思考
「あの!オール様、分からないところがあるのですが…!」
僕が後ろから声を掛けるとオール様はホッとしたように、しかしヒロインはなんで邪魔するのよ!?という表情を隠しもせず、こちらを見つめてくる。
一瞬怯んでしまったがオール様を助けるには仕方ない。
「バイオレット様…申し訳ありませんが、元々オール様と僕は一緒に勉強する予定だったんです。なので、もしお話が長くなるようでしたら明日ごゆっくりお話して頂けませんか?」
その言葉に彼女は不満気な声を上げたが少し考えた後「なら、仕方ありませんわね。」と図書館を出て行った。
彼女にしては呆気ない幕引きでだったが、居なくなったことに2人で安堵する。
「…トルー君、ありがとう。僕、やっぱりバイオレット様が苦手だな…。」
「…やっぱりそうでしたか…そんな気はしてました。」
「うん…恋愛に積極的な女性ってキラキラしてて魅力的ではあるんだけど、彼女はどっちかっていうとギラギラしてるから…。」
「あぁ~…。」と僕は納得し、2人して苦笑する。
まぁでも仕方ないだろう…彼女にとっては好感度を上げなければ物語に終わりはない。それに僕はこのゲームをプレイしていたわけではないので、この3年間でヒロインが誰とも結ばれなかった場合、どうなるか分からない。もしかしたら僕が知らないだけでヒロインが誰かと結ばれないといけないルールがあるのかもしれない。まぁ乙ゲーにそんなルールがあったら大変だとは思うけど。
あとは友情エンド。姉さんはそれについては何も言っていなかったので、そういうものがあったのかさえ分からない。姉さんは絶対に1人ずつ攻略していくタイプだったので初めから友情エンドは無いとしていたのか…。
はぁ~…考え出したらキリが無い。
僕は分からなくなったら途中で考えるのをやめるようにしている。だって、考えたところで僕は物語の大軸は変えられない。勝手かと思うかもしれないが、僕としては最終的にヒロインがルート様とブルーマリーの邪魔をしなければそれでいいと思っている。
しかし、前世は姉の、今世はブルーマリーのお世話ですっかり身についてしまった僕の世話焼きな性格は攻略対象の好感度を大幅に上げることになってもほっとくことが出来ない。正直、あの2人の告白は予想外の出来事ではあったが、不思議と嫌悪感はない。きっと、それはこの世界の美形率が高すぎるのと同性ということを抜きにしても彼らが魅力的だったからだ。
そもそも乙ゲーの世界でBLが発生してもいいのかとも思うが、乙ゲー云々以上にこの世界では同性婚は有りなのだ。
本音でいえば女性と恋愛してみたいのだが、今のところ僕にはそんな気はないし、女性がこちらを振り返ることもない。それなら、新たに女性に目を向けるのではなく自分に好意を寄せてくれる人のことを真剣に考えてから行動に移すのも遅くはないのかなと思う。まだ後1年ある、と考えるのか後1年しかない、と考えるのかは微妙なところだが、本当にルート様の婚約破棄事件が無くなったらゆっくり考えようと思う。




