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とある中年男性の転生冒険記  作者: うしのまるやき
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第6話 ほう、これが連係攻撃ですか。

 かなり久しぶりに気分の良い目覚めであったが、ふとまたいつもの夢ではないのかと仰向けの状態で辺りを見回した。


「よかった。夢ではなかった。」


 目線の先にはとら猫模様の子猫が丸まって寝ていた。寝るときには自分の腹の上に乗っていたはずだが、ひょっとして自分の寝相が実は悪かったりとか。ともあれ、昨日のことは夢ではなかったと安堵と喜びに心が満ちあふれた。子猫がこちらが起きるのを待っていたかのように「にゃー」と、かわいい声で鳴いた。


「おはよう、マーブル。」


 周囲から見たらひくだろう声で返した。親であれば自分の赤ちゃんに、飼い主であればかわいい自分の家族に声をかけるときこんな感じになってしまうだろう、そんな声だ。


 アイスが目が覚めたのを確認したマーブルは必要以上に体をこすりつけていた。


 これは、ご飯の催促だな。猫を飼ったことのない私でもわかった。か、かわいい。


「よし、じゃあご飯にしますか。」


 折角なので、生の肉と蒸した肉のどちらが好みか確認してみますか。というわけで両方用意する。今日はイノシシの肉を使うとしましょう。


 両方出してみると、蒸した肉に興味を持ったようなので、そちらを食べさせた。生肉の方は香草と一緒に茹でてスープで食べる。昨日の様子ではかなり食べそうだったので丸々一頭分解凍しておいたが、思ったほど食べなかった。おいしくなかったのかなと思って少し心配だったが、マーブルは満足そうにしていたから昨日が特別腹が減っていたのだろうと思った。その辺は一緒に狩りや採集で確認していくとしましょうか。


 朝食後、探索の準備をしながらいろいろやっていると、常に寄り添うように着いてくるマーブル。かわいい。

探索の準備が終わってねぐらを出ようとすると、当たり前のように左肩に乗ってきた。とても嬉しかったがそれ以上に一飛びで肩に乗れるほどのジャンプ力があることに驚いた。


「では、出発しましょう。」


「ニャー。」


 こちらの言葉がわかっているのか、いい返事が返ってきた。マーブルはトラ猫のマンチカンという外見だが、実際はデモニックヘルキャットという魔獣であるためこちらの言葉がわかるかもしれない。半ば一方通行ではあるが、コミュニケーションが取れるのは嬉しい。


 木の実や香草を採取しながらマーブルを見てみると、好きそうなものはじっと見つめたり、苦手なものには一瞥するだけで別のものを見たりして何だか楽しい。どうやら甘めのものが好みで、スパイシーなものは苦手であるようだ。美味しいものを探しているときも楽しかったが、こうやってマーブルと一緒に探しているとその何倍も楽しい。人里行かなくてもいいんじゃないかと一瞬思ってしまったが、それはそれで別の楽しみがあるかもしれないのでそれ以上は思わないようにした。


「フーッ!」


 マーブルがいきなり威嚇するように声を出した。何かいるのだろう。その声の方向を警戒する。その数秒後に大きな一角ウサギが1体姿を現した。私の2倍くらいの大きさだ。流石にいつものようにはいかないかな。向こうもこちらに気がついて戦闘態勢に入る。逃げられないか、致し方なし。私には隠密系のスキルないですからねぇ。


「バーニィ起動。」


 こちらも戦闘態勢を整えるのと同時に一角うさぎはこちら目がけて突進してきた。でかいのに今までのウサギより速い。


「バンカーショット。」


 猫だまし的に一発放って左側に避ける。氷の杭はウサギに命中して見事に爆発した。突進速度が落ちたので、倒せはしなかったもののかなり効いたようだ。


 とどめを刺そうと構えていると、その前にマーブルが「シャー!」と言う声とともに右爪を一降りしていた。爪から赤い刃のような飛び道具が出てきてウサギの首に命中する。通常の一角うさぎならこれで仕留められそうな威力だったがこの大型種には傷こそつけられても倒すまでには至らない。それでもうまくウサギがひるんでくれたおかげで隙ができた。偉いぞ、マーブル。よし、こいつですっ飛ばす。


「バーニィバンカー。」


 命中時に杭全体を爆破させる。威力が怖いので今までの相手は多くても半分くらいを爆破させていたので、全体は今回が初めてだ。


 自分の2倍はあるウサギが思いっきり後方に吹っ飛んだので、追い打ちをかけるべくバーニィを構えてウサギのところに向かうと、ウサギは動かなくなっていた。解体するため傷口を中心に調べてみるとマーブルの放った爪が当たった部分には焦げ跡が付いていた。おそらく風と火の合成だろうか。流石はマーブル、できるや。お父さんは嬉しいですよ。


 巨大な一角ウサギのため荷物がこれ以上持てない状態になったため、今日はこの辺でねぐらに戻るとしましょうか。その前に血抜きかな。面倒だけどこれはやっておかないとな。


 ねぐらに戻って集めた素材を分けて保管庫にいれて、仕留めた一角ウサギを解体しながら、今日のことを考えていると、いくつか問題点が浮かび上がった。マーブルはというと私の隣で丸くなって寝ていた。かわいい。


