第32話 ほう、やはり早かったのですね。
投稿後、矛盾している内容や漢字変換がおかしいのを見つけたら、ちょこちょこ編集しています。一応投稿前にもチェックはいれておりますが;;
ソリを引きながら、両肩にマーブルとジェミニを乗せてのんびりとした足取りでタンバラの街に着く。モウキさんがいた。当たり前か。その表情は驚き以外の何物でも無かった。
「ア、アイス、まさかとは思うが、ワイルドボアの群れはどうなった?」
「モウキさんのくれた情報のおかげでサクッと倒せましたよ。」
「ま、まじか。強いとは思っていたがこれほどとはな、、、。」
「いいお肉もたくさん手に入りましたし、近いうちにごちそうできそうです。」
「い、いや、肉の催促はしたつもりはないのだが、、、。」
「お気になさらず。こういうのは、みんなで食べた方が美味しいでしょう? 毎日ですと流石にきついでしょうが、たまにならいいと思いますよ。」
「それで、どのくらいの数いたんだ?」
「ボス含めて22体、と言いたいところですが、どうせ討伐数記録でバレますので本当のことを言っておきますと47体ですね。」
「よ、47? あの、ワイルドボアをか? しかもあの短時間で? これより少ない数の周りの連中はまだ戻るどころか討伐が終わってないのだぞ?」
「まあ、牙など大事な部分をできるだけ傷つけないように倒すのは少々骨が折れましたが、マーブルとジェミニに至ってはそこらの草を刈る感覚でしたよ。お見せしたかったですねぇ、マーブルとジェミニの勇姿を。」
「ニャア!!」
「キュウ!!」
マーブル達はドヤ顔で応える。ただ、本人達はドヤ顔でも、見ている方としては可愛い以外の何物でもなかった。
「マーブルとジェミニの勇姿って、自分のはいいのかよ!!」
「正直マーブル達の流れるような動きと比べると私なんて無駄な動きが多いですからね、正直みっともないと思いますよ。」
「いや、お前も結構倒したんだろ? まあ、いいや。西側は討伐完了したようだから、この街は恐らく大丈夫だな。あとは、他の連中の帰りを待つとするか。では、アイスよ、報告を忘れるなよ。」
「はい、では報告に向かいますね。お勤めご苦労様です。」
「おう、お前達も任務おつかれさん。」
街に入った私達は早速冒険者ギルドに向かう。ギルドに着くと、馬車置き場にソリを置いておく。ギルドに入ると、朝ほどではないにしろ、人は多く何かと騒がしかった。各窓口は空いていたのでとりあえず受注窓口のエルナさんに報告だ。
「アイスさん、お帰りなさい。やはり危険を感じて戻ってこられたのですね?」
「エルナさん、戻りました。戻ってきたのは逃げてきたのではなく討伐報告です。」
「えっ? 討伐報告ですか? 先に討伐に向かった冒険者達はまだ戻ってきてないのに、アイスさんはもう討伐されたのですか?」
エルナさんが疑いの目でこちらを見ている。疑うならさっさとギルドカードで確認すればいいのに。一々面倒臭いな。
「はい、ギルドカードを渡しますね。討伐数に関しては内緒にしておいて下さいね。」
「な、内緒って、、、。ギルドカードを確認します。た、確かに討伐数から見ると討伐完了で間違いなさそうですが、それにしてもこの短時間でこんなに討伐できるものなんですか?」
「マーブルに加えジェミニもいますからね。こう見えてもマーブル達は強いので。」
「そ、そうですか。では、討伐クエストの達成手続きをします。今回のワイルドボアですが、1体につき金貨10枚です。アイスさんは討伐数が47体ですので、金貨470枚となりますが、いくらか預けておきますか?」
「そうですね、全部預けておいて下さい。昨日の素材分で手持ちは十分ありそうですし。」
「わかりました。こちらは預金として預かります。では、ギルドカードをお返しします。預金額については、ギルドカードに触れると出てきますが、登録者本人でないと金額は出ません。」
エルナさんからギルドカードを受け取ると、早速カードに触れてみる。お、一番下に預金額金貨470枚と出ていた。
「おお、こんな感じで出るんですね。凄い仕掛けだなぁ。」
「ところで、アイスさん。討伐したワイルドボアは持ってきておりますか?」
「流石に荷台があるとはいえ全部は無理でしたが半分くらいは。」
「そうですか! では、解体所に行ってください。ボマードさんが何度も催促に来るんですよね。『ワイルドボアはまだか?』って、そんなに早く持ってこれるわけ無いじゃないですか。」
「そ、そうですか、では早く持っていった方がいいですね。では、ボマードさんの所にいきますね。」
「はーい。またお願いしますね。あ、忘れるところでした、アイスさん、今日の会議は中止で明日に延期だそうです。時間は同じ5の鐘のときです。」
「わかりました、それでは。」
