表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある中年男性の転生冒険記  作者: うしのまるやき
37/85

第36話 ほう、合同パーティでのクエストですな。

何か長くなってしまいました。

 さて、街を出たのはいいが、どちらに向かうべきか? ワイルドボアの討伐と採集以外で探したことないし、ゴブリンもオークもたまたま遭遇しただけですしね。ここはベテラン冒険者の意見を聞きましょうか。


「ギルドの情報だと、街の南にある森で数体見つかったみたい。その先に集団がいるかも。」


「では、その南にある森へ向かうとしましょう。先頭はセイラ、その次にはわたくし、ルカはその後ろで。殿しんがりはアイスさん達にお願いいたします。」


 セイラさん情報を元にアンジェリカさんが配置を決める。こういったことは腕のいい人が決めた方がいい。どうせ先頭任されても道分からないし。私たちは殿でソリを引っ張っている。マーブルとジェミニは今は肩の上ではなく降りて私の周りを動き回っているような感じだ。2人とも軽いのでずっと肩の上に乗っていても重さは感じないが、普段はずっと乗りっぱなしではなく、たまにこうして降りては走り回っている。傍目でみるとペットの散歩にしか見えない。ほっこりする。


 しばらく南を進んで森の中に入ると、オークの気配を数体探知したので、範囲をしぼってみると5体いたので、戦姫の3人に伝える。


「前方に5体ほどオークの気配らしきものを感じます。警戒を。」


「えっ? オークの気配? 私、まだわからないのに?」


「はい、あと5分くらいで遭遇します。今のうちに準備を。」


「え、ええ。戦闘準備です。セイラ、わたくしと入れ替わって援護の準備を。ルカは全員に身体強化魔法を。」


「了解、(です)。」


 さて、私達は援護の準備でもしておきますか。


「マーブル隊員、ジェミニ隊員、戦闘配置に。」


 戦闘配置とそれらしく言ったものの、実はそんなもの全く決めていない。しかし、マーブル達はさも当然のように肩に乗ってきた。流石は私の自慢の達だ。肩に乗ってくれたので戦姫の3人に聞こえないように指示を出しておく。


「マーブル隊員とジェミニ隊員は、この戦闘に関しては出番はないと思ってください。私が援護をやります。ただこの後、本体というか多数のオークとやり合う可能性が高いので、そのときは存分に力を振るってください。とはいえ、今回のクエストはあの3人の実力を確認しておきたいので、私達はあくまで補助として動きます。いいですね?」


「ミャッ!!」


「わかったです。アイスさんの指示通り今回は補助として頑張るです!!」


「はい、それでお願いしますね。でないと、彼女たちの出番がなくなってしまうので。」


 距離が縮まり、オーク達の姿が見えてきた。戦姫の3人は準備が完了しているようで、いつでも来い、といった表情で臨んでいた。そして、アンジェリカさんの指示が飛ぶ。


「ルカ、敵は報告通り5体ですわ。正面にいる3体に攻撃魔法を。わたくしたちは攻撃魔法の後に攻撃しますわ。セイラはオーク達がわたくしの背後に来ないよう牽制を。アイスさん達はわたくしたちの援護をお願いしますわ。」


「承知しました。バーニィ起動。」


 セイラさんとルカさんはいつも通りのことだからか、無言でうなずく。私の方は返事をした後バーニィを起動する。何か以前よりやばいんですけど、これオーク程度にぶっ放して大丈夫かな? 威力凄いことになりそうだな。出力最低限にしておくか。戦姫の3人を見ると、アンジェリカさんは槍を構えて先頭に立ち、じっと相手を見ている。セイラさんは弓に矢をつがえてオーク達の動きを確認している。ルカさんはアンジェリカさんの後ろで詠唱している。


 オーク達が徐々に迫ってきている。オーク達はアンジェリカさん達を見て興奮していた。というより発情していたといった方が正しいかな。襲う気満々でいきり立っていた。ルカさんが仕掛ける。


