オール様の本音
「(どっ…どうする!?なんて答えるのが正解なんだ!?あえて気付かないフリをして傷付けるのも嫌だし、かといって返事を期待されても応えようがないし…。)」
僕はとりあえずオール様がここ数日、図書館に顔を出さなかった理由を聞き話を逸らすことにした。
「あの…オール様…今聞くことじゃないかもしれませんが、どうしても気になるので質問させて下さい。最近はどうして図書館に来られなかったんですか?」
すると彼は言いにくそうに「…だって…あの子が来るから…。」と告げる。
彼の告げる"あの子"とは言わずもがなヒロインのことだろう。
彼女のことだ、以前、僕達に断られたのもその場限りの言い訳だと思い込み何度もオール様に会いに行ったはずだ。
「そう…ですか。やっぱりテストについて質問に来られたんですか?」
「うん…。トルー君が断ってくれた次の日に僕はまた図書館に行ったんだ。そしたらバイオレット様が光魔法について教えて欲しいって言ってきて…。始めは自分の勉強もあるからって断ったんだけど、その次の日も来られたら流石に断れなくなっちゃって…。結局その日、少しの間教えたんだけど、また授業の時みたいに密着してきたり手を握ってきたりして…恐くて次の日から図書館に行けなくなったんだ…。でも!僕が図書館に行ってない間にトルー君が来てたらって思ったら、どうしても今日行かなくちゃっ!って思って…。」
そう彼は恥ずかしそうに告げる。
僕は単純に彼のその真っ直ぐな好意を嬉しく思ったが今はそれに応えられないのも事実。
よって最低限のマナーとして「…オール様、わざわざ僕の為にありがとうございます。」とお礼を告げる。
でもそれだけじゃない。
「…バイオレット様の件は守れなくてすみませんでした…そんなに大変だとは気付かず1人で勉強して…。」
いくら好感度イベントで起こるのは仕方のないことだとしても彼が嫌がっているのを知った上で図書館に行かなかったのは僕の責任だ。
「いや!トルー君は悪くないよ!僕こそ、こんな言い方になってゴメン…!トルー君を責めるつもりじゃなくてそれだけ僕がトルー君に会いたかったからで…。ほら、僕達って学年も違うじゃない?だからなかなか予定も合わせにくいし、こうやって図書館で会うのも別に約束してるわけじゃない。そしたら、次いつトルー君に会えるか分からないから僕が勝手に図書館で待っているだけなんだ…!それでたまたまそこにバイオレット様が来ただけで…。トルー君のせいじゃないから気にしないで。」
彼は必死に弁解する。
その様子にオール様ってホントに健気な人なんだと僕は感嘆した。




