?」
洋美:「いるわよ。大半は二、三十代から四、五十代の男性がほとんどなのよ」
麗美菜:「そおなんだ、あっ飛び込みをしている写真もあるわ」
真由:「バク宙している写真もある」
雅:「なんだか葵奈姉妹と一緒に学校で勉強できると良いのになあ」
若菜:「でも現実は無理だよね」
愛美:「そおなのよ、間違っても旭中に転校は出来ないし」
由美子:「撮影って年何回やっているの?」
幸美:「だいたい偶数月にやる事が多いよ」
麗美菜:「だとしたら先月は撮影したの?」
洋美:「したよ。廃校になった、とある中学校で撮影したわ」
由美子:「廃校になった中学校で?」
洋美:「そう、老朽化と生徒の減少で近隣の中学校との統廃合で廃校になった中学校で撮影したのよ」
由美子:「老朽化って・・・・」
洋美:「グランドは別にどうでもなかったみたいだったけどプールは水は無かったし、あちこちでひび割れがあってそこから雑草が生えていたわ。撮影は制服姿と紺ブルの体操服姿で行ったわ。水着姿での撮影は無かったわ」
真由:「そおなんだ、統廃合による廃校と聞くと何か悲しくなりそう」
洋美:「どこかの芸能プロダクションが買い取って改修してくれると良いなあと思うのがあるけどね」
雅:「だとしたらプールを改修してくれたら有難いよね」
愛美:「そおよ、飛び込みプールに改装してくれたら嬉しいけどね」
幸美:「幸美も同感」
雅:「愛美、幸美、飛び込みが好きなんだ」
洋美:「今、三時半ぐらいだから、もう一回ジェットコースターに乗らない?私達が出すから」
若菜:「良いの?」
洋美:「うん、その代わりと言うと言いづらいけど私達、葵奈姉妹の事、旭中の男子、生徒会にアピールをしてくれると嬉しいのがあるのよ」
由美子:「ウチの中学の男子と生徒会に?」
洋美:「どんな反応が起きるのか気になるのがあるから」
由美子:「わかったわ、出来る限りの事はしてみるわ」
洋美:「ありがとう、ジェットコースター乗り場に移動しよう」
洋美は見せていた写真集をリュックサックにしまい八人はジェットコースター乗り場へと移動する。搭乗する為の列にならんで待っている間も旭中の五人は葵奈姉妹との会話を楽しむ。
由美子:「洋美、愛美、幸美にとって気持ちいいのはなあに?」
洋美:「私は飛び込みかな」
愛美:「愛美は幸美と一緒に飛び込む時と抱き合って口付けを交わす時よ」
幸美:「幸美も同感、愛美お姉ちゃんと一緒に飛び込む時と抱き合って口付けを交わす時なのよ」
由美子:「愛美と幸美、愛し合うほど仲が良いのね」
愛美:「愛し合ってるよ。愛美にとって幸美は唯一無二の大好きな妹なのよ」
幸美:「幸美にとって愛美お姉ちゃんは心を許せる同い年の大好きなお姉ちゃんなのよ」
麗美菜:「愛美と幸美の愛し合う力、凄まじいわ」
真由:「愛美と幸美のような後輩が欲しいなあ」
洋美:「愛美と幸美の運動能力は私の運動能力をはるかに凌ぐわよ」
雅:「私だったら追い越されて引き離されそうだわ」
やがて八人はジェットコースターに搭乗しスピードとスリルを満喫する。
ジェットコースターを降りると時刻は午後四時を指そうとしていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
葵奈家の台所では育美、歩美、友美が夕食の準備をしていた。テーブルでは育美の夫で歩美と友美の父が依沙美と会話を楽しんでいた。
育美:「今日はカレーにしようかしら」
歩美:「いいわね」
友美:「洋美、愛美、幸美は、まだ帰って来そうにないからね」
依沙美:「洋美おばちゃん、愛美おばちゃん、幸美おばちゃん今日は遊園地に行っているんだ」
育美の夫:「依沙美も遊園地の行きたかったのかい?」
依沙美:「行っても乗れないのがあると」
育美の夫:「もう少し大きくなってからにしよう」
歩美:「玉ねぎ、人参、切って、と」
