ルート様のタイプ
それから1週間後、父様が嬉々とブルーマリーに「ルート様の婚約者にブルーマリーを推薦しておいだぞ!」と報告していた。
ブルーマリーはそれに喜び「お父様、大好き!」と頰にキスをし、僕とサンバックはその光景を溜息交じりに眺めていた。
それから更に一ヶ月。
なんとブルーマリーが正式なルート様の婚約者となった。
そりゃそうか、乙女ゲームではそういう設定になっていたんだから。
しかし、その傍ら僕はルート様の好きなタイプを聞き出すという作戦を実行していた。
ブルーマリーが「ルート様の婚約者になる!」と宣言してから1ヶ月。ルート様は割とサンバックと仲が良いのか王宮の居心地が悪いのか、度々我が家を訪れていた。
よって、僕はその時を見計らってサンバックの部屋を偶然を装いながら訪れ、ルート様の"可愛い弟"を演じていた。
ルート様もまさかこんな5歳児が自分に婚約者を作ろうとしているだなんて思わない為、素直に僕の相手をしてくれる。始めは度々訪れる僕をサンバックはいい顔しなかったがルート様が楽しんでいる様子を見て最後は諦めていた。
僕はまず、ルート様と知り合いになる、という作戦は成功させていた。しかし、本来は新たに婚約者候補を作る為の行為なのでもっと仲良くならないといけない。
僕はルート様の元を訪れた数回目にこの作戦を実行する。
「ルート様、ルート様は好きな人はいるんですか?」
僕のその質問に少し驚いたルート様だったが、きちんと答えてくれた。
「好きな人かぁ…ううん、いないよ。トルーはいるの?」
そう和やかに応えてくれるルート様だったが、心なしか寂しそうに見える。
「(ホントはいないけど、こういう時はいるってことにして話を広げたらいいよね。)
はい!とても可愛らしくて好きです。」
とその言葉にいち早く反応したのは何故かサンバックだった。
「えっ!?トルー、好きな奴がいるのか!?」
「うっ…うん。
(あれ…どうしたんだ?なんでサンバックが驚くんだ?)」
「相手は誰だ!?そんな奴、近くにいなかっただろう!?」
「えっ…あの…その…。
(なんだよ…サンバック…勢いが怖いよ…。)」
僕が狼狽えているとルート様が「まぁまぁ。」と宥めてくれた。
「好きな人が出来るのはとても素晴らしいことだよ、ねぇトルー?」とルート様が頭を撫でてくれる。
「はい!ルート様!ルート様は好きな人がいなくても理想の方はいらっしゃらないのですか?」
と僕が言うとルート様は少し思案し、こう告げる。
「私の理想はね…私の王子という立場ではなく、私自身を好きになってくれる人が理想かな…。」
そう寂しそうに告げるルート様を見て僕は「(やっぱりそれってヒロインのことじゃん!)」と思いつく。そして、それと同時に寂しそうなルート様を僕は可哀想になりギュッと抱き締めた。
「トルー?」とルートがビックリしていたが、それでも僕はルート様を抱き締め続けた。
結局、ルート様は未来のヒロインを探し求めている、という結論に至った僕は新たに婚約者候補を見つけることは諦め"可愛い弟"ポジションに徹することにした。
そして、いずれ現れるヒロインの為に、ブルーマリーの制御とヒロインのサポートをする為に奔走しようと決意する。