「風の精霊よ、我が声に応え我が敵を切り裂かん。ウインドストーム。」


 アンジェリカさんの真後ろにいるにも関わらず、アンジェリカさんを巻き込むことなく竜巻がオーク達を包み込む。おお、これが魔法というやつか、凄ぇ。


「ガーーーーーーーッ!!」


「次はわたくしですわよ!!」


 竜巻が収まると、オーク達は全身傷だらけの状態でかなり弱っていた。すかさずアンジェリカさんが突っ込んでいく。オーク達も応戦するが、アンジェリカさんはそれらをものともせずに弾いていき、鋭い突きを繰り出していた。突きを喰らったオークは蜂の巣のように全身に穴を開けられ倒れていく。


 1体はアンジェリカさんの突撃を免れ、側面から攻撃しようとしたが、セイラさんが待ってましたとばかりに矢を放つと、矢はオークの側頭部を貫き倒された。結果から言うと、私達は出番がなかった。


「お見事でした、戦姫のみなさん。私の出る幕などありませんでしたよ。」


「いえ、ポーター役の護衛を考えずに攻撃に専念できたおかげですわ。これで素材も手に入りますし、いいことずくめですわ。」


「そうそう、援護が期待できる状態で狩りができたのは久しぶりだったしね。」


「うん、魔法も集中できたから、よかった。いつもは、もっと警戒しながら撃たないとならないから。」


「そうですか、では、これからが私達の出番ですね。ここからはお任せください。」


 そう言うと、ジェミニとマーブルはオークの死体をこちらに運んできてくれる。運んできてくれた死体に水術をかけて血抜きをしていく。今回は大サービス+実験も兼ねて、オークの死体を血抜き後に水で洗浄してから水分を抜いてソリに入れていくことにした。その行程を見ていた戦姫の3人は唖然とした。


「え? 血抜きがあんなにあっさりと? しかもその後洗っていたような気がしますが、気のせいですの?」


「ううん、間違いなく洗っていたね。あんなにキレイになるなんて知らない。」


「うん、風魔法でやっても無理。あれはおかしい。」


 何か言っているが、これが私達の当たり前だからね。死体を洗うのは初めてだけど、思ったより上手くいったし、なによりこれでさらに肉が美味しくなる。いいことずくめじゃないか。


 気配探知でさらに多数のオークの存在を確認した。マーブルはとっくに確認できていたらしく、視線はそちらに向いていた。


「とりあえず、5体確保、と。荷台にはまだまだ入りますが、どうしますか? この先に本隊がいるみたいです。」


「本隊、ですか? どれだけの数かわかりますの?」


「うーん、もう少し近づいてみないとわかりませんが、少なくとも10体は確認できてますね。」


「じゅ、10体ですの? そんなに多いわたくしたちでは無理ですわ。一旦下がりましょう。」


「そうですか、そうしましょう、と言いたいところですが、ん? ちょっとお待ちを。」


 気配探知の範囲を絞る。マーブルのおかげで範囲指定はたやすい。


「ありゃ、これは無理そうですね。オークの斥候がこちらを探知しましたね。まっすぐこちらに向かっています。数を確認すると、31体ですね、種類は、と、この大きさはオークリーダーですね。それがこの群れを率いているボスですね。あとは、オークナイトが4体ですか。」


「え? オークリーダーですの? それってAランクモンスター。」


「え? オークリーダーって、私達かなりやばい状態じゃない?」


「うん、かなりまずい。」


 戦姫の3人は少し顔が青ざめている。私達はというと、オークリーダーと聞いて、上質のお肉キター!! 的な考えしか出てこなかった。何せマーブルはすでに1対1でオークキングを倒しているし、今の実力はそのとき以上だ。しかもジェミニまでいる。それ以上にプラチナオークを倒しているおかげで、『オークの天敵』という称号を私は持っている。どう考えても楽勝じゃないですか。


