全快
その後、イモーテルの誤解は解け、やっと家に帰って来た。僕は相変わらずイモーテルにお姫様抱っこをされたままで家の門を潜る。
僕だって馬車を降りる時に抵抗したさ…もう大丈夫だって…と。でもイモーテルはいけません!の一点張りでどうしようもなく結局、僕が諦めた。
最近思うんだ…僕、こんな調子のイモーテルにはいつも勝てない…。
そんなことを思っていると「トルー!?大丈夫か!?マトモに歩けないほど重症なのか!?」と僕の噂を聞きつけたサンバックが仕事を返上して帰宅し、僕を迎えてくれた。なんと隣にはルート様も立っている。
「あっ!えっ!?兄様とルート様!?帰って来てたんですか!?」
「当たり前だろう!?トルーが怪我をしたと聞いたら職務を放り出しても駆けつけるさ!」
いや、それはどうかと…。
そんな僕の表情が分かったのか、ルート様が僕の顔をジッと見ながら「顔色は良さそうだね。」と呟いた。
僕はそれに「はい!もう何処も痛くないんですが、イモーテルが心配して、こんな状況なんです…。」と苦笑いで応える。
この表現が正しいか分からないが、サンバックはイモーテルから僕を受け取る?と二階の僕の部屋へと向かう。
「兄様…僕、もう何処も痛くないんだよ?だから下ろして。」
「いや、駄目だ。斜面を落ちて骨折したのだろう?いくら治癒されたとはいえ、大事にしなければ。」
何故、ここの人達は僕の言うことを聞いてくれないのだろう…。
僕は「はぁ~…。」と溜息を吐くと兄様のなすがままに体重を預けた。
部屋に着くと、ゆっくりとベッドに降ろされる。部屋にはサンバックとルート様しかいない。
「ルート様、わざわざ足を運んで頂いてすみません。御心配おかけしました。」
「ううん、トルーが元気そうでよかった。それよりトルーの知らせを聞いたサンバックの挙動不審な態度は今、思い出しても笑えるよ。」
「…ッ!言うな!」
サンバックのその様子に僕も面白がって聞いてみる。
「ルート様、兄様の様子はどうだったんですか?」
「…!トルーまで!」
「フフッ。私の従者が知らせに来たんだけどね、トルーの怪我のことを知ったサンバックは早くトルーの元に行きたいけど、私の仕事もあってどうしようか迷ってる様子だった。それで私に急遽、休みを取りたいと言いたいけど、仕事中だし言いにくそうにヤキモキしている様が面白くてね、意地悪で少し気付かないフリをしてたんだ。そしたら、痺れを切らしたサンバックが言ってきたよ、トルーのところに行きたいってね。それでトルーの帰りを待っていたというわけさ。私は学校で怪我をしたと聞いたから光魔法を使える誰かがもう治癒してるだろうと分かってたんだけどね。」
僕はその話に驚きサンバックを見る。サンバックは恥ずかしそうに目線を彷徨わせていた。
僕は嬉しさのあまり「ありがとう、兄様!」とサンバックに抱き着いた。




