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とある中年男性の転生冒険記  作者: うしのまるやき
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第76話 ほう、これはいいものができました。

最近購入した某社のコンベクションオーブンでビーフジャーキーを作ったのですが、かなり上手にできた嬉しさでこんな話になってしまいました。本当は違う話になる予定だったのですが^^;

結果的には私らしい話になったとは思います。よろしければお楽しみください。

 冒険者ギルドに戻り、報告を済ませた。討伐報酬はオーガ1体につき金貨5枚だったので、自分で倒した1体とマーブルとジェミニがそれぞれ倒した2体と合計3体分である金貨15枚のみ受け取り、残りの報酬と素材については戦姫がもらった。オーガの素材、特に皮は丈夫で長持ちするため需要が高いそうだ。オーガはそのまま革鎧になることは少なく、肘や膝などの関節部分に使われることが多いらしい。また、急所となる胸の部分などにも使われるとのこと。肉については人気がないので、ほとんど捨てられているとのこと。まあ、これだけデカいから解体出来る人は持ってこないよね。旨味ってそんなにないし。


 討伐報酬と素材の報酬を受け取った戦姫の3人とともに王宮へと戻る。戦姫と別れた私達は、メイドさんの出迎えを受け旅の埃を落としたあと、少々手持ち無沙汰になった。本当はここからねぐらに移ってオーガ肉のジャーキーを作りたかったが、メイドさんが控えているため移動できない。マーブルの魔法とはいえ、できる限り転移魔法が使えるということを知っている者は少ない方がいい。さて、どうしようかと悩んでいるときにふと思いついたが、上手くいくかどうかの保証はどこにもない。仕方がない、オーガ肉のジャーキーは後日試すことにしますか。


 時間つぶしというわけでもないが、マーブル達と遊んでいると、メイドさんから連絡が来て、明日の5の鐘の時間に冒険者ギルドへと来るようにとのこと。何か微妙な時間だが、いつでもいいと言った手前、都合が悪いから時間を変更してくれなんて言えない。承知したとメイドさんに告げたが、王子なのだから、わざわざ冒険者ギルドで話し合わずに王宮のどこかで詰めればいいじゃん、と思ったが致し方ない。王子とギルドがグルになっている可能性が高くなったが別にどうでもいい。


 引き続きマーブル達と遊んでいると、ローレル魔術師長達が尋ねてきた。何事かと思っていたら、昨日のドラゴン肉のお礼だそうだ。別にお礼はいらないんだけど。とはいえ、受け取らないと相手に失礼だし折角だから頂いた。魔術師長達が去った後、頂き物の箱を開けると、魔石が入っていた。鑑定すると、ゴブリンの魔石の塊だった。私達がダンジョンで手に入れた魔石を魔術師長が褒美としていくつかもらって、そのうちの1つをこちらにくれたのだろう。今のところ使い途はないけど、今後何かに使えるかもしれないので大事にしまっておきますか。魔術師長にとって魔石は必要不可欠なものだろう、それなのに1つとはいえ魔石を譲ってくれたということは、本当に感謝しているのだろう。こちらが必要あるなしにかかわらず、その気持ちが嬉しかった。


 そんなこんなで夕食も頂いた後、まったりした時間を過ごしながら明日のことについて考えていた。集合時間は微妙ではあるが、早めに出てしまえば時間も作れる、ということで、明日は早くここを出て、ねぐらに行くとしますか。マーブル達に予定を伝えると、マーブル達は喜んでくれた。




 次の日の朝、いつもよりも早くマーブル達が起こしてくれた。いや、嬉しいんだけど、朝食はまだまだ先なんだよ。以前の牛肉狩りのときみたいに、あそこまで自由に外出できないんだよ。気持ちはわかるけどね。


 朝食を頂き、支度をしてメイドさんに外出する旨を伝えて王宮を出る。王宮を出て、王都から離れて周りに人がいないことを確認してから、転送魔法でねぐらに移動した。久しぶりのねぐらだったが、何か埃っぽかったので、ライムに頼んで綺麗にしてもらった。ライムも勝手がわかっているので、手際がもの凄く良くあっという間に綺麗になっていた。


 ライムをモフって感謝を伝えた後、オーガ肉のジャーキーを作ることにした。とりあえず試しなので、オーガ肉を一部取り出して、ジェミニに薄く切ってもらう。肉の準備ができたら、以前買っておいた壺にこれまた王都で以前買っておいた各種調味料を放り込んでタレを作る、もちろん濃いめだ。タレが完成したらそのタレの中にオーガ肉をいれて漬け込む。