「大丈夫ですよ。この程度なら私達で倒せますので。」


「え? この数ですよ? この状況で落ち着いてなんていられませんわ。戻ってギルドに報告して対策しないと危険ですわよ。急いでギルドに戻りませんと。」


「どのみち追いつかれますので、迎え撃つ他ありませんよ。」


「はあ、覚悟を決めるしかないのですね。」


「うん、短い人生だった。」


「・・・・。」


 戦姫の3人は半ばあきらめた様子だ。仕方がない、戦姫の3人でオークリーダーを倒してもらおうかと思っていたけど、私達でやるか。


「マーブル隊員、ジェミニ隊員、これより我々はお肉祭の準備に入りたいと思います。」


「ミャッ!!」


「キュウ(何なりとです!!)!!」


「では、マーブル隊員はオークナイト4体を仕留めてもらいます。ジェミニ隊員は雑魚オーク26体をお願いします。私はオークリーダーを倒します。まあ、正直オークリーダー程度でしたらマーブル隊員でもジェミニ隊員でも問題ないのですが、いかんせん、新装備のため手加減がわからないので、こういう配置となりました。それでよろしいですか?」


「みゃっ!」


「キュウ(了解しましたです!!)!」


 2人がいつもの敬礼でもって応える。オークの集団は迫ってきているが、ここで迎え撃つと戦姫の3人が危ないので、こちらから蹴散らしに行こうという考えだ。


「バーニィ起動。では、突撃っ!!」


 私のかけ声とともに、マーブルとジェミニが飛び出していった。その光景を戦姫の3人は呆然と見ていた。


 雑魚をジェミニ、小隊長をマーブル、隊長を私がそれぞれ倒すので、突進速度も考慮しながら進んでいく。先陣のジェミニがオークの集団とぶつかる、といっても一方的な殺戮タイムだ。雑魚オークは何もできないまま首をはねられていく。あっさりと半数が倒されたところで次はマーブルがオークナイトに突っ込んでいく。オークナイトも何もできないままマーブルの猫パンチの餌食となっていく。オークの集団が全滅しかけたところで、私がオークリーダーと遭遇する。逃げ腰のオークリーダーだったが、私の姿をとらえると臨戦態勢に入った。私なら勝てるとみたのだろう。逃げないでくれたのは助かった。一番美味しいお肉に逃げられては今回の襲撃の意味がなくなってしまう。もちろん、残りのお肉も美味しくいただきますけどね。


 正直言って、戦いにすらならなかった。新しくしたバーニィがやばすぎた。試しに腕に最低限の爆発でバーニィバンカーを炸裂させると腕は完全に吹っ飛んだ。以前のバーニィで同じくらいの爆発で炸裂させてもある程度のやけどこそ負わせることができても、ここまでにはならない。威力がわかったところで、格闘術で仕留めることにした。膝の裏を踏みつけて体勢を崩してチョークスリーパーを極める。オークも体格は変わらないらしく、あっさりと墜ちたので、頭を吹っ飛ばして終了。威力の確認は済んだが、これはやばい。


 我に返った3人は走ってこちらに向かってきたが、その光景を見てまた唖然とする。


「これって、さっき私達を攻撃しようとした本隊ですのよね?」


「何か、キレイに首と胴が別れているものばかりなんだけど。」


「この子達、強すぎる。」


「あ、3人ともオーク達は仕留めましたのでもう大丈夫ですよ。さて、血抜き血抜きと。」


 オーク31体を血抜き洗浄してソリに入れる。少しはポーターとして役に立ったかな?


