テスト当日
僕は配られた試験にとりあえず目を通し、先程ヒロインに教えたところが運良く出ていてホッとする。
僕は一度、深呼吸すると「(さぁ、やりますか!)」と気合いを入れ黙々とペンを動かした。
それから試験終了のチャイムが鳴り後ろから用紙が回収される。先生の良しの合図に皆、肩の力を抜いた。
先生が出て行き僕が次の試験の準備をしているとヒロインに「先程はありがとうございました。」と声をかけられる。
「いえ、回答は出来ましたか?」と聞くと「はい…なんとか。満点の答えかは微妙なところですが、何点かはもらえるかと。」と答える。
「次も頑張りましょうね!」と笑顔で告げられたが、昨日のヒロインの裏の顔がチラついて苦笑いになってしまった。
やっと5教科の試験が終わり、皆思い思いに席を立つ。僕も帰ろうかと席を立ったが、ふとオール様のことが気になった。
「(結局、この1週間くらいまともにオール様に会ってないけど大丈夫だったのかなぁ?イベントではオール様がヒロインに勉強を教えることで好感度を上げてたみたいだけど、オール様のあの様子じゃ期待は出来ないな。)」
僕は帰宅前に一度、図書館に顔を出してみようと足を向ける。すると図書館内を落ち着かない様子でウロウロするオール様を発見した。
思わず「オール様。」と声を掛ける。こちらに気付いた彼は嬉しそうに「トルー君!」と駆け寄って来た。彼の予想外の行動に驚いていると「この後、ちょっと時間ある!?」と手を握られながらお願いされた。
いや、そこまでされたら断れないよね。
裏庭にやってきた僕達はそこにあるベンチに腰掛け、オール様が用意した紅茶に口をつける。
僕は久しぶりにオール様と過ごせる穏やかな時間に「オール様、なんか凄く久しぶりな感じがしますね。」と楽しげに声を掛けた。しかし彼は静かに「…うん、ホントにね。僕、トルー君に会えなくて寂しかった…。」と哀しそうに告げる。
2人の間に流れる気まずい雰囲気に僕がなんとか話題を変えようと「あっ!そういえばバイオ…」とヒロインの名前を口に出した途端「トルー君、試験はどうだった?」と彼から被せるように話題が振られる。
「あっ…いつも通り…です。筆記の方は問題ないとは思いますが、明日の実技がどうかな、ってところです。」
あれ…オール様どうしたの?
「そっかぁ…なら明日の実技は頑張って貰わなくちゃね、トルー君がいなくなるなんて僕、嫌だから…。」
「あっ…ありがとうございます…そう言って頂けて嬉しいです。」
「…あのトルー君、今の言葉は先輩とか友人として言ってるわけじゃないから…ね?」
「えっ…?」
彼を見ると顔が真っ赤だ。
まさか…そういうことなのか?でも何故このタイミング?
お互いに少し沈黙の時間が流れた。