 最初の問題点はすぐに荷物がいっぱいになってしまうこと。小説などで出てくるマジックバッグみたいなものがあればいいが、あいにくそんな便利なものは持っていない。今は接地面を凍らせて引っ張るので普通の人よりは大きくて重いものを運べるとはいえ、限度がある。馬車並とまではいかなくても何かしらの荷車は欲しいところだ。


 2つ目は、解体スキルは覚えたけど非常に時間がかかる。今回も大型のウサギを解体し終える頃には日が暮れていた。器用さ5は伊達じゃない。こんな器用さで解体するのはいくらスキルがあるとはいえ馬鹿以外の何者でもない。今は自分1人しかいないので、やるしかないのだが時間がもったいない。


 3つ目は、火属性がないので肉が焼けない。水術のおかげで温度管理ができるとはいえ焼いたりするのは火属性の領分だ。低温調理の肉も蒸し料理の肉も美味いが、やはりメイラードばっちりの焼いたお肉も欲しい。


 3つ目の問題点はあっけなく解決した。解体したてのウサギ肉をメイラードのことを考えながら凍らせていたら、マーブルのかわいい前足からいきなり火が出てきた。これを使えと言っているのかな。ねぐらの中でやってしまうと中の空気がやばいことになるので、入れ物などで余った木のくずなどを集めて一旦外に出る。これらをマーブルに火魔法で火を着けてもらうと、いい感じで燃え出した。


 木を火にくべながら竹のくずから即席で串をいくつか作り、肉に刺していく。それを火に近づけて焼いていく。ウサギ串の完成だ。いいにおいに思わず顔がほころぶ。マーブルも興味津々だ。


 表と裏にしっかりとメイラードをつけて焼き上げると、すかさずマーブルが串を持っている腕にテシテシと叩いて催促してくる。焼いた肉は大丈夫なのかと心配しながらも、熱いのでフーフーして多少冷ましてから肉を口の前にもっていくと、マーブルはパクッと口に入れた。それを食べ終わると気に入ったのか、またテシテシと叩いて催促してくる。やはりかわいい。そのかわいさにほっこりしながら私も食べてみると、おいしさに思わず顔がほころぶ。


「いい肉は焼くに限りますな。」


 今まで食べた干し肉のスープも、蒸した肉もどれも美味かったが、やはりいい肉は焼いた方が美味い。それを改めて実感したと同時に焼く環境や調味料などの必要性も痛感した。


 ウサギは肉と角と毛皮を回収して、骨と内臓はバーニィで穴を掘ってマーブルが火の魔法で焼いて風の魔法でこちらに煙がこないようにしてくれた。やっぱりいいだ。鑑定を忘れていたので解体した後だが鑑定してみると、種類は一角ウサギであるが特殊個体らしく、かなりのレア物だそうだ。これでバーニィを改良しようかと思ったがこの角は大きすぎて使えなかったので、別の用途に使うかもしれないと思いとっておくことにした。


 次の朝、テシテシと心地よい感覚で目が覚める。ご飯の催促だ。


「おはよう、マーブル。」


「ニャー。」


 お互いに挨拶を済ませると朝食の準備をする。昨日みたいにマーブル用に蒸し料理と自分用にスープを準備していると、今回のマーブルはスープの方に興味を示していたので、おそろいでスープだ。最近ほとんど手を着けていなかった塩漬けの干し肉の残りを味のベースにしてオーク肉と香草たっぷりのスープにした。マーブルも美味しそうに平らげていたので一安心だ。猫だとあげられないものも結構あるようだが、マーブルは大丈夫っぽい。そういうことにしておこう。


 今日は狩猟に出かける予定だ。マーブルとの連係をメインにするつもり。ということで昨日大型の一角ウサギがいた近辺に行くと、マーブルが「フーッ!」と声を出した。魔物を探知したようだ。確認するとオークが5体いた。連係の練習も兼ねているので今回は無言でバーニィを起動する。


 攻撃も無言でバンカーショットを放つ。今回は左右1発ずつ放つ。それぞれ1体ずつに命中してオークを2体始末する。残りのオークはこちらに気づいたが、不意打ちだったので、すぐにこちらに向かえずに多少の戸惑いが見えた。その機を逃さずマーブルが飛爪を飛ばす。昨日の火と風の合成魔法だ。やっぱり賢いだ。おっと、感心してばかりもいられない。マーブルの飛爪でさらに1体倒れると、残りの2体は逃げだそうとするが、逃がしませんよ。瞬時に追いつくと至近距離からのバンカーを喰らわせ、1体仕留めると、残りの1体はずっと右肩に乗っていたマーブルがオーク目がけて飛び、近距離で爪を一閃させると、オークの首が飛んだ。いい感じだ。


 そんな感じで狩りをしていき、今日の獲物はオーク15体と猪4体と大漁だった。でも、これどうやって運ぼうかな。一応血抜きだけはしておいたけど。流石に多すぎて運びきれないから、ピストン輸送に決定。結局4往復するはめになった。調子に乗りすぎてはいけませんな。



 


 


 



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