疑い
結局、ヒロインは放課後になっても戻って来ず、僕はコールを待ち切れずに生徒会室へと向かう。
入り口近くに差し掛かったところで顔を抑えながら扉にもたれる見覚えのある姿を見つけた。
「…会長…?」
「あ"ぁ?」とこちらを凄んでくる会長にはありありと疲れが顔に浮かんでいる。
「…ッ!バルサムか…すまない、ちょっと苛ついていたんだ…。」
「…大丈夫ですか?顔色が悪いようですが…。」
「あぁ…まぁ、大丈夫だ。それよりお前がどうしてここへ?」
ここではヒロインのことは知らないフリをした方がいいだろう。
「同じクラスのニア・バイオレット様が朝から姿が見えないので鞄を持ってきたんです。姿を見かけたら返そうかと思ったので。」
「そうか…バイオレットなら生徒会室にいる。ちょっと待っててくれ。」
そう言って会長は部屋の中に入って行く。チラッと見えた中にはヒロインとコール、会計、書記の人が真剣な表情でヒロインを見つめていた。少し見えただけでも分かるその重苦しい雰囲気に僕はその中に入るのが躊躇われる。よって、この鞄を会長に渡してもらおうと思い立った。
しかし、少しして戻ってきた会長は「鞄を渡すくらいなら中に入っていいぞ。」と言って僕を室内に入れようとする。「えっ…いや、僕は…。」と断りつつも鞄だけ渡したらすぐに帰るから!という気持ちで足を踏み入れた。
「あの…バイオレット様…。」
と僕が恐る恐る呼び掛けたその時、こちらを振り返ったヒロインは泣き腫らした目と赤くなった鼻を隠そうともず「貴方のせいよ!」と僕を睨みつけた。
その発言に言葉が出ない。内心は「(えぇ!?)」と思っているのだが、咄嗟だと声が出ないものである。
「どういうことだ、バイオレット。」
「…ッ!本当は私達のグループが宝を見つけて好感度が上がる予定だったのに、この人が全て台無しにしたのよ!」
そう言ってヒロインは泣き崩れた。
「(えぇ~…ヒロイン…好感度とか言っちゃうの…?)」と思っていたが、僕からは何も言えない。
「何を人のせいにしているのですか?トルーが原因のわけないでしょう?」
おぉ!コールがちゃんと元に戻ってる!と感心していると「おい、スコッチ。いつの間にバルサムと仲良くなったんだ?」と会長が聞く。
「(今、それどころじゃないじゃん!)」と内心突っ込んでいると案の定「会長、今はそれどころではありません。」と書記に諭されていた。




