謝罪
僕は床に落ちた荷物もそのままにイモーテルの背中に手を回すと「心配かけてゴメンね。」と謝った。
「…昔の時もそうだけど、今回もイモーテルが付きっ切りで看病してくれたんだよね?ありがとう。後、勝手に部屋を出てごめんなさい…起きたら目眩も止んでて動けるかな、って思っちゃったんだ。今更だけどイモーテルに声掛ければ良かったね、ゴメン…。」
僕の言葉に彼はゆっくりと顔を上げると目に涙を溜めたまま「私こそ取り乱して申し訳ございませんでした。」と告げる。
「…トルー様が5歳の時、池に落ちた出来事は私にとって一生の落ち度なのです…。前々から池の周りには危険を伴う程の大きさの石が落ちていたり大樹の木の根が飛び出ていたりと転ぶ要素が沢山ありました。それなのに池の方へ走って行くトルー様をお止めするどころか嬉しそうに走って行く姿に私は見惚れ、そして気付いた時にはあの事故が起きておりました。溺れる貴方を必死で抱き上げましたが、それから数日…トルー様は目を覚まさず…。それから私は誓ったのです、私の一生をかけてトルー様を護ると…!トルー様にとって私のこの想いは重荷でしかないことは分かっています…しかし私にとって貴方はそれ程大切な存在なのです!ですから、もっとご自身を大切にして下さい!お願いします!」
彼はとうとう涙を流して僕に訴える。
この10年弱の中で初めて見るイモーテルの涙に僕は戸惑いを隠せないでいた。しかし、彼の執事以上の愛情を日々受けていた僕は彼の"一生をかけて"という言葉にそれだけ彼の本気さが窺えて嬉しく思えた。
僕は再びイモーテルを抱き締めると「うん、分かった。これからは無茶しない…約束するから。」と応え、彼の涙が止まるまで暫く二人で抱き締め合った。
それから、少し落ち着いたイモーテルは僕をお姫様抱っこすると言ってきかない。結局、いつもなら断るところを先程の出来事の手前、断れず大人しく運ばれることにした。
「(あの事故もちょうど池の周りを清掃する前日に起きちゃったのも知ってるんだけどね…。)」
僕はイモーテルの首に腕を回し、下から彼を仰ぎ見る。いつも以上に近い彼の顔をマジマジと見つめると視線に気付いた彼は綺麗な翠色の瞳で「どうかなさいましたか?」と嬉しそうに聞いてくる。
「ううん、何でもないよ。」と僕が笑顔で告げると彼は突然、僕の額に口付けた。