友美:「肉を炒めなくては」
歩美:「洋美、愛美、幸美も料理の仕方、覚えてくれたらいいのにね」
友美:「あいつらは運動神経が抜群なんだけ、難しいよ。疲れるよ」
歩美:「運動神経が一番良いのは愛美と幸美、次に洋美かしらね」
友美:「私の運動神経は洋美には及ばないからね、どちらかと言うと」
歩美:「友美は私より良いほうじゃん」
友美:「もともとお姉ちゃんは早くから運動よりも結婚と出産を意識していたからじゃん」
料理は歩美と友美の会話がメインで進められて行く。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
時刻は午後四時半になり閉園まであと30分となり八人は遊園地を出ようと出口へと歩きだした。
洋美:「そろそろ出る?」
由美子:「そおよね、あまり遅くなると親がうるさいし」
愛美:「でも何か名残惜しい気がする」
麗美菜:「同感、楽しい時間は、あっと言うまに経ってしまうからね」
幸美:「旭中のみんなと方向は反対よね」
真由:「そうみたい」
洋美:「バス乗場まで私達、見送りするわ」
雅:「ありがとう」
若菜:「今日は葵奈姉妹と遊べて最高だったわ」
八人は出口のゲートを通過しバス乗場へと歩いた。乗場に来て一分余りで旭中の五人が乗るバスが来た。五人がバスに乗ると洋美、愛美、幸美は別れの言葉をかける。
洋美:「由美子、麗美菜、真由、雅、若菜、バイバイ気をつけてね」
愛美:「みんなバイバイ」
幸美:「今日は最高だったよ。バイバイ」
旭中の五人はバスの車内から手を降り挨拶の仕草をした。やがてバスは扉を閉め走り出す。そのテールランプとウインカーランプを葵奈三姉妹は見送り続けた。バスの姿が見えなくなるのをまって洋美は愛美と幸美に促す。
洋美:「愛美、幸美、私達も帰ろう」
愛美と幸美:「うん、洋美姉ちゃん」
愛美と幸美は頭を縦に振る。三姉妹はバスとモノレールを乗り継ぎ自宅への帰路につく。モノレールを降りると洋美は自宅へ歩きながら愛美と幸美に話しかける。
洋美:「今日のステージイベントでチアリーディングチームの人達に何の質問されていたの?」
愛美:「何処の学校か、部活は何か、兄弟姉妹はどれぐらいか」
幸美:「誰と一緒に来ていたのか、もだった」
洋美:「そおなの?」
愛美:「それに、良かったらチームの活動を覗きに来てくれると嬉しい、と言っていた」
幸美:「チアリーディングチームの人達、幸美達が入ってくれるのを望んでいるのかなあ?」
洋美:「どうかしらね?ところで今日は11日の日曜日だよね、15日木曜日は友美姉ちゃんの十五回目の誕生日だわ」
愛美:「そうだよね、友美姉ちゃん15歳になるのね」
幸美:「ママと歩美姉ちゃん、依沙美は先月の8日だったからね」
洋美:「私が7月7日、勝幸が10月1日だわ」
愛美:「愛美と幸美は9月9日、佳那子は6月16日、悠真さんはいつだったかしら」
幸美:「悠真さんは確か6月30日だったわ。もし悠真さんに誕生日ケーキを用意するとしたらローソクは13本にすべきか25本にすべきか悩むんだよね」
洋美:「そおよね、悩むわ。あっそうだ、ゆうにいに相談してみようかな?」
愛美:「確かに悠真さんの救出に関わったのは洋美姉ちゃん、愛美と幸美、ゆうお兄ちゃんだったよね。それか菊池先生と大水先生に相談するのも手だと思うよ」
幸美:「そうだよね。間違っても山地さんには相談できないわ」
洋美:「相談出来ない?」
愛美:「山地さん、自動車販売の仕事してるじゃん。悠真さんは12歳ではなく24歳という見方しか持ってないから」
幸美:「同感、間違っても、そんな人、誘いたくないわ」
洋美:「帰ったら友美姉ちゃんに話してみよう」
やがて三姉妹は自宅に到着する。帰宅すると玄関に友美がいて三姉妹に声をかける。