「で、まだ時間がありますけど、どうしますか?」


「いえ、これで戻りましょう。精神的に疲れましたわ。」


「うん、生き延びたことよりも、これだけ多数のオークをあっさり倒している方がびっくりしているんだけど。しかも、これだけのオークを積み込めるって。」


 戦姫の3人は疲れた様子でこう答えた。ルカさんは無言だった。


「では、戻りましょうか。配分は4人で山分けでいいですよね?」


「いえ、私達は5体しか倒していませんのにそれはできませんわ。」


「いやいや、残りはついででしたし、遠慮なくもらってください。」


 折角のパーティなんだから山分けでいいと思うのだが、どうしても受け取ってくれない。


「では、こうしましょう。私は肉が欲しかったので、肉はこちらでもらうとして、皮とかの素材は戦姫の3人で分けてください。」


「それだと、私達の取り分が多くなってしまいますわ。戦姫のプライドにかけてそれはお受けできません。」


 そういったやりとりの後、肉以外は捨てていくと言うと、アンジェリカさんがようやく頷いてくれた。


「そういえば、時間的にお腹も空いてきたことですし、ここらで昼食摂りませんか?」


「そうですわね、お腹が空きましたわ。」


「うん、お昼にしよう。」


「お昼、食べたい。」


 森を出て少し広い場所に出たのでそこで昼を摂ることにした。アンジェリカさんたちは携帯食を食べようと支度していので止めた。折角ここにいい肉があるのだから、それを食べないと。


「アンジェリカさん、折角ですから美味い食事を食べたいと思いませんか? ごちそうしますよ。」


「いいのですか? 私達が頂いても?」


「もちろんです、臨時とはいえ折角一緒のパーティなんですから、いただいてください。」


「では、お言葉に甘えさせて頂きますわ。」


 では、準備するとしますか。もちろん、準備するのはオークリーダーの肉だ。ソリからオークリーダーの肉を取り出す。


「え? それは、先ほど倒したオークリーダーですよね?」


「そうです。どうせなら一番美味しいものを食べて欲しいので。では、ジェミニ隊員、解体をお願いしますね。」


 ジェミニは嬉しそうにオークリーダーの解体を始めた。ものの数分で解体が終わる。焼く用の乾燥した木をソリから出すと、今後はマーブルが当然のように火魔法で燃やす。その間に焼く道具をソリから出して火の上に設置して鉄板を温める。ある程度温まったところでお肉を焼いていく。私は調理係だ。


 焼き上がったオークリーダーの肉を最初に戦姫の3人に出していく。


「わたくし達が先に頂いてもいいんですの?」


「もちろん、ささ、熱いうちに召し上がってくださいね。」


「では、遠慮なく。、、、っ、な、何ですの? この味、今まで食べたことがないほど美味なのですが。」


「うん、何これ、美味しすぎる。」


「すごく、クセになりそう。」


「喜んで頂けたようで何よりです。ごちそうした甲斐がありましたね。」


「オークは内臓もおいしいのですが、流石に仕込むのに時間がかかるので。」


「いえ、この肉だけでも十分ですわよ。」


 そんな感じで昼食を食べ終えた私達はタンバラの街へと戻っていった。モウキさんに挨拶した後冒険者ギルドへ行って報告を済ませる。約束通り、肉と内臓はこちら、他の部位は戦姫がもらうことで報告完了した。ちなみにオークリーダーについては報告しないことにして、オークナイトが率いるオークの群れということでの報告だ。これについても、肉と内臓は私達、他の素材は戦姫がもらった、というか押しつけた。だって、可食部位以外欲しくないし。戦姫は用事ができたということで解散となった。


 夕食までまだ時間があったので、ねぐらに戻ってスガープラントの確認や確保したオーク肉と内臓を凍らせて食料庫にしまった。オークリーダーの肉と内臓については空間収納で収納しておいた。保存できるし、いつでも出せるからね。あとは、ワイルドボアの解体をジェミニにやってもらい、肉は冷凍保存して、毛皮は空間収納に入れておいた。いくつかはギースさんに進呈しますかね。ついでなので、今のうちに風呂と洗濯と着替えを済ませると、丁度夕食の時間となったので、夕食を頂いた後、マーブル達と遊んでその日は終了する。さて、明日はいよいよ盗賊討伐だ。どうなることやら、とか思いながら、2人にお休みの挨拶をして床に就いた。


 


毎度お読みいただきありがとうございます。もし気に入っていただけたのなら評価の方もしていただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