 しばらく漬け込んでおきたいので、その間にジャーキー用の窯を作ることにした。ジェミニに土魔法で希望する形を伝えたら、そのくらいなら出来るとのことだったので、早速土魔法で生み出してもらった。希望通りの形に出来上がったので、お礼として思いっきりモフった。マーブルが羨ましそうに見ていたが、もちろんマーブルの出番はこれからある、ということを伝えて納得してもらった。


 窯が完成したので、マーブル達には火種となる枝を集めて欲しいと頼むと3人は嬉しそうに枝を集めに行ってくれた。その間にこれも以前買っておいた網を設置していく。ちなみにこの網は焼き鳥を焼こうと思って買ったんだけど、まだ出番がないうちに別の用途での使用となってしまったが、仕方がない。


 網の設置が完了したころに、マーブル達も戻ってきた。3人が集めてきたにしては少なめだったが、量的には全く問題はなかった。十分な量なのにいつもより少ないなんて言うのはマーブル達に対して失礼だし、そんなかわいそうなことは言えないから、火の準備が完了してから聞いてみることにした。


 オーガ肉もタレの染み込んだ色に変わり、しっかりと漬け込みができていた。漬け込んだオーガ肉を網に

一枚一枚敷いていく。重ならないように一枚ずつ丁寧に置いていく。網は5枚ほど用意したが、そのうち4枚にぎっしりと肉が置かれていた。4枚そのまま全部同じに作っては実験にならないと思ったので、急遽ジェミニに窯を1つ新たに作ってもらった。一度作っているので、同じものを作るのは簡単だそうで、あっさりと完成したので、それぞれの窯に肉を置いた網を2枚ずつ置いた。


 窯に3人が集めてくれた枝を入れて、マーブルに火を付けてもらう。火がついてある程度温度が上がったらマーブルに風魔法で窯の中の空気を対流状態にしてもらい、しばらく放置して完成を待つ。両方とも同じようにするが、一つはそのまま、もう一つは一旦水術で水分を抜いた状態でそれぞれ作ってみる。後は完成するまで放置だ。では、王都に戻りますかね。


 王都に戻った頃、時間的には4の鐘、つまり昼食の時間が近かったため、折角だからということで屋台巡りをすることにした。屋台のメシ、ほとんど肉だが、いろいろな肉を堪能しつつ、食事ばかりではなくいろんなものを見たり買ったりしてちょうどいいくらいの時間になったので、本当は行きたくなかったが冒険者ギルドへと向かった。


 王都のギルドはいつの時間も混んでいた。タンバラの街だったら、この時間は人は少なかったが、王都だとこんな時間でもタンバラの街の一番混んでいる時間帯よりも人が多いのだ。私は基本的には人混みが苦手なので正直勘弁して欲しいと思った。そんなことを思いつつ手続き窓口へと向かい、ギルドカードを提出する。


「あ、アイスさん、お疲れ様です。今日は話し合いということで、伺っておりますので、2階に上がって3つめの部屋へと向かってください。」


「わかりました、早速向かいます。」


 指示されたとおりの部屋に向かうと、ギルド員の人が案内してくれた。依頼主はまだ到着していなかった。


 指定された5の鐘の時間が来ても、依頼主側は来なかったので、部屋を出ようとしたらギルド員に止められた。


「アイスさん、話し合いが始まってもいませんし、もう少しお待ち頂けると。」


「いえ、向こうが指定した時間なのに、来ていないということは、話し合う気がないということではないですか? あなたたちも仕事が溜まっていて大変でしょうから、話し合いは無しでいいんじゃないですかね。」


 私達が帰ろうとして、ギルド員がそれを止めようとしてごたごたしている途中で、相手がようやくやってきた。相手は遅れてきたくせに、それが当たり前だと言わんばかりの態度でいた。


「お前がポーター役のアイスとやらか。俺はアテイン第2王子の代理として来たドノバンだ。」


「指定時間に平気で遅れてきた上に、申し訳なさが一切ないとは、しかもそれが当たり前だと思っての言動、人として恥ずかしくないんですかね?」


「ほう、平民風情でしかもポーターしかできないような冒険者くずれがほざくわ。有り難くもアテイン王子がお前みたいなポーターしかできないような奴にわざわざ仕事を与えてやっているというのだ。しかも昨日我々が出した条件を断ったそうじゃないか。おかげでお前なんかのために、この私が来てやったのだ。」


 ありゃ、これはあかんやつだ。依頼内容からこいつ頭おかしいと思っていたけど、取り巻きもかなり頭がおかしいな。ってか、こんなのばっかでこの国大丈夫か? マジでこの仕事断りたいんですが。


「いや、別に君達から仕事をもらわなくてもこっちとしては問題ないのですがね。どうせ、そんな態度しか取れないから、引き受けてくれるポーターがいなくて、こちらに泣きついてきたんじゃないんですかね?」


