白状
「詳しく話せ、バイオレット。」
それからヒロインは自分が宝箱を盗んだことを白状した。
彼女の証言によると、自分は幼い頃に男爵家に養女として迎えられ、何不自由なく暮らしていたが少しでも義理の両親の負担が減ればと、今回の新入生歓迎会の商品を獲得したかったそうだ。それなのに予想外に棄権となり、どうしても宝箱が欲しかった彼女はいけないと知りながらも盗んでしまったと言う。
「しかし、何故最後まで問題を解いていない彼女が宝箱の場所を知っているんだ?」
「確かにそうですね…。宝箱の場所は教員以外知るはずのないこと…バイオレット、何故知っているんですか?」
ヒロインは2人にそう責められ、狼狽えている。
僕はその光景を見ながら姉さんの言っていたことを思い出した。
確か、この新入生歓迎会で宝箱をゲットするのはヒロインのグループだった。内容がどうであれ、一緒に賞品を獲得できたということで同グループの攻略対象者の好感度は上がる。そして、その中でもシトロとはそれから仲良くなり、食堂でお昼を一緒に食べたりと、少しずつ好感度を上げて行く流れだったはず。
そこでまさかの棄権となり、ヒロインも焦ったのだろう。このままでは好感度も上がらない、更にこの後起きるはずだったイベントも起きない、となるとどうしても宝箱を獲得する必要があった。
「(それで盗んだのか…。)」
攻略本を読み込んでいたヒロインなら宝箱の場所なんて始めから知っていたのだろう。だから、その中でも特に見つけにくい1つを選んだ。
「(後々、バレるのになんでやっちゃうかなー…。)」
そう思いながらも僕は助け舟を出すことにした。
本来はここでヒロインの悪行がばれ、万が一退学となってくれた方があのイベントが起きなくて済むのだが、それをすると駄目な理由がある。
それは来年"ルート様暗殺計画"というイベントがあるからだ。




