幸福な王子
そしてツバメは幸福な王子のくちびるにキスをして、死んで彼の足元に落ちていきました。
『幸福な王子』(オスカーワイルド)より
「さあさあ、我こそはイカロス!彼方へ飛び立つ者なり!」
声を聞いて白鳥は目を覚まします。近くからは何かが空気を裂いて落下する音、人の悲鳴、どちゃっとつぶれたようです。死んでないのかと手足を、体を動かしてみるとぬちゃぁと何かがぬめりついてきます。
生臭さ。
悪臭。
どよっとした空気。
何かを見ます。
寄生虫でした。
死骸が積み上げられています。どうやら寄生虫がクッションになったようです。
動悸。
息切れ。
めまい。
落ち着こうにも落ち着けません。なにやら耳に障る音がします。音が近づいてきます。おそるおそる見るとトコロどころ砕ケむシられタだれた寄生虫がイます。逃げます。それでも足は動きません。寄生虫が這い寄ります。体は動きません。「白鳥!」空から声が落ちてきます。
王子です。王子が落ちてきました。何がなんだと困惑していると、白鳥は王子に投げられ何かやわらかいものに包まれました。
「じゃあね白鳥!幸福に生きよ!」
エンジン音が響き王子から遠ざかってしまいます。王子の姿は寄生虫にまみれて見えなくなりましたとさ。