「なっ、ぶ、無礼な。貴族に向かってその暴言。俺がその気になれば、お前なんぞこの国で冒険者活動ができなくなるどころか、貴族に逆らった罪で投獄することもできるのだぞ?」


「なるほど。そちらが依頼してきた上にショボい条件で呆れさせ、貴族だからという理由で理不尽に恐喝してきますか。ギルド員さん、今の発言は聞いておりましたね? 交渉は決裂ということで、国王陛下に報告いたしますので、後で証人としてお願いしますね。」


「は、はい。」


「フンッ、お前ごときポーターしかできない平民が国王陛下に報告だと? 嘘もほどほどにしておけよ。」


「嘘かどうかは、後でわかりますよ。ところで、おたくの名前はドノバンさんと仰いましたよね? あなたの名前も一緒に国王陛下に報告いたします。よかったですねえ、国王陛下にその名前覚えてもらえますよ。アテイン王子に忠義をささげる素晴らしい家臣として。」


 ここでこれ以上話しても面倒なので、冒険者ギルドを出て王宮に戻ることにした。話し合いはそれほど時間が経っていないので、残念ながらオーガ肉のジャーキーはまだ時間がかかりそうだ。


 王宮に戻ってから一連の遣り取りをメイドさんからアンジェリカさんに伝えてもらい、アンジェリカさんを通じて国王陛下に報告することにした。いくら国王陛下と面識があるといっても、直接報告するのはよろしくないだろう、何と言っても私は平民ですからねえ。あ、そうだ、ドノバンという取り巻きがどれだけの地位を持っているかわからないけど、貴族みたいなので、彼の言ったこの国で冒険者活動ができなくなるということを実行に移すことにするか。具体的にはこの国を出ようと思う。とりあえず今日中にはオーガ肉のジャーキーも完成するし、それをアンジェリカさん達にも渡せるだろうし、彼女たちの護衛期間も終了するからここを出ても問題ないよね。よし、そうしましょうかね。


 とりあえず、ギルドでの話し合いがあり、いくら国王陛下からのご依頼でも彼らの行動や態度がひどいのでお受けできないということ、ドノバンという人がどれだけの地位をもっているかわからないけど、この国で冒険者として活動できなくなるから、この国を出て行くということ、約束のオーガジャーキーは今日完成しそうだから後で渡す旨を書簡にしてメイドさんを通じてアンジェリカさんに渡した。


 書簡というか手紙か、手紙をメイドさんに渡して、夕食までには戻るけど、もう一度外出する旨を伝えてから王宮を出て、再び王都を離れてねぐらに転移した。


 ねぐらに移動して窯の様子を見てみるが、しっかりと風は対流しているっぽいな。順調にできあがりつつあるが、ジャーキーはもう少し時間がかかりそうだ。ねぐらでのんびりしているときに、私の考えをマーブル達に話す。


「みんな、聞いて欲しいんだけど、ひょっとしたらタンヌ王国を出るかもしれないけど、みんなはそれでいいかな?」


「わたしは、アイスさんがこの国を出るというのなら一緒に行くです! マーブル殿もアイスさんと一緒ならどこでも一緒に行くと言っているです!」


「ニャー!」


「ボクもあるじと一緒ならどこでもいいよー。」


 マーブル達も賛成してくれた。


「ところで、アイスさん、この国を出たらどこに行くつもりです?」


「うーん、正直なところ、この国に来たのは偶然だからねえ。とりあえずゴブリンのムラへ帰ってから考えようかと思っているんだけど。」


「ニャア!」


「おお、あの強さのおかしいゴブリンさん達のところですか? 喜んでそこに行くです!!」


「ボク、あそこのムラ好き-!!」


 うん、一旦実家に戻るのもいいね。


 行動方針が決まったところで、3人と遊びつつオーガジャーキーの完成を待っていたが、ついに完成したので、早速取り出すと、どちらもしっかりとジャーキーになっていた。実験だから食べ比べてみないと、ということで、そのまま対流させたものと、水分を抜いたものと食べ比べてみる。


 結論から言うと、どっちも変わらなかった。ということは、風魔法が持続できれば問題なく作れる、ということだ。味はというと、しっかりとビーフジャーキーになっていた。つまり美味いということだ。これは酒好きにはたまらないな。脂身がないからジャーキーにしちゃえばいいじゃん、とか結構安易に考えて作ってみたが、これはいける。では、戻ってアンジェリカさん達にも食べてもらいましょうか。


 いい結果が出たところで満足して王都に戻っていった。



いつもご覧頂きありがとうございます。ブクマ登録、誤字脱字の指摘はもちろんのこと、お気に入りいただけましたら、評価や感想をいただけるとありがたく思います。

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