すぐさま待ち侘びているであろうボマードさんの所へ行く。
「おう、アイス達。昨日の分は仕上がっているぜ。まず、解体費用だが、1体銀貨1枚で40体だから金貨4枚だ。それで、素材の買取だが、グラスウルフは毛皮と牙だな。毛皮はかなりいい状態だから金貨1枚にしておいた。牙は銀貨5枚だな、牙は薬の材料や装飾品に使われる。それとフォレストウルフの方は毛皮と牙と肉だな。フォレストウルフの方も状態はいい、というか、こんないい状態のやつは初めてだ。毛皮は金貨2枚で、牙は銀貨5枚だ。牙はグラスウルフもフォレストウルフも同じような扱いだ、というより牙だけ見ると区別がつかん。肉だが、これは金貨2枚だ。それと、フォレストウルフなんだが、これだけ状態がいいと内臓も美味い食材になると料理屋のやつが言っていてな、内臓をどうしても欲しいとねだられているんだが、すまんが内蔵はすべて売ってくれんか? 1体銀貨1枚と安いが、頼む。」
「内臓は確かに下ごしらえが大変ですから、こちらの手に余りますね。わかりました。内臓についてはこちらからは無料で提供しますので、その分食べ物屋さんに安く卸してください。」
「そうか、凄く助かる。そういえば、お前はホーク亭に泊まっているんだったな。お前も食べてみたいだろう? だから、ホーク亭に多く卸しておこう。」
「そうしてくれると、提供した甲斐があります。よろしくお願いします。」
「おう、任してくれ。で、報酬だが、グラスウルフは20体分で金貨30枚だ。フォレストウルフの方は10体分で金貨45枚だ。解体費用と相殺で金貨71枚だ。これが持ち帰り分の毛皮と牙と肉で、あとは木札だ。」
ボマードさんから持ち帰り分の素材と木札を受け取ると、落ち着かない様子で聞いてきた。
「で、アイス。用はそれだけじゃないだろう?」
「ええ、ワイルドボアを持ってきました。」
「おお、ワイルドボアか! 待ってたぜ!! お前も討伐に参加したんだな。ところで、どれだけ用意してくれたんだ? お前は荷台持ちだからそれなりの数を持って来たんだよな?」
「数はボスを含めて22体しか用意できませんでしたが。」
「に、22体だと? しかもボスまでいるのか? お前の荷台どれだけ入るんだよ、、、。すまんが、こっちに持ってきてもらえるか?」
ソリを引っ張って裏口に戻り、ワイルドボアを出していく。次々に出てくるワイルドボアを見て解体組の面々が言葉を失う。
「お、おい、あの大きさであの数っておかしくないか?」
「ああ、どう見てもあんなに入るもんじゃないような、、、。」
ワイルドボアを出し終えるとさらに唖然とする解体組の方々。
「数も凄いが、どれも傷がほとんど無いのが驚きだな。お前どうやって倒しているんだ?」
「頭が大きく負傷しているのが、私が倒した分です。綺麗に首だけ離れているのがマーブルとジェミニの倒した分です。」
「おいおい、本当かよ、、、。どれも状態がいいし、血抜きも完璧だ。何より丸々毛皮として使えるのが凄ぇ。」
「ボマードさん、ここのワイルドボアですが、ボスの肉と普通の1体分の肉は持ち帰りで今持ち帰ってもいいですか? 残りの肉を含めた素材については、全部買取でかまわないので。」
「そんなに譲ってくれるのか? ボスとその他1頭分の肉以外は全部買取でいいんだな? だったら、肉だけすぐに解体してやるよ。ワイルドボアは毛皮や牙はもちろんだが、肉や内臓、骨も使い途があってな、捨てるところがないんだよ。それで今凄く品薄状態な上にこれだけの品質だと高く売れるから助かるぜ。」
そう言うとボマードさん達解体組はもの凄い勢いで解体していく。手際もハンパない。それをジェミニがじっと見ていた。
「流石は解体の専門家です。見てしっかり覚えるです。ねぐらにあるボアを綺麗に解体するです。」
「期待しているよ。でも、無理はしないでね。」
「分かりましたです!!」
解体は20分かからなかった。あんなに大きいイノシシをあの短時間で。
「ふぅ、気合いいれすぎちまった。とりあえずこれが2頭分の肉だ。こうしてみると、大きさ以外ボスとの違いはわからねえな。」
「ありがとうございます、あ、マーブル、頼むね。」
「ミャッ」と鳴くと気合一閃、マーブルの放った風術でボス肉が半分になる。その半分を持ってボマードさんに渡す。
「この分だけでなく、あとでたくさんワイルドボアが届くでしょう。差し入れ、というほどたくさんではありませんが、皆さんで食べてください。」
「本当か? こいつはありがてえ! ギルドのみんなでいただくぜ。おっと、そうだ、買取だが、これらも含めると今日と明日の2日はかかるな。2日後に来てくれ。解体費用はいつも通り相殺にしておく。」
「はい、それでお願いします。では2日後にまた来ます。」