「洋美、愛美、幸美お帰り。今日は母の日だから私、お姉ちゃんと一緒にカレーを作ったわ。今晩はカレー食べたら」
友美に促され三姉妹はテーブルに着く。育美と友美が三姉妹にカレーをよそう。カレーを食べると洋美が口を開く。
洋美:「今度の15日木曜日は友美姉ちゃんの誕生日じゃん」
友美:「そおだったわ。15歳になるのね、私」
育美:「青春時代は、これからだと思うよ」
愛美:「ママの青春時代は妊娠、出産、育児がメインだったじゃ」
育美:「そおね十五回目の誕生日に歩美が産まれて三十回目の誕生日に、歩美が依沙美を出産したからね」
幸美:「おめでた誕生日みたい」
洋美:「お姉ちゃんは帰ったの?」
友美:「カレーを作って食べた後帰ったわ」
育美:「今度の木曜日の晩は友美の誕生パーティーといこう」
夕食を終え、就寝前、四姉妹は部屋で話し合う。
友美:「洋美、愛美、歩美、今日は楽しんできたか?」
洋美:「楽しんできたわよ。今日、会ってきた他校の中学生は五人、みんな私と同学年だったから付いて行って正解だったわ」
友美:「学校名はどうだった?」
洋美:「市立旭中学校だから旭中だったよ」
愛美:「旭中のみんな、楽しそうだったよ」
幸美:「機会があれば、また会いたいなあ」
友美:「そおか。ところで、お前らが帰ってくる数分前にグラドル撮影の長野さんからメールが来たよ。今度の日曜日、18日に先月、撮影した写真集の発売イベントを行うから、是非参加して欲しいとの事だよ」
洋美:「何処で行うの?」
友美:「秋葉原でやるようだよ」
愛美:「佳那子に伝えなくては」
友美:「佳那子にはメールで知らせたわ」
幸美:「当日は朝早いよね」
友美:「早いよ、発売イベントは正午から始める予定だから朝早く出ないといけないかもね。そうなると佳那子には前の晩、ウチに泊まりに来てもらわないとね」
愛美:「発売イベントでは写真集を買ってくれたら人にサイン書いて握手しなくてならないから佳那子、大丈夫かな?」
幸美:「当日の朝は長野さんと何処で待ち合わせになるのかな?」
友美:「詳しく詳細はまたメールで知らせてくるはずよ。
愛美:「ところで悠真さんの誕生日の事だけどローソクの数はどうしたら良いのかな?」
友美:「それって誕生日ケーキのローソク?」
幸美:「そう、13本にすべきか25本にすべきかだけど」
洋美:「菊池先生、大水先生、池澤先生に聞いてみたらどうかと思うけど」
友美:「そおね聞いてみたら。さあ明日があるから寝よう」
四人は消灯し就寝する。そして、いつものように夜中に愛美と幸美は目を覚ましトイレで用を足したあと話し合いをする。
幸美:「愛美お姉ちゃん、旭中の五人からメール来た?」
愛美:「うん、今日は楽しかった、また会って遊びたいって。それとチアリーディングチームの人からもメール来ていた。機会があれば活動をみに来て欲しいって」
幸美:「洋美姉ちゃんの方にもメール来ているかも」
愛美:「もし、次会うとしたら輪になってバレーボールはどう?」
幸美:「そおよね、聞いてみたらどう?本当は一緒に飛び込み競技やろうよ、といきたいけど駄目みたいだし」
そこへ洋美が部屋から出てきた。
洋美:「愛美、幸美、何話しているの?」
愛美:「旭中の五人の事なの。メール来たよ。また会いたいなあ、って」
洋美:「私にもメール来たわよ。これからも友達でいさせて欲しい、また会って遊びたいとね」
幸美:「次、会うとしたら再来週以後になるよね。次の日曜日は発売イベントだから」
洋美:「発売イベントの事、旭中の五人に一応、話しておこうかな?それと、ゆうにいにも話しておこうかな?明日もあるから早く寝よう」
三人は部屋に戻り再び就寝する。そして5月12日の月曜日となった。四姉妹はいつものように首女中に登校すべく歩きだす。
☆☆☆☆☆☆第三組曲、追求、終わり☆☆☆☆☆☆
to be continue第四組曲、友愛