「おう、2日後でなくとも、何か解体が必要になったらいつでも来い。」
ボマードさんの所を離れて受取窓口へと向かい、木札をお金に換えてもらったが、金貨71枚が手持ちにあっても多すぎるので50枚を預け、10枚を金貨に、残り11枚を110枚の銀貨に換えてもらった。何だかんだ言っても銀貨はかなり使う。そういえば、鉄貨って見たことないな。この街では使っていないとは聞いていたけど、使っているところってあるのかね。
ソリを収納してから冒険者ギルドを出て、一旦ホーク亭に戻る。今日だけ夕食分を昼食にしてもらえないか頼むためである。夕食はモウキさんたちにボアの肉を振る舞う予定だ。断られたら外でバーベキューでもしようか。メルちゃんを通してホーク亭の主人に聞いてみると、夕食の仕込みができてないので、朝食の残り+@程度でよければとのことだったので、それでお願いした。朝食とそれほど変わらないものだったが、十分美味かった。
さて、会議がなくなったということで、午後は丸々暇になってしまった。折角だから常駐型の採取依頼をこなそうと再びギルドへと向かった。
「あ、アイスさん。どうしました?」
「エルナさんお疲れ様です。特にこれといった用事がないので、常駐クエストの薬草採集でもしようと思って来ました。」
「申し訳ありませんが、緊急クエスト中ですので、街の外での依頼はできません。」
「ありゃ、そうでしたか。参ったなぁ。」
「でしたら、これも常駐型になりますが、治安維持というものがあります。この仕事についてはギルドのランク評価の対象にはなりますが、報酬が発生しません。詳しくは南門にいるモウキさんの所へ行って指示を仰いでください。それでいいですか?」
「わかりました。それでお願いします。」
「では、クエストの受注手続きを行いますね。」
ギルドカードの遣り取りをして、ギルドから出てモウキさんの所に向かった。
「おう、アイス。どうした?」
「ギルドから治安維持の依頼を受けてきました。モウキさんの指示に従えと言われて来たのですが。」
「おお、そうか。では、しっかり働いてもらうからな。」
「ええ、お願いします。ところで、皆さんは夕食どうされているのですか?」
「夕食なら、各自で用意することになっているな。自分で用意してくる者もいれば、何人かでお金を集めて買い出ししたりもするな。それがどうかしたか?」
「いえ、それでしたら、さっき狩ったボア肉がありますので、みんなで食べましょうか?」
「おいおい、本当にいいのか?」
「ええ、構いません。この依頼があろうとなかろうと、そのつもりでしたから。」
「そうか、お言葉に甘えておくよ。ありがとうな。」
モウキさんの指示のもと治安維持の仕事を行ったが、何組かトラブルがあったくらいで特に何もなかった。そのトラブル自体も大したものではなかった。
治安維持の仕事を終えて、冒険者ギルドに戻ると、残りの討伐組も戻っていた。けが人は多く出たが幸いにも死者がでなかったそうだ。それは何よりだった。ギルド内は討伐クエの処理で慌ただしく、エリルさんは忙しそうだったので、ニーナさんに報告してからギルドを出て南門へ向かった。
南門へ着くと、モウキさん達は待ちきれなかったらしく、一通りの道具を用意して準備万端の状態で待っていた。あまり待たせすぎると悪いので、急いでボア肉を出す。マーブルは肉を切る係で、ジェミニは切った肉を運ぶ係、私が味付け係になっていたが、もの凄く上手く機能していた。守衛への差し入れが結構あるらしく、串肉などの直接的な食べ物が多いが調味料などもたまにくれるらしく、結構揃っていたので、味付けは簡単だった。
一通り準備ができたので、私達も席に着く。モウキさんの軽い挨拶の後、肉パーティは始まった。どこからかぎつけたのか、肉パーティに参加する人達も出てきた。幸い肉はたくさんあったのでなんとか賄い切れた。飛び入りの人たちは野菜類などを持ち込んできた。用意がいいな。みんな、美味そうに食べていた。
肉が終わるとみんな満足したのか、片付けもすんなり終わって解散する。マーブル達も楽しんでくれたのか満足げだ。私達もホーク亭に戻り、部屋に入ってねぐらに移って風呂と洗濯を済ませた後に再び宿の部屋に戻る。こんなはずではなかったが、今日もいろいろあって疲れたのでさっさと寝ることにする。
「おやすみ、マーブル、ジェミニ。」
「ミャア、、。」
「おやすみです、アイスさん、、。」
眠たげにではあるが、いつもの挨拶を済ませて睡魔の赴くままに任せる。3人だけでのんびりするのもいいけど、こうしてたまには大勢で何かするのもいいものだな、としみじみ思いながら眠った。
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